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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役のキャラを固める為に書いた話

作者: 白夜の桜

__________________


「ご報告に参りました」


執務をしていた私の前に、黒諜が報告に現れた。


「うむ」


「はっ!では、ご報告いたします。サーハ王国にて、悪女と名高いヒサーピル王女の刑が。処刑に決定いたしました」


私の短い返事にも、すぐに理解をしてくれる部下達は優秀だ。


「ヒサーピル、か。彼女は確か………」


「男との豪遊。平民差別。罪を擦り付ける等、様々な悪行をやっておりました」


「そうだったな。しかし、奴を助けるべきか………」


悩ましいな。

奴を使えば、色々捗るが。

奴は、己の思い通りに行かなければ裏切る可能性がある。

ふぅー、悩むまでもなかったか。


「助ける必要はない」


「はっ!了解しました」


「ヒサーピルは引き続き、死刑が執行されるまで監視しろ。それが終わり次第、サーナムの調査に移れ」


「はっ!その任務、必ずや達成して見せます」


「うむ。下がってよし」


私が許可すると、黒諜は消えていった。

これで、新たなる芽は潰えた。

私の目的に、また一歩、近づいた。

しかし、


「終わりが見えない。それも仕方が無いか……」


私以外、誰も居ない執務室で独りごちる。


「深く思考しても無駄か」


それを考えるよりも、大事な事がある。


バサッ


「ふむ。大事な妹を殺された男か……………」


この男の経歴は、


「ふむ。義賊、か」


普通なら、難しい相手だが。

今回は運が良いな。


「黒諜」


「はっ!何の御用でしょうか」


「この男を連れて来い」


「承知致しました」


さて、次は、


「ふむ」


弱い、次。


「ふっ」


こんな呆れた奴も居るんだな。

まぁ、要らんがな。

だが、一時の興にはなったか。

次は、


「勇者?」


何で存在してるんだ?

そんな存在は、とうの昔に消え去った筈だがな。

いや、新たに神が送り込んだのか?…………まぁ、良いだろう。

存在が大きくなる前に消すだけだ。


キィーーーー!


「ッ!?」


毎回思うが、頭が痛いな。

しかし、それを作ったのは私なのだから、何も言えない。

だが、そのお陰で油断が消えた。


「ふぅー、勇者を徹底的に排除する」

__________________


「なぁ、王子様。そろそろやろうぜ?」


「しかし、そんな事をしてしまっては………」


おいおい、あんな絶好の機会を逃すのかよ?

俺はそう思ったが口には出さないようにしながら、


「大丈夫だって。誰にもバレはしないから、な?」


俺は王子様の肩を叩きながら囁く。


「そうか?」


「あぁ、俺が見た奴を排除すっから安心しろ」


だから、さぁ!やれよ!


「うん。それなら、大丈夫、か………」


王子様、勘違いしてやがるな。

排除は排除でも、殺す方の排除だって事に。

しかし、それも良いか。

目的に沿うことになるんだからな。


「あぁ、だから、この機会を逃すんじゃねぇぞ?」


「そうだよな………」


おうおう、どんどん瞳が濁って行くぞ。

ふっ、良いじゃねぇか!


「あぁ、お前は王子様だ。何だってして良いんだ」


もっと!堕ちろ!そして俺を恨め!


「そうだ、俺は王子だ……何だってして良いんだ!」


ああ!遂に、完成した!

後は、背中を押すだけでいい。


「そうだ。だから思う存分、やれ!」


「シーハ、今行くよ」


王子様は、シーハとやらが居る部屋に入って行く。

その光景はとっても良いぞ!

シーハ?は、絶望する事だろう!

王子は恨むだろう!

そう考えただけで………


「ふはっ………」


思わず笑いそうになる口を押さえて堪えなければな。

それよりも、王子が帰って来るまで排除しほうだいだな。

誰か来ないだろうか………


コツ コツ コツ コツ


誰か来たな。

しかし、学生って雰囲気じゃねぇ。

王子を暗殺にでも来たのか?


コツ コツ コツ コツ


うん?見たことがある顔だな?


「お久しぶりですね」


「おぅ、声を聞いて思い出した。ラークか」


何年も顔を見てねぇと、忘れちっまう。

声でしか、思い出せねぇといけない程、老いたつもりはねぇんだがな。


「えぇ、最初の犠牲者のラークです」


「そうだったか?」


ラークが最初だったか?

うーん、古い記憶は思い出せねぇ。


「それも仕方が無いでしょう。76年前なんですから」


コイツ、俺の心を読みやがった。

前に会った時は、そんな力あったか?


