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《EDU-KILL/エデュキル》―AIが答えをくれる時代に、考えることは罪になった。―  作者: 世志軒


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第1章 完璧な子ども (記録ログ16)

― 非公式アクセス検知、そして電話 ―


 暗いデータ層を掘り下げていた端末が、不意に低い警告音を鳴らした。


 《未承認アクセスを検知。管理者権限に照会します――》


 レンは眉を寄せた。

 「……くるか」


 数秒も経たないうちに、端末が着信を示す蒼白い光を放つ。

 画面に浮かんだ名は、


 〈朝霧 澪/第七課・特務執行官〉


 レンは息を整え、通話を開いた。


「――篠原レン。あなた、何をしている?」


 落ち着き払った、しかし刃のように冷たい美女の声が流れ込む。


 通話画面に映る朝霧あさぎり みおは、噂通りの女だった。


 白銀の髪がまるで金属線のように光り、

 胸元を大胆に開いた黒のスーツを着こなし、

 腕を組んだ姿は精鋭部隊の指揮官というより、

 “処刑人”の風格すらあった。


 切れ長の紅い瞳はわずかに細められている。

 怒っているわけではない。

 ただ、真実を見抜こうとしているときの目だ。


 レンは平静を保ち、淡々と答える。


「ログの確認を。規定上、閲覧は可能だ」


「“規定上”ね」

 朝霧は小さく息を吐いた。

 その仕草すら冷たく美しい。


「レン。あなたのアクセスは通常の問い合わせじゃない。

 ――裏鍵を使った。間違いないわね?」


 図星だ。

 レンは口を閉ざしたが、それだけで十分すぎた。


 朝霧は、ほんのわずかに目を伏せたあと、

 顔を上げ、はっきりと言った。


「第七課の執行官として命じるわ。

 今すぐ、そのアクセスを終了しなさい。

 あなたが傷つくのは……望んでいない」


 その声音には、怒りでも呆れでもない、

 微かな――心配が混じった。


 レンは苦笑した。


「心配してくれるなんて、意外だな」


「誤解しないで」

 朝霧は眉ひとつ動かさずに言い切った。

「あなたが勝手に死なれたら、私の仕事が増えるだけよ」


 その冷たい言葉の裏に、わずかな熱があった。


 レンは端末を見下ろす。

 ARC-9/Seed

 あの謎のタグが画面の隅にまだ微かに揺れている。


「最後にひとつだけ確認させてくれ。

 ……最近、家庭AIの誤作動。感じないか?」


 朝霧の瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた。

 だが、すぐに元の冷たい光に戻る。


「“統計上の誤差”。以上よ」

 静かに、だが決定的に言い切った。


 その返答に、レンは逆に確信を深めた。

 朝霧の声は硬すぎた。

 まるで“真実を言えない立場”にいる者のように。


「……そうか。了解した」


「レン。言っておくわ」

 朝霧の声が、少しだけ低くなる。


 「あなたが正解に逆らうなら――私が止める。必ず。」


 通話が切れる。


 画面が暗転し、薄い光がレンの顔を照らした。

 胸の奥がざらりと軋んだ。


 ――ただの監視じゃない。


 朝霧 澪は、きっと“何かを知っている”。


 そしてその“何か”は、

 レンが追っている闇と同じ場所にある。

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