スラム転生〜人生をやり直せ〜
好評だったら連載します
俺は眠ることが好きだ......同時に嫌いともいえる。
暖かい夢を見た。
その夢は泡のように俺の記憶から少しづつ消えていってしまう。
意識していないとなくなってしまう。
頭の中でその夢を掴んだ。
なぜ夢の世界から出た後だと暖かさを感じられないのか。夢の中では現実の記憶が抜け落ち、世界が色鮮やかに見えるようになる。
だけど、夢と自分の境遇を比較すると、思わず目を瞑りもう一度夢に堕ちようとさえ思える。
俺はおもむろに体を起こす。
腹が減った。
そして立ち上がる。そこで疑問に思う。
俺はどんな夢を見ていたんだろうな。
俺は自分が寝ていた場所を見つめる。
腐った木材が使われていて所々白い線を引いている。
部屋の中には数日分の食料があった、
他にも意味のないガラクタとかがある。
こんなに食料があるならあのまま寝てしまえばよかったな。
俺はおもむろに果物を手に取る。
柔らかい赤い果実には穴が空いていて、中にいる虫と目が合った。
窓枠に乗り上げ、外を見ると、白くて冷たい塊が静かに降り注いでいた。
……また、この時期が来たのか。
この街で生きてきて覚えたのは、
この"寒さ"が来ると食べ物がなくなり飢えで死人が山ほど出ること、
長年の経験から何度も眠ることでこのような暑くなったり寒くなったりする現象が起こることに気づいた。
生き残るためには環境に適応しないといけないのだ。
俺は果実をムシャリと、かじる。
少しの苦味と甘みを感じる。
今日は外に出ても意味がないな。俺は床に座り、ゆっくりしようとするが冷たい何かが、窓枠から入ってくる。寒い。
そこから数日が経ち、とうとう食料がなくなってしまった。
外にはまだ冷たい塊が激しく降り注いでいる。
だがこのままじゃ餓死してしまう。
......出るしかないか。
降り積もっていた冷たいものの上を裸足で歩く。
一歩毎に地面に沈み込み、足を抜くことが苦労に感じるのと同時に足が赤くなり、痛みが走る。
それに負けずに歩き続ける。
最近腰にも痛みを感じるようになった。昔はもっと楽に動けていた気がする。
この街から出ないと......
この街ではまともに食料も得られない。
俺が街から出る頃には足がガクガクと震えていた。
びゅうびゅうという音のせいで周りの音は聞こえない
冷たい何かのせいで視界も悪い。
そして歩いて歩いて歩いて......
次の街に着いた。
その街には人がたくさんいて活気に溢れている。
俺を見た人たちは皆しかめっつらをしたかと思うと明らかに俺を避けるように離れていく。
俺はそんなことを気にせずまた歩き始めた。
食料を並べた店の近くに行き、
じっと待つ。店主の隙を...
今だ!
...走り出し、2つの果実を掴みそのまま駆ける。
そして傍から見ると年齢に似合わない加速をし始める。
「おい、待て!」
店主が声を上げ、追いかけ始める。
だが上げた時には結構差がついている。
(......これは逃げ切れるな)
しかし足がもつれて転けてしまう。店主に髪を掴まれる。
「くっそこの小汚えジジイが!」
意味不明な言語を叫ばれてそのまま顔面を殴られる。
鼻が潰れるような痛みを感じる。
俺は腕を振って抵抗するが、もう一度殴られる。
鼻血がポタポタと垂れ、俺は後ろに倒れた。
店主は蹴りつけてくる。
周りの人はその光景を気にも留めていないように通り過ぎていく。
何度も、何度も...蹴られる。
とうとう俺はこの店主を殺すことに決めた。
懐から手入れもよくされていない、
......ナイフを取り出す。
店主やスルーしていた通りすがりの人も驚愕するように声を上げ、通りすがりの人は黒い板のようなものを構え始める。
俺が店主に刃を突きつけようとすると店主は逃げ出した。俺は違う方向に走った。
俺が疲れて歩いていると大きい屋敷があった。
俺が通りかかるとそのタイミングで門が開いた。
......俺はなんとなくでその中に入る。
植物が生えていて、その真ん中に人が座っている。
そこの主人のような人が手招きをして話しかけてきた。
おれの身長より少しだけ高い。帽子をかぶっていて、手袋をつけて手には杖を持っている。
「君がスラム街に住んでる子だね?名前は?ないんだっけか」
不思議と言葉が理解できた。そして、その男を不気味に感じた。
「私の名前はゼント、斗一族だ」
「お、おれは、名前は」
初めての会話だ。
声が出すことができて良かったと思ったが何を話せばいいかが思いつかない
「ないのだろう?知っている。
そして君が何も知らないことも知っている。」
そこからその男は俺を警察から匿ってくれると言ってきた。
正直信用は出来なかったが、何かがあっても大丈夫だと思った。
*
2年が経った。
俺はこの2年である程度の教養を得た。
ゼントが全てを教えてくれたのだ。
どうやらゼントはなんでも知っているらしい。
俺の才能や俺の両親の名前さえも、
いつ産まれたか知らない俺の年齢も知っていた。
俺は50歳のスラム街育ちの浮浪者...らしい。
ゼントは50歳になったら人生はもう終わりに近くて、何かを始めるには遅すぎると言っていた。
終わりというものを考えるのは人生で一番無駄な時間とも言っていたが。
最近は小説を読むことにハマっていた。
この屋敷の庭で読む物語はとてもいいのだが、
今日は"雪"が降っている。
ゼントは俺の隣で傘を持っている。
俺に雪が降り積もるのを防いでくれているのだ。
「ゼント、この"転生"ってなんだ?」
俺はいつものように意味を聞く
「記憶を持って人生をやり直すことだな」
ゼントもいつものように返してくれる。
「......俺もできるのか?」
「フィクションだ」
...な!?なんだと...嘘!?
「そうか...じゃあこのハーレムも!?」
もしかしてと思い言ってみる。
「50歳にできるわけないだろう」
俺が普通の人間として過ごせるようになった時もう人生は終わりかけだった。
そんなことを受け入れるのは難しい。
涙が出てくる。
終わりが怖くなってきた。
「俺の寿命って後何年だ?」
またいつものように聞く。そしてまもなく雪が俺の鼻頭に付く。傘をしまったのだろうか。
「......3秒だ」
そしてまたいつものように答え―
「えっ―」
俺は振り向く。
ゼントは銃口を俺に向けていて、
...いやもう引き金が引かれていて、
......いやもう弾丸が打ち出されていて、
2年で蓄えた知識を抉られるように
俺は脳みそが弾けとんで死んだ。
「明日から始まりだな」
そんな声がもう聞こえない耳で聞こえた気がした。
星つけてね




