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素晴らしい人が好きになった人も同じく素晴らしい人とは限りません

作者: もちまる



アリステリア王国。国の周囲が深い森に囲まれたこの国では、聖女と呼ばれる神に選ばれた者が、森からの魔物の侵入を防ぐために常に結界を張っている。


聖女は王国に1人しか現れず、聖女が亡くなる1ヶ月前になると次の聖女となる者の右手に聖なる印が現れる。聖女が持つ印は虹色に輝くが、輝くのは現聖女の印のみで、次の聖女の印は前聖女が亡くなるまでは黒色で、印が輝くまで聖なる力を使うことができない。


それまでは自分の力で身を守ることができないため、手に印の現れた者は聖女を欲する他国の者達から守るためにも、その身を害そうとする者から逃れるためにも、速やかに王国に申し出なければならず、虚偽申告をした者には重い罰が与えられる。


さて、現在の聖女は今年85歳を迎え、「そろそろ新しい聖女が選ばれるのではないか?」と誰しもが思うほどには衰えが目立ってきていた。事実、手に聖なる印を持つ者が現れたのだ。それも2人も。


1人はアリスローズ・ウェリントン公爵令嬢。歳は16で、さらさらの黒髪に菫色の瞳を持つ令嬢で、凛とした雰囲気を持ち社交界では「黒薔薇」の異名で呼ばれている。


もう1人は平民のアリス。同じく16歳で、黒髪黒目の平民には珍しく、ふわふわの銀色に輝く髪とピンク色の瞳を持つ女性で、可憐な雰囲気から平民街で「花の妖精」と呼ばれていた。


同時期に2人の聖女が現れることはあり得ないため、どちらかが虚偽の申告をしたことになる。聖女の印が出た者は申し出た段階で王宮にて匿われることになっており、現在王宮には2人の聖女候補が部屋を与えられ滞在しているが・・・


「見た?今日もお2人の仲睦まじいこと」

「ほんとにいつ見てもお似合いのお2人よね」

「もう本物がどちらかわかったようなものなんでしょ?偽者はさっさと追い出してしまえばいいのに」

「しっ!聞こえるわよ!」


(私だって好きでこんな所にいる訳ではないわ。この印さえ現れなければ今頃・・・)


クスクスとこちらに聞こえるように囁くメイド達の声を聞きながら、アリスローズはそっとため息をつく。


メイド達が話していたお2人とは、王国の第一王子であるレオナルド王子ともう1人の聖女候補アリスのことである。


聖女候補2人が王宮に匿われてからわずか数日で打ち解けた2人は今や王宮内で公認の恋人同士になっている。


金髪碧眼で見目麗しく、剣を持てば騎士団長と互角に戦い、学問においては10歳の時点で5ヶ国語を操るほどの頭脳を持ち、人当たりもよく、10人中10人が「レオナルド王子が王になられる暁には素晴らしい時代になるだろう」と期待を寄せるレオナルド王子は今年で18歳になる。


「そんな完璧な王子が見初めた女性は素晴らしい女性に違いない」

「ということは本物の聖女はアリス様で偽者はアリスローズ様なのではないか?」


そう王宮で囁かれるようになってから2週間経った。誰が広めたのか、今や王宮のみならず王国内でもその噂は駆け回り、アリスローズは肩身が狭い思いをしながらも王宮から出られないでいる。


国王でさえ

「あのレオナルドが見初めたのであれば、アリス嬢はまさしく聖女になるべくして生まれた女性なのだろう」


と発言し、宰相も大神官も「次の聖女はアリス様である」という前提の元に、次期聖女(?)アリスへ聖女の引き継ぎを行っている。


(私を偽者だと決めつけるなら早く追い出せばよいものを・・・)


偽者だと国中から思われている中でも王宮から追い出されないのは、アリスローズが公爵令嬢であり、印が光らないことを確認するまでは罪に問うことができず、また他国にパイプを持つ外交大臣でもあるウェリントン公爵の手によって、罰を受ける前に他国へ逃亡することを防ぐためである。


