Fake2 雨はいつか止む
忘れてしまった。
痛みというものを。
悲しみというものを。
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目の前に怪物がいるにも関わらず、やけに心は落ち着いていた。
数秒前に頸椎を無惨にも折られ、完全に死んだはずだった。
だが、生きてる。生きている。
安堵感に浸ったのも束の間、目の前には俺を殺した怪物が居る。
「おぉ〜と…こりゃ遅刻かなぁ」
覇気がなく、だらしない声が後ろからする。
後ろを振り向くと、そこには一人の青年がいた。
「あれぇ…君逃げ遅れた感じぃ?」
頭を掻きながら気怠げそうに話しかけてくる。
「此処は危ない!俺は良いから良いから早く逃げろ!」
ついさっき、殺された。だからこそ分かるこいつは俺らがどうこうできるヤツでは無い。
鬼気迫る状況の中、青年は嗤った
「大丈夫、君よりは強いよ。」
そんなふざけた冗談を言われ、混乱する。
こいつは絶対頭のネジが飛んでいる。
少なからずこの数回の会話で分かった。
「えぇっと、さっき君が言った言葉を借りるなら…
此処は危ない!俺は良いから良いから早く逃げろ!」
さっき自分が言った事をそのまま返された。
馬鹿にしている成分を100足した感じで。
「お前…どんだけ人を下に見てるんだよ。」
怒りと悔しさの感情が沸騰した水のように沸いたスッと消えた。
その代わり呆れと感情が生まれた。
だが、コイツの言っている通り俺にはどうにもできない。
「僕が人間だとしたら君は…蟻くらいかな?ッと悪ふざけはこれくらいに。僕はこいつと戦うのに集中したいから早くいなくなって、ほら」
目の色が急に変わった気がした。
明らかに先ほどとは違うオーラが出ている。
「わ、分かった…」
何もできない俺は逃げることしかできない。
力があっても、使い方が分からないければただのガラクタ。その時俺は、嫌な自分がますます嫌いになった。
全力で走った。二度と殺されるのはごめんだ。
そう思う反面、あの青年が気になる。
気になってしょうがない。
あんなに人のウラオモテがはっきりと分かるのは初めてだった、普通に人としてどういうヤツか興味が湧いた。
「初対面を馬鹿にしてるところはマジで直した方がいいぞ、あの野郎。」
と独り言を言ってる間に割と遠くまで逃げれた。
ブロック塀に隠れながら、怪物が見える方向を見つめる。
音をできるだけ出さずに、息を殺しながら。
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2時間前…
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特務対策室支部にて
「執行者の特徴と一致する電磁波が検知されました。
数時間後にはコンパイルする可能性があります。」
静寂だった部屋が一気に騒がしくなる。
ここ数年で勢いが増している「執行者」と言われる怪物に対応に追われていた。
神出鬼没とはまさにこの事。最初はなす術も無く、無惨に虐殺を行われ、その事実を政府によって隠されてきた。
最近の研究にて出現時に特徴的な電磁波が生じることが分かり、これを気に対策実が作られた。
「場所はどこだ?」
「こちらになります」
一気に空気が張り詰める。一刻も争う状況。
「道玄、完全に起動する前に倒せるか?」
「まぁいけるじゃあない、多分恒常種でしょ?」
「電磁波特徴は一致するのですが…断定は出来ません。」
部屋の空気はコロコロ変わる。
先程は針が身体中に突き刺さるようだったのに、次は一気に重くなった。気を抜くと体に力が入らなくなる。
未知の存在対して命をを賭けて戦うのだ。
いつもその大きな十字架を背負って向き合うのは相当な覚悟がいる。
だが彼は少し違った。
「あっそ、まぁいつもと違くてもそこは臨機応変に対応しますとも」
力の入っていない声。
だが、その言葉には絶対の信頼がある。
「いつもすまない、全隊員道玄のサポートに全力を出せ!」
「さぁーてと、お仕事がんばりますかぁ」
その青年は、道玄 魁。
全然ストーリーに納得がいかず、書いては消してを繰り返しまくり、ましてや本業が忙しくなるしで期間が空いてしまいました。
のんびり投稿は続けています。
よろしくお願いします。