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怠惰なソクラテスはラブコメをしない  作者: 大河内美雅
第1章5月 俺は恋愛をしない
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めんまを片手に学校の話

「「いただきます」」


 しっかりと食事の挨拶をして、ラーメンの麺をすすった。

 醤油の風味が麺に絡みついて美味い。


 ここは駅前のラーメン店。

 訳あって、俺と侑希、真瀬先輩と松永先輩の四人で来ている。


「絋汰、しっかりよく噛んで食えよー」

「ふぁい、ふぁふぁりましふぁ」

「ふぁが多すぎて、何言ってんのかわからねぇ」


 真瀬先輩が苦笑いをした。

 

 もしかしなくても、俺はしたない子って思われたのかしら。

 嫌だわ。







 結局、真瀬先輩との練習試合はこちらがボコボコにされて終わった。


 点差はそこまででもなかったが、それ以外の部分で大きく差があった試合だった。

 こちらのショットを正確に予想して、打たれたくない嫌な場所へ完璧にスマッシュを打つ。

 こんな得点が何回もあった。


 自分の課題が多く見つかった。

 そんな試合だった。


 練習後は普通に侑希と帰ろうとしたが、真瀬先輩と松永先輩に声をかけられた。


「二人とも、この後ご飯でもどう?」


 松永先輩が誘ってきた。

 どうしようかと迷ったけど、優しい松永先輩の誘い断るわけにはいかなかった。

 何より、真瀬先輩が来ないと殺すって目をしていた。


 初めから選択権などなかったのだ。







「絋汰も侑希も上手くなってて、びっくりした。

 特に絋汰は体力もついてきて粘り強くなったと思う」


 松永先輩が手放しで褒めてくる。

 俺は喜ぶのを我慢して、謙虚に振る舞った。


「いえ、俺なんてまだまだです。

 課題が山ほど見つかりましたから」

「そうだぞ、瑠衣(るい)