「おや聖女を騙る不届き者がこんな所に」

「レオ様!そんなことをおっしゃられてはアリスローズ様がかわいそうではありませんか!」


王宮で与えられた自室に戻る途中、一番会いたくない2人に出会ってしまった。


「王国の太陽にご挨拶申し上げます」


嫌悪感を少しも隠す気がないレオナルド王子と、窘めながらもどこか嬉しそうな様子のアリス嬢。


「来週にはアリスが次期聖女であることが確定するだろう。その時まで、せいぜい虚偽申告をした己の罪を後悔して震えておけばよい」

「アリスローズ様、レオナルド様はお優しい方ですから、ちゃんと謝れば国外追放とかで済ませていただけるかもしれませんよ!」


(やはりレオナルド王子の中では次期聖女はアリス嬢に決まっているのね・・・アリス嬢、あなたに私の名を呼ぶ許しは与えていないしレオナルド王子に私の罪を決める権利はないわ)


突っ込み所は多々あるが、レオナルド王子から発言の許可を受けていないため黙っていると


「ふん。だんまりか。お前の罪は後日白日の元に晒されるだろう。それまでじっとしておけ。私のアリスにもし害を為そうとしたら・・・その時は容赦しないぞ」

「レオ様・・・そんな風に言っていただけて心強いです!平民の私なんかのためありがとうございます!」

「何を言う!アリス、お前はただの平民ではない、偉大なる次期聖女なのだ!アリスを守るためなら私は!」

「レオ様!」


(何を見せられているのかしら?)


酷い茶番劇だというのにいつの間にか周りに集まっていた貴族や城仕えの者達はその様子にうっとりと魅入っている。


言いたいことを言った2人は、結局私と言葉を交わさないまま、2人を褒め称える声と共に腕を組んで去って行った。


(賢王の再来とまで言われた方が1人の女性との出会いでこんなに愚かになってしまわれるなんて・・・)


アリスローズは再びそっとため息をつくと与えられた自室に戻っていった。


逃亡防止のためにウェリントン公爵家との連絡が遮断された孤立無援の現状は、印が現れてからちょうど1ヶ月となる7日後に変わるはずである。


アリスも自分が偽者であることはわかっているはずで、あと7日経てばそれが明らかになってしまうというのになぜか焦った様子もない。


「用心しておくに越したことはないわね」


アリスローズが1人つぶやいたその日の夜、アリスローズは忽然と姿を消した。


----


翌朝、アリスローズを起こしに行ったメイドが騎士と共に王子の執務室に慌てた様子で駆け込んできた。メイドの名はマリー。レオナルド王子がアリスを守るため、アリスローズが良からぬことを企んでいないか見張り報告をするように命じたメイドであるが・・・


「で、殿下!大変でございます!」

「マリーか。何があった?」


尋常ではない様子に、その時執務室にいた宰相子息であるケビン侯爵令息も眉を顰める。


「アリスローズ様が・・!アリスローズ様のお姿がどこにも見当たりません!」

「なっ!案内しろ!」


急いでアリスローズの部屋に駆けつけると、確かにアリスローズの姿がない。それどころか、アリスローズが持ち込んだドレスやアクセサリーなど、アリスローズの持ち物全てがなくなっていた。


「どういうことだ⁈ドアの外には見張りの騎士がいたし窓から出るにもここは2階だぞ⁈どうやってアリスローズは消えたというんだ!」


部屋に争った形跡もなく、アリスローズが城に来る前の状態に戻っている。


「とりあえず城中を捜索しろ!私は父上にこの事を伝えてくる!ケビンは見張りの騎士達から話を聞いておけ!」

「かしこまりました!」


国王にアリスローズ失踪の事実が伝えられると、国王は騎士団をウェリントン公爵家に向かわせた。しかしウェリントン公爵家に向かった騎士団はとんぼ返りをする羽目になった。


