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怠惰なソクラテスはラブコメをしない  作者: 大河内美雅
第1章5月 俺は恋愛をしない
33/46

今日はつとめて

 五月三十一日


 朝、起きると時刻は5時半だった。


 ゆっくりと体を起こして、軽くストレッチをする。

 そして俺は家を出て、施錠した。

 

 まだ、早朝で梅雨入りすらもしていないのに、日が照ってて少し暑い。

 

 俺はポケットからワイヤレスイヤフォンを取り出すと、片耳だけつけてランニングを始めた。


 ランニングは週に1回か2回ぐらいする。

 朝起きた時刻が6時より前だったら走るようにしてる。


 理由は単純。

 暇だから。


 朝起きてスマホをいじるのも最高だが、音楽を聴いて走るのも結構楽しい。

 全力で走るとダルいから、ゆっくり走るようにしてる。


 秋津公園内を軽快なペースで走る。

 朝だから人も少なく、たまにおじいちゃんが太極拳をやってるくらいだ。

 申し訳ないが、笑ってしまった。


 (しかし、こうも少ないと歌を歌いたくなっちゃうよな)


 俺は今流れてる曲を口ずさんだ。


Don’t (ドント)stop (ストップ)me(ミー)now(ナウ)If(イフ)you(ユー)wanna (ワナ)have (ハブ)〜〜……」


 最高に気分がいい!

 楽なペースで好きな音楽を歌いながら走る。


 これは(わたくし)、素晴らしい朝を送ってるのでは!?

 俺の華麗な朝ランは誰にも止められないっ!


「あ、コウー」


 俺の歌は突然、中断させることになった。

 理由はベンチに座っていた半袖短パンの美桜に話しかけられたからだ。


 俺は止まってイヤフォンを外す。


「コウ、なんか楽しそうだね。

 めっちゃノリノリに歌ってて」

「……俺、そんなノリノリに見えました?」

「今の俺は最高に気分がいいぜっ!って顔してた。

 陽気な歌声も聞こえたし」

「……じゃあ違うわ。

 今の俺は最高に気分だだ下がりだから」


 上機嫌で歌いながら走ってる姿を見られた……。

 恥ずかしすぎて、萎えてくる。


 誰か俺をグレッジでぶって。

 





「珍しいね、コウが早起きランニングするなんて」


 俺は最高のランニングをやめて、美桜と仲良くベンチに座った。

 さすがに、あのまま走るだけの勇気は俺にはなかった。


「そうでもないけど。

 早く起きた日は走ってるし」

「早く起きた日だけ走るなんて……ふっ、そりゃあ甘えですよ……!」

「そのキャラ何?

 初耳なんですけど」

「すぐに答えを求めるなんて……ふっ、そりゃあ駄目ですよ……!」

「よし、ランニング再開するか」


 早朝からめっちゃウザい。

 元ネタが何かわからないが、このアホに変なの植えつけんな。


「ごめんごめん、もうしないから」

「都合が悪くなったら謝るなんて……ふっ、そりゃあ自業自得ですよ……!」

「あ、パクった!

 人がせっかく真剣に考えた構文を!」

「え、マジ?これどっかの引用したんじゃないのかよ。

 ってか、英語の構文みたいに言うな」


 どうでもいいことに時間使ってんな、この子。

 

「私は毎日走ってるよ。

 晴れの日も雨の日も」

「雨の日もって……。

 レインコート着て走ってたら臭くならないか?」

「晴れだろうが雨だろうが、ランニングの後はシャワー浴びてるから大丈夫。

 ……もしかして浴びてないの?」

「浴びてるに決まってるわ。

 知り合いに臭いと思われるの嫌だし」

「具体的には誰に臭いって思われたくない?」


 美桜が純粋な眼でこちらを見てくる。

 

 この質問の意図は何だろう。

 一体全体何をたずねたがってるのか。

 これ、難関大の問題レベルだぞ。


「誰だろうな……。

 強いて選ぶとしたら、」


 この人しかいない。


「蒼生かな」

「本当にコウは蒼生くん大好きだね」

「蒼生は千葉が産み育てた究極の男の娘だ。

 あの見た目で男性は……マジぎるてぃ」

「それはみーとぅだよ。

 私、性別は男と女だけじゃないと思ってる。

 その中間の両方を兼ね揃えてる特別な性別がきっとあるんだよ」

「なら、その性別名はアオでいいだろ」

「うん、私が考えたオカマよりはいいね」

「いや、オカマはほぼ100で性別男だからな。

 全然意味はき違えてるぞ」


 面白そうに美桜がハハハと笑う。

 俺も少しおかしくて笑った。

 

「アダムとイブなんて話があるけど、性別ってほんとよく分からないよね」

「まぁな。

 俺は女子の気持ちなんてさっぱりだけど、かといって男子の気持ちも分からないことが多いからな」

「いつか分かるようになっておきなよ。

 女子は鈍感な男子に結構イライラするからさ」

「鈍すぎず鋭すぎず。

 俺は適度なボーダーラインを見つけるわ」

「ま、それが一番いいかもね」

「ちなみに男子は、自分が正しいと思い込んで人のせいにする勘違いブス女が死ぬほど嫌いだから。

 そしてそういう女はたいてい低学歴」

「明らかなる偏見!?」


 もちろん多少可愛いくらいでもアウトだ。

 世界一の美女でもない限り、男子はそういう女は嫌いだ。

 

「男子って女子の何倍も怖い生き物だと思う」

「安心しろ。

 その男子の何乗も恐ろしい生き物が女子だから」


 それって結局とか言いながら、美桜が考え始めた。

 頭の中で計算してるに違いない。

 そして間違ってるに違いない。


 計算を終えたのか、美桜が死んだような目をしていた。


「女子ってヤマタノオロチなんだ……」

「もはや計算の概念を超えてきたな。

 今日、先生にどうしたら怖さが等しくなるか質問してみたら」

「そうしてみるね」


 美桜には分からないと思うけど、答えは0。

 つまり両方全く怖くない。

 

「そういえば、今日で五月終わるんだよ」

「高ニになってもう二カ月か。

 時の流れってやっぱ早いな」

「なんかおじいちゃんみたいな台詞だね。

 でも、ほんとにそうだよ。

 気づいたら、もう終わってるんだよ」


 美桜は嬉しそうな、でも悲しそうな目をしていた。

 表情や考えてることが分かりやすい美桜にしては珍しく、繊細で複雑な色合いを含んでいる。


 鈍すぎず鋭すぎずの俺はそれが何かわからなかった。

 


 




 

 

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