「ふぅー、貴方の表情が分かりやすいのですよ」


まただ。

しかし、そんなに俺の表情は読みやすかったか?

気になるが、今は、


「それで、ラークは何で居るんだ?」


ラークの目的が先だ。

だが、おおよその当たりは付いているがな。


「バレバレでしょうが。私の目的は、ただ一つ。貴方の殺害ですよ」


まっ、そうだろうな。

なんせ、俺は、


「ラークの大事な恋人の人生を無茶苦茶にしたんだからなぁ!」


ラークを見て、思い出すぜ。

あれは良かった。

悪に染まる瞬間を、始めて見れたんだからな。


「ええ!貴方のせいで!彼女は狂ってしまった!」


「それで、俺を殺すってか?」


さぁさぁさぁ!もっと俺を恨め!

それが俺の糧になる!


「はい。元からそのつもりでした」


カチャ


ほぉう、中々の業もんじゃねぇか。

しかし、


「俺とそれで、殺り合おって言うのかよ?」


その武器では、俺と対等に戦えねぇ。

もっと、ちゃんと戦いてぇ。

そうじゃなきゃ、殺されるにしろ、殺すにしろ、満足いかねぇからな。


「貴方はやはり、狂っている」


何を言ってるんだコイツは?

俺が狂っているだぁ?


「狂ってるなんて、相応しくねぇ言葉を言うじゃないぞ」


あんな言葉で俺を現されて良いもんじゃねぇ。


「何を………」


コイツに話の邪魔はさせねぇ。


「だからこそ、今の世界がある」


バッ!


「見ろよ!今の世界を!苦しみ、恨み、怒り、嫉妬し、恐怖し、絶望する者達の表情を!」


素晴らしいじゃないか!

ここまで、揃ったんだ。

後は…………


「狂っている。貴方達は、化け物だ」


貴方達だぁ?……あぁ、そうか。


「ラーク。お前は勘違いしてるぞ」


「何を言ってるんですか!それが貴方達の目的でしょう!」


おいおい、コイツ、本気で言ってやがるよ。


「フフ、フハーハハハハハハーー!!」


笑わずには要られない!

こんな、面白い冗談を言えるなんてな。


「ッ!?」


おっと、笑いすぎた。


「ラークよぅ。俺はそうだが、他の奴はそうだとは一言も言って無いぞ?」


「ッ!?」


混乱してやがるな。

それも、仕方が無いっちゃ仕方無いからな。


「他の奴は、それぞれの目的の為に動いてるだけだ。その結果が、世界に現れただけでな」


「じゃあ、彼等は何の目的で動いているんですか!」


感情的になりやがって。

そんなに気になる事かぁ?

