表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰なソクラテスはラブコメをしない  作者: 大河内美雅
第1章5月 俺は恋愛をしない
12/46

そうだ、本屋に行こう

 五月五日

 

 三日、四日と中々ハードな部活を終えて、迎えたこどもの日。


 俺は爆睡していた。


 今は午後一時半。

 実に一日の半分を無駄にしたものだ。


 でも、それと引き換えにしても、春の心地よい眠りは価値のあるものだった。

 春眠、暁を覚えずとはの事かもしれない。


 琥珀と自分の分のチャーハンを作って、脳死で口に運んでいった。


「お兄ちゃん、今日の夜ご飯は唐揚げがいい」

「そうか。じゃあ、帰りにスーパー寄って買ってくるよ」

「ん?今日、どこか出かけるの?」

「ちょっとな。もしかしたら、帰りが遅くなるかもしれない」


 本を買いに行くだけだから、時間はかからないと思うが、冴子さんのことだ。

 十中八九それだけでは終わらない気がする。

 夕飯を外で取ることも視野に入れなければ。


「へー、相手は?」

「高校の友達だ」

「嘘だー。友達とどっか行く時はいつも、『侑希と行ってくるー』とか『蒼生とデートしてくる♪』とか友達の名前出すじゃん」


 琥珀はこういう時、結構勘が鋭い。

 よく人を見ているというか。

 しかし、冴子さんは俺の友達に違いないので、別に嘘はついていない。


「嘘じゃない。友達と本屋で買い物だ」

「なら名前言ってみてよー。さんっ、はいっ!」

「ごちそうさまでした」


 琥珀の掛け声を完全にスルーして、食器をシンクに入れた。


 特にやましいことはないのだが、なんか冴子さんの名前を出すのは面倒なことになる気がする。


「ねー、お兄ちゃん。今日の相手、女性なんでしょ。

 恥ずかしがんなくていいからさぁ」

「名前は出さないけど、まぁそうだよ。女性の友達と出かけるんだ」

「いっけないんだー、いっけないんだー。美桜さんにチクっちゃおっと」

「なんで美桜にチクるんだ」


 俺が疑問を口にすると、琥珀は明からさまなため息をついた。


 もしかして、美桜はそんなに俺とどこか遊びに行きたかったのだろうか。

 絶対そうだ。


「まだまだ先は長いよ、美桜さん」

「そうかぁ?また、どっちも部活ない日に遊びに行けばいいだろ」

「……。お兄ちゃんは一回ラブコメを知った方がいいよ」

「俺は断然、ラブコメよりもミステリーだけどな」


 よくわからない生き物だ。女子というのは。


 二人分の食器を洗って、身支度を整えると、時刻は二時半になっていた。


「お兄ちゃん、そろそろ行くの?」


 琥珀がわざわざ見送りに来てくれた。

 こいつ新妻力高いな。


「あぁ、行ってくるよ」

「いちゃいちゃするのは構わないけど、たまには私とも遊んでほしいなぁ」


 少しだけ拗ねているらしい。

 顔がちょっとむくれている。

 琥珀を蔑ろにしたつもりはないのだが。


 反抗期?反抗期なら俺ではなく、父親にしてほしい。

 多分、一週間はへこむな。


「ベリーアンダスタンド。いつかな」


 少し機嫌を直した琥珀に「いってらっしゃい」と見送られて、待ち合わせ場所を目指した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