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18歳までの指切り



 うぅーん…あ!やば!もうこんな時間!!

いつものように寝坊をしてしまい、私の朝は今日もバタバタ。

「行ってきまーす!」


 はぁはぁ。走ったら、なんとか間に合ったー。

「もう!さくらってば!また寝坊したんでしょ?」

と、親友のななみが言う。

ななみはしっかり者で、マイペースな私はよくななみに注意される。

「だってー、私朝は弱いんだもーん。」

「やっぱり!また、その理由w」

だけど、最終的には2人とも笑っちゃう。


 それから、朝の会が始まった。

「みなさん、おはようございます。今日はー、クラブ活動がありますね。」

あー、今日クラブかー。嫌だなーー。

ホントは家庭科クラブがよかったのに、よりによって第5希望のバドミントンクラブになっちゃったしー。ななみとも、クラブが別れちゃったしー。

 今日のクラブが、中止になればいいのにー…。


 なのに、時間はあっという間に過ぎて、とうとうクラブ活動の時間が来てしまった。

私は1人で、体育館に向かった。

 少しすると、担当の村上(むらかみ)先生が来た。

「こんにちは。担当の村上辰哉(むらかみたつや)です。1年間、よろしくお願いします。」

村上先生は、今年新しく来た先生。だから、私もあまり知らない。確か、5年生のクラスの担任だっけー。

 それから、練習が始まった。

今日は、順番に村上先生とバドミントンをして、みんながどれくらい出来るのかを知ってもらうためのテストのようなものをする。

はぁー、緊張するなー。

 ついに、私の番。

先生が打ってくるシャトルを、一生懸命打ち返した。

ピピーッ

と、笛を吹く音がした。

終わった~。け、結構出来た…かな…?

この後は、先生にどのくらい出来ているかを聞くことになっている。

私は、ドキドキしながら、先生の前に行った。

「えーっと、さくらはまずサーブが下手。それに、あのラケットの持ち方はなんだ!?ちゃんとした持ち方にしないと、上達しないぞ!」

あんなに頑張ったのに、「サーブが下手。」なんて…。いくらなんでも、言い方悪くない!?

それに、あんなに偉そうな態度だしー、何様!?

 私だって、好きでバドミントンクラブに入ったわけじゃないのにー。


 次の日…。

私は、昨日のクラブのことを、ななみに話した。

「えー!何それ!言い方ムカつく~!!」

「ホント!あんな先生、大っ嫌い!!」

チリリリリ チリリリリ

えっ?このベルの音ってー。不審者侵入!?

「緊急放送、緊急放送…」

やっぱり…。く、訓練じゃないよね!?

「きゃー!!!!!!」

5年生の教室から、叫び声が…。ってことは、そこに不審者が!?じゃあ、5年生の教室を通らずに、体育館に行かないと!

なのに、こんな時に限って教室に担任の先生がいない。

「どうしよー。」

「逃げよう!!」

と、クラスのみんなが避難している。

私も、逃げなきゃ!!

 ろうかは、いつの何倍も混雑していて、前もよく見えない。

「た、助けて…。」

と、かすかに声がした。

隣の2年生の教室を見ると、小さい女の子が机の下敷きになっていた。

「えっ!」

私はびっくりして、その子のそばに駆け付けた。

「大丈夫?」

「う、うん…。」

女の子は、怖くて少し泣いているようだった。

すぐに教室を出て、私は2年生の列を探した。

あ、あれだ!!女の子をその列まで誘導(ゆうどう)した。

 と…。私は自分の列が分からなくなってしまった。それだけなら、まだよかった。

色々な組の列に、巻き込まれて足をひねってしまった。

「イタッ!」

私は、その場にしゃがみ込んでしまった。

私に誰も気が付くことなく、みんな通り過ぎて行く。

どうしよ…。このまま、歩けないほど痛かったら、不審者に見つかっちゃうよね…?

「さくら!!」

「えっ?」

む、村上先生…?

「こんなところで何やってんだ!!危ないだろ!!!」

「ご、ごめんなさい…。」

「足ー…、痛いのか?」

その声は、いつもの厳しい声ではなく、私に優しく問いかけるような声だった。

「あ、だ、大丈夫です。立てます。歩けます。」

そんな私の声を無視して、先生は私をお姫様抱っこした。

「え…。」

そのまま、走って体育館に向かって行った。


 私が避難したころには、もう全校が避難し終わっていた。

みんな、しーんと静まり返っている。

私は足音すら立てないように、6年の列の後ろに座った。

あの、村上先生の優しい声…。いつもと違って、なんか…その…、かっこ…よかったな…。

私は自分でも、顔が赤くなっていることが分かった。

 そんな私を、ななめ前の女子が見ていることには、気が付かなかった。


 次の日…。

私は、クラスの女子に

「さくらちゃん!隣のクラスの子が呼んでるよ!」

「え?」

隣のクラスに、そんな仲のいい子いたっけ…?

