第二件・いらっしゃい
八郎は無視して電話を切った。さっきのバイトの面接の事も有り怒りはピークに達していた。すると不意に電話が鳴った。
「もしもし!」
随分と乱暴なでかただった。
「いきなり切らないで下さい。まだ住所言ってませんよ」
さっきのガキだ。
「うるせえ!何が採用です。だ!ふざけんな!」
大声で叫んだ。
「ふざけてんのはお前だ!」
いきなり後ろから怒鳴られた。
「採用されなかった腹癒せか!店の前でさわぎやがって!」
さっきの店の店長だ。ゴキ!!おもいっきり殴られた。
「とっとと失せろ!!」
八郎は走って逃げた。
「何だ、僕の家の場所解ってたんですね」
うずくまって肩で息をしていると電話から声がした。
「何?家?」
八郎が立ち上がると目の前に大きな家があった。
「早く入って来て下さい」
八郎は迷った。これ以上子供の悪戯に付き合いたくない。しかしこのまま立ち去ったら後悔する気がした。そして、もしかしたらいままでの生活から抜け出せるかもしれない。そう思った時には扉を開けていた。
そして、家の中に入って中を見回してみたが、家の中には生活用品が何もなかった。さらに、そこには誰も居なかった。
「階段を上がって来て下さい」
二階から声がした。指示のままに階段を上がっていった。一段一段上るごとに階段がギシギシなった。全部で十三段あるうちの七段目を踏んだ瞬間突然床が抜けた。
「あ〜あ。何をやっているんですか」
上から声がした。片足がはまったまま八郎は上を向いた。そこには誰も居なかった。
「早く来て下さい」
八郎ははまっている足を引き抜いてさらに上って行った。そして上りきったところには扉が一つあった。