第二話 スライムたちがもめてるぞ!
朝。ユウトがいつものように牧場に出ると――
「ぷるるるっ!!」
「ぷるっぷるーっ!!」
「ぷるーーーッ!!!!(無音の悲鳴)」
\なにやらカオスな空気!!!/
「え!? ちょ、何!? スライムたちが……ぷるぷるしてる!?(※いつも)」
よく見ると、真ん中で赤スライム・チカチカと青スライム・ルコが、バチバチににらみ合っていた。
いや、目がないから“にらみ合い”ではない。けどなんか気迫だけすごい。
「ぷるぅっ!(その草はオレのだ!)」
「ぷるるる!(いや昨日俺が先に目をつけてた!)」
※注:どっちもしゃべってはいません。ユウトの想像です。
「ちょっと待って! 草の取り合い!? えっマジで!?」
ユウトが仲裁に入ると、今度は黄色スライム・ミルがずるずると転がってきた。
「ぷぅ……(寝てたら騒がしくて起きたわー)」
そして、どさくさに紛れて赤スライムのチカチカが、ビリビリ放電。
「ビッ! ビリッ!!」
「わあああっ!? 火事になるって言ってるだろー!!」
その瞬間――
「……ぷる(バカばっかり)」
星スライムのホシノが、誰とも絡まずマイペースに牧場の片隅で空を見ていた。
あくまで中立。浮世離れした雰囲気。モテるやつの特徴だ。
その姿を、ルコがじーっと見つめる。
「ぷる……(なんか……あいつだけ浮いてない?)」
いや、お前も文字通り浮いてるけどな!?
「ぷるる……(主役感、出してない?)」
「ぷるぷる……(なんかイケスカナイよね……)」
ミルまでそっちに回り始めて、なぜか――
\ 第2ラウンド:ホシノを巡る嫉妬編、開幕 /
「やめろおおおおおお!!!」
ユウトの叫びが、スライムたちのぷるぷるに吸収されていった――。
◆30分後◆
ルコ、草で釣って仲直り。
チカチカ、干し草に放電して反省中。
ミル、また寝てる。
ホシノ、何もしてないのに人気急上昇中。
「……ほんと、スライムって感情豊かなんだな……」
ユウトは牧場の柵にもたれて、静かにため息をついた。
「――というか、これたぶん明日ももめるやつだわ」