 あんまりこの二人を褒めんな」


 焼豚(チャーシュー)を食べながら、真瀬先輩が咎めてきた。


「絋汰、お前もっとスマッシュ練習しとけよ」

「うっ」


 痛いところを突いてくる。

 やっぱり気づいてたか。


「スマッシュだったら入ってた場面も、絋汰はプッシュだったりドライブだったりでミスらないようなプレーを選択してる」

「確かに、それはあるかもしないっすね。

 俺も絋汰とやってて何回かそういうのあったっす」


 侑希も同意してきた。

 もちろん、俺も心あたりしかなかった。

 そして、それが今の俺の課題。


「俺あんまりスマッシュが得意じゃないんですよね。

 だから、自分の得意なショットまでラリー続けようと考えてました」


 ヘアピンとかトリックショットなど、変化球的なものだ。

 俺の大体の得点パターンと言ってもいいかもしれない。


「なるほどな。

 でも、苦手だからって挑戦しないままだと、これ以上強くはなれないぞ」


 その通りだ。

 勝つためには何か変化しないと駄目かもしれない。

 そのまま放置しておくと成長は止まる。


 それはただの言い訳だ。


「俺、県予選までにスマッシュ上手くなります」

「口だけ野郎にはなるなよ。

 正確で強力なスマッシュが打てるようになったら、絋汰のプレーの幅も広がるから。

 なんならスマッシュ速かったら、多少強引でも入る」


 俺には強引さがないのかも、とふと思った。


 俺はどちらかといえば堅実の中に変化球的なプレースタイルだ。

 スマッシュが打てるようになったら、もう少し攻撃的なプレーができる気がする。


「それはあるかもね。

 琉珸だってよく脳筋スマッシュして点取ってるし」

「ちげーよ。俺のプレーは全て戦術的にやってんだ。

 全ては計算のうちよ」

「マジっすか。真瀬先輩って、てっきり数学できない文系だと思ってました」

「バリバリの理系だ。

 なんなら、そこそこ点も取れる」

「ははっ、想像つかねー」


 笑った侑希の腹を真瀬先輩が一発殴った。


 ナイスです、真瀬先輩。

 いいボディブローです。


「とにかくもっとスマッシュを磨け。

 せっかく技術(テクニック)や瞬発力は俺と同じくらいあるんだから」


 そうアドバイスして真瀬先輩はスープを美味そうに飲んだ。


 もっと真瀬先輩や松永先輩と試合して、学習したい。





「そういえば、真瀬先輩って彼女いるんすか?」


 急に侑希が話題を変えた。


 何がそういえばなのか、全くわからない。


「急にどうした」


 真瀬先輩が怪訝そうな表情をした。

 そうなるのは当たり前だ。


「いやぁ、牧原が先輩と可愛い女子が並んで歩いてるとこ見たって」

「気のせいでしょ。

 俺はバドミントン一筋だ」

「気のせいじゃないよ。

 その子、琉珸が片想いしてる子だから」

「おいっ、瑠衣。余計なこと言うな」


 真瀬先輩が松永先輩の口を手で封じた。


 おやおや、なんか面白くなってきたぞ。


「真瀬先輩、もう洗いざらい語っちゃってくださいよ」


 侑希が真瀬先輩の肩に手を回した。


 出た、侑希の語っちゃえよムーヴ。

 実際に語った人はいないけど。


「気持ち悪い、気持ち悪い。引っ付いてくんな!」

「へへ〜、先輩が話すまで離しませんよ」


 へへ〜とか言うあたり本当に気持ち悪い。

 本当にこいつ、モテてんのか?

 モテてるとしたら、その女子たちは変態だ!紛れもなく!


「諦めたら、琉珸。

 それに話したらなんかいい案出してくれるかも」

「そうっすよ。こう見えて俺モテるんで」

「嘘……だろ」


 真瀬先輩が信じられないって顔してる。


 気持ちは分かります、先輩。


「なんで隠すんか。大胆に言ってくださいよ!」


 さすがに侑希のしつこさに参ったみたいで、真瀬先輩はため息をついてボソッと言った。


「……同じクラスで百人一首部の女子だ。

 去年も同じクラスで、文化祭実行委員で一緒になって仲良くなった」

「百人一首部かぁ。

 言われてみれば可愛い女子多いっすよね」

「俺の話はこれくらいでいいだろ。

 瑠衣、お前はどうなんだ」


 話を振られた松永先輩がうーんと反応した。


「俺は今はいないかな。

 きっかけがないんだよね」

「でも、松永先輩モテますよね?」


 松永先輩はイケメンではないが、性格が神様よりも優しいし周りをよく見てる。

 こんな良い人ならモテてもおかしくない気がする。


「絋汰、俺は全然モテないよ。

 なんせ隣の真瀬琉珸とかいう男がモテモテだからさ」

「モテない理由を人のせいにすんな」

「いや、事実だから。

 何人の女子が真瀬君紹介してって頼んできたことか」


 おそらく真瀬先輩に直接話しかける勇気がないから、話しやすい松永先輩に頼んだのだろう。

 俺だったら面倒くさくて絶対断る。


「瑠衣、次からその紹介断れよ。

 知らない女子に話しかけられるのは結構きつい」

「善処するよ。

 侑希は……うん、やっぱいいや」

「やっぱいいやって何すか!

 俺にも訊いてくださいよ」


 侑希が大袈裟に嘆く。


 こいつ自慢したいだけだろ。


「だって侑希めっちゃモテるって訊いた。

 多分、今までにも彼女いたよね?」

「一人だけっすけどね。可愛い彼女でした」

「過去形ってことは別れたんだ。

 絋汰は相手誰か知ってる?」


 知らない訳がない。

 散々煽られたのだから。


「女テニの萩原さんです。

 身長低くてポニーテールの」

「教えてもらっても分かんないから、後で確認しとくよ」


 侑希が「調べないでくださいよー」なんて虫のいいこと言ってる。


 自業自得だぞ、侑希。


「絋汰は誰か好きな人でもいるのか?」


 あまり話に入りたくなかったのは、いずれ自分にも訪れると思ったからだ。

 流れ的に次は俺だったし。


「いませんよ。

 今もこれからもバドミントン第一ですから」

「マジ?てっきり、女バスのあの子が好きなのかと思った。

 なんなら付き合ってんのかと」


 松永先輩が意外そうな表情をした。

 真瀬先輩もそれに頷いている。

 侑希の言う通り結構そういった噂が広まってるのかもしれない。


「美桜ですか?あいつは仲の良い友達ですよ」

「そうは見えないんだけどな。

 琉珸もそう思うでしょ?」

「俺もあの子と絋汰はお似合いだと思うけどなー。

 でも、絋汰がそう言うならそうなんだろう。

 お前は侑希とは違って誠実だからな」

「真瀬先輩、俺と侑希を比べないでください。

 俺に失礼です」

「二人ともさすがに酷くないか!?」


 侑希以外の三人が笑った。

 笑いながら俺は考えていた。


 俺は美桜と仲が良い友達のままでいたい。

 どちらかが恋愛感情を持ってしまうと、友情100%の友達ではいられなくなる。


 別に嫌いって訳じゃなくて、ただ今の関係が心地よくて満足しているだけ。

 だから、このまま何も変わらずに過ごしていきたい。


 そして、改めて俺は思った。


 人間関係において友達という関係が一番だと。





 

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