不思議に思いながらも、私はろうかに出た。

「ねえ!」

「え?佐倉(さくら)かおり…。」

「ホントさ、調子にのんないでくんない?」

「え…、何のこと…?」

私は、戸惑うばかりだった。

「昨日、村上先生にちょっと優しくされただけで、浮かれてたよね?」

「いや…浮かれては…、」

「ふつーさ、村上先生が、あんたのこと嫌いって気付かない?」

「え…?」

「村上先生は、あんたのこと、世話のやける人って思ってんだよ!!めんどくさいやつって思ってんの!!」

「そんな…!」

私は涙が出そうなくらい、悲しかった。

確かに私は、先生に助けてもらってばっかりだ…。

「あと、村上先生は私のモノだから!!!」

それだけ言うと、かおりは行ってしまった。

ついに、我慢していた涙がこぼれた。

もう、やだ…。先生なんて…嫌い…!

 なのに、あの先生の優しく温かい声が、どうしても忘れられなかった。


 プルルッ プルルッ

あれ?ママ、出ないな…。

放課後、私は学校の公衆電話でママに電話をした。

まだ、ひねってしまった足が痛いから、昨日に引き続き車で迎えに来てもらおうと思ったのに…。

「ん?どうしたの?」

あ…、村上先生…。ずっと、会いたかった…。いっぱい、話したかった…。

なのに、「村上先生は私のモノだから!!!」…。かおりの言葉が頭をよぎる。

「な、何でもないです!さ、さようなら。」

私は、先生と距離をおくことにした。

「待ってよ!」

「え…。」

先生が、私の腕を掴んで引き留めた。

「何か、困ってることがあるんだろ。公衆電話の前で立ちつくしてたじゃん!」

「あ、その…。足が痛いので、車で迎えに来てもらいたかったんですけど、ママに電話しても出なくて…。家にいないのかな。」

「そうだったんだ。」

「で、でも歩けるので!!」

「じゃあ、俺が送るよ!って言っても、車で学校に来ていないから、歩きになっちゃうけど…。でも、家に誰もいないのは、危ないしな。」

「大丈夫ですよ!先生、私はもう6年生ですよ?家に誰もいなくたって大丈夫です!」

「いいって!ちょうど、俺も帰るとこだし!」

  それから、私と先生は校門を出た。


 どうしよう…。先生はかおりのモノなのに…。

こんなとこ、誰かに見られたら大変!!

「あの、先生はなんで歩きで学校に来ているんですか?」

いつの間にか、私の口が動いていた。

「家が学校の近くなんだ。」

「そうなんですか…って、せ、先生。ここです、私の家!」

ホント、先生と一緒にいるのってあっという間~!

「え!ここなの!?」

「どうかしたんですか?」

「俺ん家、すぐそこだよ!そこの角を曲がったとこ!」

「えぇ!!」

先生の家がすぐそこなんて…。嬉しい…。

「じゃ、また明日な!!」

はぁ…。先生って、かっこいいな。最初は、こんな先生嫌だ!って思ったけど、今はそんなの全然思わない。

 これが、『好き』って気持ちなんだ。


 次の日、私はまたかおりに、屋上に来てと呼ばれた。

まさか、昨日一緒に帰ったところを見られたのかな?

「ねぇさ、昨日言ったよね!?なんで一緒に帰ってんの!?あり得ない!!」

やっぱり…。でも、私は断ったもん!!なのに、先生がついてくって言うから…。

「そ、それは、あの…。」

「言い訳すんなよ!!」

と、私のことを突き飛ばした。

「え!さくら!?それに、かおり!どうしたの!」

「村上先生…。」

私は、思わず涙を流してしまった。

「かおり!これは一体どういうことだ!!」

先生は、真剣な顔をして言った。

「あ、いや、その…。じゃ、私、次の授業、移動教室だからー!」

かおりは、テキトーにごまかして、行ってしまった。

「さくら、ごめん!俺のせいで、さくらがひどい目にあっちゃって…。」

「だ、大丈夫です…。全然…。」

先生は、すごく申し訳なさそうだった。

「先生…。私、先生のことが好きです…。」

私は泣きながら、自分の気持ちを打ち明けた。

「さくら…。俺も、さくらが好きだよ。」

「…。」

私は、今の状況が分からず、黙っているだけだった。

「世の中のどのさくらよりも、おまえが好きだよ。」

それって…、佐倉かおりのこと…?

「先生…。18歳まで、待ってもらえますか…?」

「うん、もちろん!指切りな!」

そう言って、私の手を取った。

「はい!もう指切りしたからな!?約束、破んなよ!」

「分かってますよ…w先生だって、破らないで下さいよ!w」

「もう…!泣くのか笑うのか、どっちかにしろよ!」

 私は先生と、18歳までの指切りをした。


 こっちゃん11さいです!

この小説は、気に入っていただけましたか?

また、色々な恋愛小説を投稿しますので、読んでいただけると嬉しいです♡

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