「どういうことだ!何が起こっている⁈一夜にしてウェリントン公爵家の者が使用人も含めて1人もいなくなっただと⁈」


報告を受けた国王はただただ困惑してしまった。王国を支える二大公爵家の1つが一夜にして消えてしまったのである。


そもそも城の厳重な監視の中どうやってアリスローズは消えたというのか。


アリスローズを見張っていた騎士いわく

「特に争う音も聞こえませんでした」

「ウェリントン家の者どころかお言い付け通りウェリントン公爵令嬢の部屋にはメイドのマリー以外入れておりません」


マリーの関与が疑われたが、これも取り調べの結果白だとわかった。


城中も、王国中も隈なく探したが、2日経っても5日経ってもアリスローズもウェリントン公爵家一同も見つからず、遂に現聖女の命が尽きる前日となった。


その頃にはアリスローズやウェリントン公爵家の捜索よりも次期聖女であるアリスの聖女就任の準備に重きが置かれ、


「方法はわからないがやましい事があったからこそウェリントン公爵令嬢は逃げたのだろう」

「となるとウェリントン公爵家にも責が及ぶから一家揃って逃げたんだ」

「やはり次期聖女はアリス様だったんだ」


と王宮中のみならず王国中で囁かれ、人々はウェリントン公爵令嬢の断罪が見られなかったことを残念に思いつつも、次期聖女アリスの誕生を心待ちにしていた。


そして遂にその時が来た。


────


次期聖女の手に印が現れてからちょうど1ヶ月になるその日、現聖女が過ごしていた大聖堂には国王陛下を始め、王妃、レオナルド王子、アリス、宰相、名だたる貴族たちが集まっていた。大聖堂の外には、現聖女への感謝を伝えると共に次期聖女の誕生を祝うために国民達が集まっていた。


「マリアンヌ様!」

「聖女様!今までありがとうございました!」

「聖女様のおかげで私達は魔物からこの身を守ることができました!」


大聖堂の外からも聖女マリアンヌへの感謝を伝える声が聞こえてくる。


「うむ、民の言うとおりだ。大義であった。そなたの次を担う聖女アリスはレオナルドが見初めた素晴らしい女性だ。立派に大役を務めてくれるだろう」

「父上、いえ国王陛下、アリスは私が生涯をかけて守ります!マリアンヌ様、長きに渡る聖女のお勤め、本当にお疲れ様でした。安心して神の御許にお帰りください」

「マリアンヌ様!私頑張ります!天国から見守っていてくださいね!」


そして遂に・・・


「聖女マリアンヌ様、神の元へお帰りになりました」


大神官が告げると神殿中が悲しみに包まれる。しかしこれは次期聖女の誕生の時でもあるのだ。


聖女マリアンヌの喪失を惜しみつつも次期聖女の誕生を祝おう・・・その場にいた者たちは黙祷を捧げ、目を開けると聖女アリスの輝く右手の印を見ようとした。しかし・・・


「光って・・いない?」


誰かがそう呟いた。その場の誰もがアリスの右手に注目している。しかしいくら目を凝らして見ても右手の印は黒色のまま・・・


「ア、アリス・・・右手を私によく見せてくれ」


レオナルド王子がアリスの右手に手を伸ばす。すると


「あれ?そんなはず・・・だってマリアンヌ様が亡くなったらちゃんと光るように魔法をかけたってあの人が!」


はっと慌てて口を噤むが時すでに遅し。


「どう言う事だ⁈光るように魔法⁈まさかアリス!この印は偽物なのか⁈」

「なっどう言う事だ!!レオナルド!アリス嬢が聖女なのではなかったのか⁈」


その場にいた誰もが青ざめた。聖女マリアンヌは亡くなった、するとすぐに次の聖女の右手の印が虹色に輝くはずである。しかし現にアリスの印は黒色のまま。そして本人の発言・・・


「まさか・・・アリス様が偽者だったってことは本物はウェリントン公爵令嬢だったということなのか?」

「そんな!!アリスローズ様は行方不明なのよ!じゃあまさか今王国の結界は⁈」


慌てふためく貴族達の声に、茫然自失となっていたレオナルド王子も我に返った。


「そ、そうです!陛下!アリスが偽者だとしたら国の結界は今どうなって・・」


その時、


「やっとこの国から聖女がいなくなったな」


聖なる大聖堂に現れたのは・・・ここには絶対に入る事のできないはずの魔物・・・黒髪に赤く光る目を持つ恐ろしいほど美しい魔物が突然大聖堂の中央に現れた。


「あっあなたは!レオ様あの人です!あの人が私の右手に魔法をかけてくれるって!右手に聖女の印を描いたら魔法で光るようにしてくれるって言ったんですよ!ちょっと!話が違うじゃないですか!そのせいでみんなから怖い目で見られたんですよ!」

