表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰なソクラテスはラブコメをしない  作者: 大河内美雅
第1章5月 俺は恋愛をしない
15/46

黄昏の出会い

 五月八日

   

 不思議な夢を見た。


 知らない女性だ。

 綺麗な茶髪はウェーブをかけていて、朗らかに笑っている。

 美人だ、と俺は思った。


 何だろう。

 知らないはずなのに、どこかで会ったことがあるような気がする。


 おしゃれな喫茶店だ。

 俺はコーヒーを飲みながら、真剣な表情で相手と話している。

 どんな話をしているのか分からない。


 やがて女性は口を開いた。

 よほど衝撃的な内容だったらしい。

 俺は固まって動けていない。


 何だこれはーーーーーー。


 そこで目が覚めた。

 今のは、今のは何だ。


「何だったんだ、今の夢」


 部屋を見渡すが、そこにはいつもと同じ朝が広がっていた。







 GW(ゴールデンウィーク)明けの学校は非常に憂鬱だ。

 夢から現実へと強制的に引き戻す。

 部活動がなく、休みを謳歌していた生徒にとってはたまったもんじゃないはずだ。


 お土産として買ってきた本は好評だったらしく、琥珀は「タイムマシン作ってみたい!」なんてはしゃいでいた。

 

 気に入ってくれたのは嬉しい。

 それは俺に本選びのセンスがあるということだからだ。


 やる気がないまま、授業と部活をやり過ごした。


 もうすぐインターハイ予選も近いのに、やる気がないのはかなりヤバい。

 どうにかして、ボルテージをあげていかないと。


「なぁ、今日駅近のマック行かね?」


 下校中、侑希が誘ってきた。

 断る理由もないので、すぐ返事をする。


「行こう。小腹空いてるし」

「ナイス。俺、ナゲットが無性に食べたくなったんだよな」 

「食べすぎて太んなよ」


 注意しつつも、俺も何を食べるか考える。


 ここは無難にポテトか?

 いや、シェイクもありだな。

 でも、体重増えそうなんだよなぁ。


 一人で真剣に悩んでいた。


 そのせいで、俺は前から歩いてきた通行人にぶつかってしまい、反動で相手が倒れた。


「すみません、大丈夫ですか」


 謝罪をしながら、転んだ女性に手を差し出した。

 女性は「大丈夫」と手を取って立ち上がった。


「本当にすみません」


 もう一度謝って、相手の女性の顔を見て、心臓が止まりそうになった。


 ウェーブをかけた茶髪にくっきり二重まぶたの瞳。

 

 俺はこの美人を知っている。

 会ったこともないし、見たこともないけど知っている。

 今朝、夢で出演したばかりだ。


 女性の方は俺の顔を見て驚きの表情を浮かべた後、意味深に微笑んだ。


「どうしたんだ、絋汰」

「いや、ちょっとな」


 適当に相槌を打つ。

 そして、そのまま侑希と一緒に通り過ぎようとする。


「待って!」


 右手首をつかまれた。

 誰がつかんだかは瞬時に察した。


「なんですか」


 動揺したせいか口調が少しキツくなってしまった。


 女性は複雑な表情をしたが、やがて元の優しそうな笑みに戻した。


「お……、兎束絋汰君だよね?

 少し話さない?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