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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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4/5

始まった勇者対魔物の戦い

その言葉とともにアーベルが剣を抜く。

むろん、デモクリトスもすでに臨戦態勢になっている。


「これまで戦ってきた人間は皆腰抜けばかり。噂の勇者がその同類でないことを期待したい」

「そこまで言ったからには、泣きながら命乞いしても絶対に助けないと思え」


「つまり、こちらの希望を叶えてくれるというわけか。それは楽しみ」


ニヤリと笑ったデモクリトスはさらに言葉を続ける。


「そうだ。せっかくの剣士同士の戦い。魔法を使わず剣のみで戦うというのはどうだ?」


むろん、それはアーベルも望むところ。


「おまえと同じで俺も剣が主武器。つき合ってやってもいい。だが、後悔するぞ。断りもなく魔法を使うような恥ずかしいことはするなよ」

「約束しよう」


魔物と呼ばれるだけあり、デモクリトスはアーベルの二倍近くの大きさ。

筋肉だけでできたような太い二本の腕はそれぞれに大剣を持つ。


「……要するに二対一の戦いということだろう」


アーベルは呟く。


そして、戦いはまさにそのとおりとなる。

いや。

それ以上といえるだろう。

両手持ちのアーベルの大剣を左の剣が受け、右の剣が逆にアーベルに斬りかかるのだから。


「なるほど。これでは並の剣士ではとても勝てないな。そして、魔術師の支援なしで戦おうと提案したおまえの意図も間違いないではない」

「それを受けたのは失敗だったと認めるのなら、魔法を使うことも認めてやってもいいぞ」

「不要だ」

「強がっているうちに胴体がふたつになるぞ」


その言葉とともにデモクリトスの右側の剣がアーベルの甲冑を掠る。


「どうする?」


余裕綽々。

間違いなく勝てる。


デモクリトスの言葉からは自信が滲み出していた。


「確かに勇者と言われるだけはある。私の剣をここまで躱したのはおまえが初めてだ。だが、次は確実におまえの身体を切り裂くぞ」

「なるほど。それは困る」


「では、切り裂かれる前に一応聞いておく」


「おまえはおまえたちの軍の中で何番目に強いのだ?」


「一番強いのは王。私は七番目、八番目くらいか」

「つまり、幹部というだけあって強いわけか」

「そうなるな」

「三つの洞窟にいる中では?」

「私は一番だろうな」


「それでどうする?剣だけでなく魔法を加えるか。泣いて頼んだら、おまえの仲間も全員加わることを許す」


「いや。おまえごとき俺一人で十分。続行だ」

「いいだろう」


「では、勇者の誇りを胸に死ね」


そう言うと、デモクリトスは物凄い勢いでアーベル目掛けて突進する。


だが、アーベルが待っていたのはこれだった。


デモクリトスは確かに強い。

特に防御は完璧と言える。

そして、左での剣で攻撃を受け切った後にやってくる右の剣のカウンターも重く早い。

だが、渾身の一撃を放ち、いわば無防備状態の自分を斬れないということは、重さはともかく、デモクリトス自身が思っている程剣は速くはない。

少なくてもアーベルにとっては。


つまり、デモクリトスの両手に攻撃をおこなわせたところで、今度はこちらがカウンターをお見舞いする。


もちろん、目算通りにいくかどうかはわからない。

デモクリトスの重い剣が直撃すれば、自分の身体は肉塊になる。

だが、ようやく相手の剣筋がある程度読めるようになったところで、魔法の使用を認めてしまえば、不利になるのはこちら。


相手がどれほどの威力のある、どのような種類の魔法を持っているかわからないのだから、そのすべてを確認するための作業をおこなわねばならないのだが、この相手ではそこまでの余裕があるとは思えない。


そうであれば、お互いに魔法を封じて戦っているうちにケリをつけるべき。


だが、攻勢に出たデモクリトスの間合いを見るためには、数度は攻撃をかわさなければならない。


「……この相手にそれをやるのはなかなか難易度が高いな」


相手には聞こえぬ声でアーベルは呟く。


「まあ、俺でもただ逃げるだけなら数度躱すのがやっと。見極めることができなければ五度目には間違いなくやられる」


「ということは、その間に見極めねばならないな。敵の攻撃の癖を」


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