「なっ⁈アリス君は何を言ってるんだ!なんでそんな事をした⁈」

「だってあの人が、聖女の印を持てば王子様と会えるって!私レオ様にずっと憧れてたんです!私のレオ様を思う気持ちに感動したから、あの人が協力してくれるって!」

「ふふ、本当に感動したよ。まさか自ら結界の外に出る馬鹿がいるとはね。すぐに殺してやろうかと思ったが、もしかしたらこの国の聖女を消せる可能性もあるのではとほんの気まぐれで生かしておいたことがこうも上手くいくとはね」


そう、アリスは今から約1ヶ月前にたまたま結界の外に迷い出てしまった。それを見つけた魔物のほんの気まぐれ・・・


(殺す前にこいつに夢を語らせて夢への希望に満ちた時に命を・・・)


遠目から見たことがあるだけの王子への恋心を熱心に語るその姿を見て面白半分でついた嘘・・・


「君の純粋な気持ちに感動したよ!実は僕は魔法が使えるんだ!そろそろ今の聖女が危ないんだって?そしたら君が次の聖女ですって名乗り出ればいいよ!聖女になれば王子様と会える機会も増えるでしょ!」

「えっでも私には印なんか出るわけが・・・」

「そんなの塗料とかで描いたらいいじゃん!」

「なるほど!いや、今の聖女様が亡くなった時に印が光らなければすぐに偽物ってバレちゃうじゃないですか!それに結界張れないし!本物の次期聖女も出てきたらどうしようもないじゃないですか!」

「そこは僕に任せて!魔法が使えるって言っただろう?今の聖女が死んだら印が光るように魔法をかけてあげる!それに聖なる結界とは違うけど、魔物を寄せ付けない防護壁を魔法で僕が作ってあげる!」

「なるほど!でも本物が現れたら?」

「本物を偽者にするにはね、強い味方を作るんだよ。そう、たとえば王子様と恋仲になるとか・・ね?君の国の王子様すごく優秀なんだろ?そんな人に選ばれた人は同じくすごい人なんだ!つまりこっちが本物だ!ってみんな思うよ!」

「確かに!つまり、私が王子様と恋人になれれば私が本物の聖女ってことですね!」


(馬鹿だなこいつ!そんなに上手くいくわけないだろ!)


そのまさかが起きてしまった。アリスは自分で右手に聖女の印を描き、自分の夢を叶えるために優しい魔法使い(正体は魔物)が魔法をかけてくれると信じて疑わず、王国に虚偽の申告をした上でまんまとレオナルド王子と恋仲になったのだった。


