ネーミングセンス
「どうも、水屋です!」
「油井です」
「二人合わせて、界面活性です!」
「よろしくお願いします」
「いきなりやけど、グレープフルーツっておかしないか?」
「藪からスティックに始めるんやな。別に何もおかしないやろ。どこが気に食わんねん?」
「だって、どう見てもブドウ要素ゼロやん!」
「それは、木に生ってるトコを見たことないからや。あんな。クレープフルーツっちゅうのは、ブドウみたいに鈴なりに実るから、グレープフルーツっちゅうねん」
「それやったら、ブドウと同じように房のままスーパーに並べんかい!」
「無茶苦茶なこと言うな! 誰が五個も十個もいっぺんに買うねん」
「でも、ネーミングセンスって大事やろ? 言うとくけど、グレープフルーツだけとちゃうからな!」
「ほんなら、他に何が気に食わんもんがあんねん。言うてみ?」
「がんもどきっておかしないか? 材料は大豆やないか!」
「それは、むか~しのお坊さんの知恵やがな。仏門では生臭いもんが食われへんから、代わりに畑の肉である大豆を鳥の雁に擬えて、雁擬と命名したんや」
「ほんなら、オバケハネカクシダマシは? 坊さんは虫食わへんやろ?」
「何でもお坊さんのせいにするな。昆虫は数が多いよって、いちいちオリジナリティを発揮してられへんから、しゃーないねん」
「虫だけとちゃう。空を見上げればアホウドリ、海に潜ればバカガイ、街中にはボケの花。色んなもんに失礼な名前を付けすぎや!」
「そうは言うても、一度定着してしもた分は、どないしようもないんとちゃう? そう、カリカリしなや」
「何や知らん。さっきから他人事みたいに言うてるけど、もし、ニンゲンがウスノロニセチンパンジーゴトシって名前やったら、腹立たへんか?」
「んまぁ、けったいな名前やな」
「せやろ? やっと納得したか!」
「そんなことより、先に考え直すことがあると思うわ」
「えっ、何? 不名誉な生物名より優先すべきことなんか、他にあるか?」
「前々から思うてたんやけど、コンビ名を考え直すべきやと思うねん。水屋と油井で界面活性って、安直すぎへんか?」
「いやいや。いっぺん定着したもんは、どうしようもないやろ~」
「お前が言うな! もうええわ」