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少女は魔王になる  作者: 千両
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結局私は一時的に自殺を諦めた。

剣をおろし、男を観察する。

男は相変わらずニコニコとこちらを見ている。


一体どうやって中に入ってきたのか。いつの間にか牢のドアが開いているし、その男からはどこか不審な雰囲気が漂っている。


「勿体無いとは思わないのか」


「魔王を殺したの、お前だろ?」


一瞬空気が変わった。一体なぜそのことを知っているんだろう、そうだ、この男は……魔族だ。人間とは違う匂いがする。それに凄まじい魔力量。魔族のなかでも相当な階級であるのは間違いない。


「魔王の報復……」


「いいやぁ、違うよ。そんなんじゃなくて、俺は提案しにきたんだ」


「俺と一緒に来ないか。今、死のうとしてたんだろ?

じゃあ最後に、俺に協力するのも悪くないと思わないか?」


「その代わり、君の望みにも答える。例えば、さっき君も言っていたが……報復、人間たちへの復讐とかな」


男はまたニヤリと口角を上げた。


望みをかなえる……さて、こいつが言っていることは本当なのだろうか。魔族が巧妙に人間を騙すのを私は痛い程知っている。そしてこいつはいかにも胡散臭い。でもこのままここにいてももうすぐ死ぬんだし、それに死んだところで………。


「連れてけ」


「よし」


男はにこやかに笑って指を軽く動かす仕草をした。すると、私の手首にはまっていた手錠は呆気なく取れて地面に落ち、男は私にすっと手を差し出した。


「じゃあ俺の城に行こうか」


私はペタンと手に触れる。すると次の瞬間、あっという間に景色が切り替わり、そこはすでに魔界の、大きな城の前だった。


「ここは……」


「だから、俺の城だよ」


男の後ろをそのままついて歩く。大きな門が開く、中には多くの魔族たちが待ち構えていた。


「「おかえりなさいませ、主様」」


侍女や執事の格好をした魔族たちが一斉に男へ跪いた。

私もそれに続いて中に入るとその瞬間、まるで彼らのようすが変わった。

まるで息を飲むような、私を見て、なにか本能的に感じ取ったかのようにーーーーー


彼らは私の姿を見てから一瞬で、さらに深く、深くひれ伏した。彼らがそんな風にする意味が分からなかった。


「キーラ」

男がそう呼ぶと、さきほどまでひれ伏していたものが、男のすぐ近くまで一瞬で移動した。赤く短い整った髪をしている。

「はい、ご主人様」

「こいつを部屋に案内しろ。分かっていると思うが俺の客人だ。丁重に扱え」

「御意」




「お客様、お部屋にご案内いたします。どうぞこちらへ」

キーラと呼ばれていたその女性の姿をした魔族は、そういって私に来るように促す。

「私は、なにをすればいい」

男の方を振り返る。

「暫く休むといい。ずっと牢にいたんだろ?

勿論、君に危害加えないから安心しろ」

そういって笑う。

信用できるわけではないが確かに疲労はたまっているようだ。私は一度頷いた。

「なぁ、俺はザルバスっていうんだが、お前の名前は?」

「……イリス」

「これからよろしくな、イリス」


一体これから私はどうなるのだろうか。

でも、もうどうでもいい。どうでも……


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