コイツの考えが分からねぇなぁ。

だが、まぁ、言えるのは、


「それは知らねぇ。偶々、やることが一致しただけだ」


それ以外、言え無いからな。


「そうですか。それ以上は教えてくれませんか」


「うん?何を覚悟した顔をしてんだ?」


「貴方を倒して、彼等も倒します」


「ふはぁ!」


おいおい、コイツ、無茶な事をやろうとしてやがるぞ。

俺にすら、抗えなかった奴が、成功するなんてありえねぇ。


「むう。信じていないようですね」


「当たり前だ。ラークのチンケナ力では、俺にすら勝てない」


奴等の力を甘くみすぎだ。

そんな、チンケナ力で勝てたら、俺がとっくにしてるぞ。


「チンケナ力ですか………貴方こそ、私をナメないでください」


ほぉう、本気で俺を倒せると思ってる瞳だ。

ふん、なら試してやろうじゃねぇかぁ。


「んじゃあ、殺ろうぜぇ」


「えぇ、勿論」

__________________



その日も、いつものように畑仕事に勤しんでいた。


「よっ、こらせー。よっ、こらせー。ふぅー、気持ちいい汗だ」


畑仕事を半分程、終わらせたワシは、地面に座り込み休憩していた。

そんなワシの元に、


「おーい!元気してるかー!」


声を上げながら、青年が向かって来た。


「はぁー、またお前さんか」


ワシは呆れながらも、青年が来る事を楽しみにしていた。

一人寂しく、畑仕事をするのも良いが。

やはり、一人なのは寂しからな。


「爺さん、そんな溜息ばかり吐いていたら、運が逃げるぞ」


ワシの前に着いた青年は、そう言ってくるが。

ワシにしてみれば、運なぞ、要らん。

あんなのに頼る位なら、自らの力で達成したいもんじゃ。


「はぁー、毎回言っとるが。運なぞに頼っていては、成長出来ぬぞ」


ワシは、忠告の意味を込めて言うたが、


「毎回言われて、思ったんだが。爺さん、運に対して嫌な事でも合ったのか?」


青年には届いておらん、か。

さらに、その質問か………

ワシは、遠くを見たくなる気持ちを押さえ、


「あぁ、過去に、な……」


「そ、そうか。嫌な事を聞いてすまん!」


過去を思い出しながら、言った言葉は、青年に届いたのだろう。

気まずそうにしながらも、謝って来たのだから。


「気にせんでもいい。しかし、運を信用するな」


あれ程、運を嫌になったことは無い。

そんな経験を、ワシの話し相手でもある青年に味わって欲しくない。


「わ、分かった」


青年は、怯えながらも頷いてくれた。

だが、心配だ。

人生、運に頼らざるを得ない場面が来る。

その時に、ワシの言った事を思いだせるか………不安じゃ。


「おーい。おーい。爺さん!」


おっと、深く考え過ぎてしまったわい。

運に頼るかは、青年が決めること。

ワシは、見守るだけじゃ。


「すまん、すまん。考え事をしていてな」


「はぁー、爺さんはたまに、そう言うことがあるよな」


青年は呆れながらも、ワシとの喋り合いは止める気は無いよじゃな。

だからこそ、ワシは気に入った訳だが。


「それで、どんな用事じゃ?」


「用事が無いと来ちゃ駄目なのかよ……」


ワシの言葉に、青年がいじけてしまったわい。

ワシは微笑ましく感じている。

あの頃のワシからは、考えられない程…………


「すまんな。ワシの所に来るのは、用事がある者だけじゃから。遂、お前さんにも聞いてしまった」


「ふん!爺さん。俺の名前はお前じゃねぇ!ビーサだと何度も言ってるだろう!」


ビーサが怒ってしまったぞ。

怖い怖い。


「すまんな、ビーサ。最近は、物覚えが悪くてな」


ワシは自分の頭を撫でて、アピールするが、


「嘘だ。物覚えが悪かったら、俺の事も忘れているからな」


ほぉう、中々、鋭い。

これなら、将来は安心じゃな。

しかし、ワシの演技を甘くみるではないぞ。


「それはな。お前さんが、忘れさせてくれないからじゃ」


ワシは、自身の体を抱き締めて言うた。


「うぇ、気持ち悪いぞ、爺さん」


顔に、出すほどか?

ワシの体勢は…………うむ、気持ち悪いな。


「ごほん。今日は、ワシと話しに来ただけなのか?」


先程の事を無かった事にする為に、ワシは本題に入る。

青年は、雰囲気が変わった事を感じ取ったのか。


「それもあるが。ナーラを見て無いか?」


ふむ、ナーラ?あぁ、そうか。

ワシは笑いたくなるのを堪えながら、


「お前さん、もしかしてフラれたのか?」


「なっ!違う!」


必死に、否定しよって。

それが本当だと、言っておるではないか。


「では何故、探しておるんじゃ?」


居場所は知っておるが、探している理由を話してもらわなければな。


「そ、それは………」


「言えぬ理由か?」


理由を話さねば教えぬぞ?


「ッ!俺が、ナーラの大切な髪飾りを壊してしまったんだ!」


「ふむ、そうか」


しっかりと、ワシの想いが通じたらしいな。

しかし、先程見た時に、泣いていた理由は髪飾りが壊れたからか。

うーむ、ナーラが向かったのは、助けに行くには困難な場所。

ここは、ワシが一肌脱ぐか。


「ビーサ。お前さんは一生、ナーラを好きで要られるか?」


その覚悟が無ければ、助けに行っても死で終わる。


「ッ!勿論!」


ほぉう、ワシの威圧を受けながら、ハッキリと言い切ったか。

瞳からは、覚悟した者特有の強さが感じられる。

うむ。これなら、大丈夫そうじゃな。

確認出来たことじゃし、威圧から解放しようか。


「うむ。その覚悟、確かに確認した」


「はぁ、はぁ、はぁ………爺さ、ん。何……もんだ……よ」


ふむ。ワシが何者かとな?

決まっとるじゃろ、


「ただの、老いぼれた老人じゃよ」

__________________

キャラのネタバレに繋がりそうな描写は切り取ったので、おかしい所があるかも知れません。

そこは、ご容赦頂ければ。

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