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序章 ネットで見た復讐代行業

 俺は田町和彦、二十七歳のひきこもり、ニート。

 中学生時代にイジメられて不登校になり、その後通信制の高校に通って何とか高卒の資格を取ったものの就職も出来ず、派遣やアルバイトを転々としていたが、どれも長続きしなくて、今は家に籠っていた。

「和彦、あんたもいい加減……」

「うるさいな、わかっているよ!」

 夜中にパソコンで動画を見ていると、いつものようにおふくろが早く働けと言ってきたので、思わず怒鳴って追い返す。


「くそ、みじめだ……」

 母親にきつく当たってしまったことへの罪悪感で、余計に惨めな気分になってしまい、恥ずかしさのあまり押しつぶされそうな気分になる。

 早く働かないといけないのなんてわかっている。

 でもそんな勇気も起きない。人と会うのが怖いし、何をやっても上手くいく気がしないのだ。


 小学からだが、特に中学の時はイジメられていた。

 学校を行きたくないって言っても、親父もお袋にも逆に怒られる始末。

 それで我慢して中学のときは学校に行った結果がこのザマだよ。

 結局、何とか進学した通信制の高校も中退でバイトも派遣の仕事もトロイだの使えないだの言われて、長続きせず、今は無職の引きこもり。

 くそくそ、何でこんなことになったんだよ。

 俺が何をしたって言うんだ。何も悪いこともしてないハズだったのに、こんな状況になるなんて。

 どうせ人生終わりなら、俺を過去にイジメていたやつを何人かでも殺して死にたい。

 誰を殺したいかと言われても、多すぎて思い浮かばないが、どうしてもというなら……


「この四人だな」

 久保山に小湊、藤原、駒木……こいつらだけは許さん。

 どうしているのかと前にSǸSで名前を検索してみたら、どいつもこいつも普通に働いて、中には結婚して家庭まで持っているのまでいるよ。

 かあああ、本当に不公平だよな。神や仏なんてのは世の中にいやしない。

 仮にいたとしてもこんな糞見たいな世の中をつくった神も仏もぶっ殺してやるか。

 何てそんなできもしないことを考えても仕方ないか、どうしても殺人をするならやっぱり拳銃くらいはないとな。

 手作りでも銃は作れるっぽいけど、ちょっと難しいっぽいしな。

 あー、だれかに殺人を依頼したいんだけどなー……そんな業者いないだろうか?


「ん? 何じゃこりゃ?」

 何てまとめブログを見ながら思っていたところで、変な広告が目に飛び込んできた。

『あなたの復讐承ります。詳しくはこちらへ』

 と書かれた広告だったが、何かのエロサイトの誘導広告か?

 試しにクリックしてみると、赤い字で『恨み晴らします』と書かれた黒いホームページがが表れた。

 いかにも胡散臭い話だったので、やっぱりイタズラかと思ったら、チャットで相談できるコーナーがあったので、暇つぶしにきいてみることにした。


「えーっと、どんな恨みでも晴らすって本当ですか……ん?」

『恨みの内容によります。復讐したい人の名前となぜ恨んでいるのか理由を明記したうえで、こちらで審査の上、仕事を受けさせていただきます』

 ふーん、恨みの内容によるね。

「取り敢えず、書いてみるかな。一応、実名は伏せておくか」

 何かの罠である可能性もあるので、実名を伏せつつ、俺がイジメられた時の内容をできるだけ書いていく。

 書いていくたびに思い出して胸がズキズキと痛んできたが、それでも気晴らしにはなるかと思い、やり取りを続けていった。

 くそ、思い出しただけでムカつく。


 中学の時はテニス部だったが、素行の悪い奴らが多く、気の弱い俺はイジメの対象になっていた。

「何、ボーっとしてんだよっ! ゴラっ!」

「うわっ! な、なんですかいきなり……」

「何ですかじゃねえ! 何、ダラダラ歩いてやがるんだよっ!」

 コートを歩いていると、いきなり背後から球を思いっきりぶつけられた上に、胸倉を掴まれて怒鳴られる。

 一年上の先輩の久保山徹……背は高いが、へたくそな癖にやたらと後輩に威張っているが、何故か俺にはきつく当たっていた。

 周りの奴らも誰も止めやしないし、こんなクソみたいな部活、部活の加入が強制じゃなければ絶対に入ってなかったのに……。


「何、トロっとしているんだよ! 本当臭くてトロイ奴だな」

「く、くさいって……」

「お前、臭いんだよ。本当、変なにおいするよな。馬鹿だし、トロイし、マジムカつくんだよっ!」

「いてえっ!」

 何もしてないのに因縁をつけられ、頭突きをされる。

 同学年の小湊博一……こいつも、いつも威張っていて、何か気に入らない事をがあると俺に因縁をつけて暴行を加えていた。


 イジメはもちろん部活だけじゃなかった――

「おい、和彦、こっち来いよ」

「え? 何……」

 休み時間になり、トイレに行っていた時、同級生の藤原義男に急に呼び出されて、掃除用具入れに押し込まれ、鍵をかけられる。

「え? ちょっと、閉まっている……お、おいっ! 誰か開けてくれっ!」

 まさか閉じ込められた? そ、そんな……休み時間もう終わるのに、これじゃ授業に……。

 キーンコーン……。

 何て思っていると、始業のチャイムが鳴り響く。

 その間、次の休み時間まで誰も来ることはなく、授業もサボってしまうことになってしまい、先生に怒られてしまった


「いてっ!」

「きゃっ!」

「ご、ゴメン……」

 体育の時間、急に誰かに蹴られ、そのまま転倒してしまい、近くにいた同級生の駒木サラにぶつかってしまった。

「何すんのよ、この変態っ!」

「いや、誰かが後ろから蹴って……」

「そのくらい我慢しなさいよっ!」

 なっ! 俺を蹴ったやつが悪いのに、何で俺がそこまで言われないといけないわけ?


 その後――

「あいつ、サラに痴漢したんだって」

「えー、キモイ。あんなおとなしそうな顔をしておいてさー」

 休み時間に、女子がそんな陰口が聞こえてくる。

 どうやら、さっきぶつかった時、駒木の奴が俺に痴漢されたとかいうデマを流したようだが……。


「――っ! あ、あいつ……」

 教室で駒木と目が合った瞬間、駒木が即座にそっぽを向き、近くにいた女子と話し始める。

 痴漢なんかしてないのに……あの女、しらばっくれやがって!


『なかなか酷いいじめを受けていたみたいですね。彼らにどうしても復讐したいですか?』

「もちろん」

『イジメっ子を殺しても構わないですか?』

「出来れば八つ裂きにしたいね」

『了解。もっと詳細を聞きたいので、こちらの番号にかけてください』

 とメッセージの後に携帯の電話番号っぽいのが表示される。

 おいおい、怪しいなんてものじゃないんだが……電話するのは怖いなあ……どうするか?

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