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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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迫りつつある終幕

そして、三度目の攻撃を躱しながら、いや、ほぼ全力で躱しながら、アーベルはデモクリトスの攻撃パターンを把握する。


これもアーベルの才のひとつといえるだろう。

そして、アーベルが解析した攻撃パターンはこのようなものだった。


基本的に攻撃は右側の剣のみで、左の剣はこちらの攻撃に備えているように見える。

実際のところ、こちらの攻撃は左の剣だけで受けている。


そして、ここまで剣を合わせた感覚を言葉にすれば……。


重さの右、速さの左。


もちろん左の剣が軽いというわけではなく、右の剣が鈍重というわけではなく、あくまで左右を比較した場合ということだ。


「並の剣士なら左の剣でも十分に潰されるだろうな。そして……」


「これまでの攻撃だけで言えば、俺の左側から薙ぎ払うようにやってくる奴の右剣。その重い一撃で決着させようとしているように見える。その攻撃を右側に飛んで躱し、そこから攻撃できるように見える」


「だが、あれはカモフラージュ。こいつの攻撃。その最終形態は右の剣の攻撃を右に躱した俺を左の剣で仕留めるというもの。俺が真後ろに下がったため、それは発動しなかったが、左の剣がトドメを刺そうと動きかけたのを俺は見逃してはいない」


「ただし、そうかと言って真後ろに下がっては奴との距離が開き過ぎて、こちらも攻撃ができない」


「さて、これに対し俺がどう戦うか……」


そう呟きながら、アーベルはニヤリと笑う。


そう。

彼は間違いなく戦闘狂に該当する猛者。

いや。

猛者と呼ばれる者たちはほぼ例外なく戦闘狂なのだから、いわば普通と言える。

そういう点で言えば、ふたりの戦いを見守る仲間たちこそ別種といえる。


勝ちさえすれば手段は選ばず。


それに相手は魔物。

騙すことは悪くはない。

それに殺してしまえば、バレやしない。

逆に死んでしまえば、それまだ。


なぜこれだけ押されているのにアーベルは油断し切っている敵に魔法攻撃をしないかと思っていた。

もちろんそれを知ったらアーベルはこう言うだろう。


余計なお世話だ。


「……やはり強者と戦うのは楽しいな」


「しかも、一対一の命のやりとり。戦いはこうでなければならない」


もちろんデモクリトスも同様だった。

ただし、こちらは少しだけ困惑と焦りの感情も混ざっていた。


「……もうとっくに斬られているはずの男がまだ立っている。それだけではない。剣があの男に届いていない」


「だが……」


「こちらの剣はどうにか躱しているが、あれだけ派手に逃げていれば勝つのは難しい」


「この男は間違いなく相応の剣士。そうなれば勝つためには横に逃げるべきという結論に達する。幸い、まだ左の剣は使っていないので、奴はこちらの真の切り札を知らない」


「いずれ間合いに入ってくる」


「その時が勇者の最期」


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