表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰なソクラテスはラブコメをしない  作者: 大河内美雅
第0章 8年後
1/46

プロローグ

   プロローグ


 大切な人を傷つけてしまった。


 謝罪をしても、なお罪悪感が残ってしまう。

 いや、そもそも謝罪をしたところで、それは無駄なことだ。

 自分のした行動が帳消しになるわけでもない上、相手に失礼だとさえ感じる。

 言葉ではなく行動で、傷つけてしまった人たちに誠意を示すべきだ。


 絋汰(こうた)は言った。一つの幸せは多くの不幸の上に成り立っていて、全員が幸せになることは不可能だ、と。


 初めて聴いた時は酷い考えだなぁとしか思わなかったけど、今ならその本当の意味が分かる。


「新婦様。お時間です」


 私を呼ぶ声がして、私は思考の海から戻った。

 振り返ると、先ほどウェディングドレスを着させてくれたスタッフが笑顔で立っていた。

 私は礼を言い、ブライズルームを退出した。


 一人で歩くことに、少し胸がつまりそうになったが、ぐっと堪えて、笑顔を作る。

 泣くのは別に、式が終了した後でいい。

 今はとにかく、笑って絋汰のもとへと向かわなければならない。


 そうやって、笑顔を作ろうとしているうちに、美しい装飾が施された扉の前へと来た。

 扉の向こう側からは、結婚行進曲のメロディーが流れているのが、音漏れで分かる。


 私はスタッフの顔を見た。スタッフは笑って目配せをした。

 どうやら、扉を開けるという意味らしい。

 心拍数が信じられないくらいに上昇する。

 心臓が口から出そうだ。

 

 どうして、こんなにドキドキしてしまうのか。


「では、行きますよ」

 

 スタッフの声がしたかと思うと、扉が開かれた。輝かしい照明に目が眩む。

 扉の向こうに側には、バージンロードが広がっている。

 本来なら、父親と一緒に歩くのだが、私は一人で歩かなければならない。


 ー絋汰。今、行くからねー


 愛する人のもとへ、着実な一歩を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