騙されたとわかってももう遅い・・・


「まさかウェリントン公爵令嬢を攫ったのはお前達か⁈」

「ウェリントン公爵令嬢・・・あぁ本物の聖女か。そんなわけないだろ・・結界がある中俺達が入れるわけがない」

「じゃあなぜ・・・⁈」

「そんなの俺が知るわけないだろ?俺達が入れたってことは今この国にいないのは確かだな」


国王の問いにあっけらかんと返す魔物・・・


「きゃー!!」

「助けて!!」

「何でこんなところに魔物が!!」


大聖堂の外から民衆の叫び声が聞こえてくる。


「こ、こうなったら騎士達よ!魔物を殲滅せよ!」


国王の命令に従い、騎士団と共に剣に覚えのあるレオナルド王子も自ら魔物と戦おうとするが・・その日アリステリア王国は1日にして魔物に滅ぼされてしまった。


────


「1日も持たなかったか・・まあ自業自得だね。本物のアリスローズを偽者扱いしてまさか国民までも悪口三昧とは・・」

「ウィル、私のためにありがとう。あなたのおかげで私殺されなくて済んだわ」

「ウィリアム王子、私達まで受け入れていただき本当にありがとうございました」

「いいんですよ、元々ローズは私と結ばれるはずだったんですから。ローズの家族は私の家族同様、ローズが大切にしている者達は私にとっても大切な者達だ」


今は婚約者となったウィングラン王国のウィリアム王子を見ながらあの日のことを思い出す・・・


あの日、レオナルド王子とアリス嬢に最後に会った日の夜、アリスローズの部屋に突然ウィリアム王子が現れたのだ。


「ウィル⁈どうしてここに⁈」

「話は後だローズ、こんな所にいたくないだろう?ほら、俺と一緒にウィングラン王国に行こう!」

「で、でもそしたらこの国の民はどうなるの?間違いなく私が本物の聖女なの・・マリアンヌ様がお亡くなりになった時に私がこの国からいなくなったら・・」

「その事だけどね、この国は腐ってるよ。アリスローズ、君は聖女様の亡くなる前に秘密裏に処刑される」

「えっ・・処刑?どういうこと?」

「国王と王子、宰相に大神官も合わせて君の処刑日を決めていた。レオナルドが白と言ったら白、黒と言ったら黒、いくらレオナルドが神童と言われているからってこの国は異常だよ。アリスが聖女になる日に偽者のローズが存在していることが許せないから内密に処刑してから国民に知らせるって」

「そんな・・・」


マリアンヌ様が亡くなる時には真実が明らかになる・・だから今さえ耐えれば、そう思っていたのに・・


「国民もね、君を偽者だと思い込んで処刑されるのを楽しみにしているよ。聖女の印の虚偽申告は処刑って決まっているからね。美しい公爵令嬢の破滅が面白くて仕方がないんだろう。心配しているのは君のご家族や使用人達くらいかな。あとは領民。彼らもすごく心配していたよ」

「お父様お母様・・みんなも心配してくれているのね・・そんなみんなを見捨てて逃げるわけには・・」

「大丈夫、一足先にみんなには我が国に移動してもらった。我が国の魔法使いにかかればあっという間だよ。ローズ、ここに君を守ってくれる人はいない。そして君が守りたい人はここにはいない。どうか僕の手を取って約束通り私の妃になってくれ」


こうしてアリスローズはウィングラン王国にやってきた。元から親交のあった2人は将来の約束をしていた。聖女の印が現れる翌日に正式にウィリアム王子からアリステリア王国へアリスローズとの婚姻についての話をする予定だったが、城に匿われてしまったことで延期をしていたのだ。


アリステリア王国に聖女候補が2人いるという情報をいち早く得たウィリアム王子はアリスローズを心配し魔法で王国の様子を確認していた。


そしてアリスローズの処刑について話し合いが行われた段階でアリスローズの救出を決め、ウェリントン公爵家や使用人、領民にも事の次第を伝えウィングラン王国へ移住させたのだ。


「しかし、優秀すぎるのも恐ろしいな。その人が持つ物にまで素晴らしい価値があると勘違いさせてしまうとはね」

「そうね・・・それだけ優秀な方だったから・・・」


素晴らしい人の持つ物も同じく素晴らしい、素晴らしい人が好きになった人も同じく素晴らしい人・・・


そんな思い込みがひとつの国を一夜にして滅ぼしてしまった。


「さて、私達は盲目的になりすぎず、でもお互いを尊重しながらこの国を守っていこうローズ」

「そうねウィル。共に守っていきましょう」


ウィリアム王とアリスローズ王妃の治世は後世にも語り継がれる程素晴らしい発展をした。


銀の髪に碧眼の美しい王と黒髪に菫色の瞳の美しい王妃は2人の王子と2人の姫に恵まれ、王妃は結界で国民を常に魔物から守ったことから「聖なる黒薔薇姫」と呼ばれ尊敬された。

誤字報告をしていただいた方、ご指摘いただきありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
アリスローズを処刑する予定だったんなら、どっちにしろこの国が魔物に滅ぼされるのは決定してたって事ですよねw メンヘラ女にまんまとハマった間抜け王子やその王子に盲目的になってた人達が、自分達の愚かさとや…
[一言] わずか数日で公平に扱うべき聖女候補の一方に入れ込んでしまう王子は素晴らしい人ではないと思います。 国王を始め周囲の誰一人として窘めないのがなあ。 百万歩譲って公爵令嬢を優先して平民を無視する…
[良い点] 着眼点が面白く、徹底的な自業自得による結末もある意味爽快。 [気になる点] 隣国王子と対比させたかったのは分かるのですが、王子がただのゴミクズにしか見えないので、悪魔の策略や讒言で徐々にア…
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