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Fakers!  作者: 木島 理玖
第一章 空っぽで満たされた青年
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Fake1 目の前の悪夢

覚悟は嘘をつかない。

覚悟を恐れてはいけない。


「嘘は覚悟であり、代償である。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


… なぜあんな奴がここにいる、ここは異世界でもなんでも無いんだぞ。


 彼はこの状況を理解しようとしていた。

 だが、この状況は誰もが、理解する事は出来ない。

出来るはずがないのだ。


 数十メートル先には人間の約3倍の体高、牛の様な顔、そして筋肉質な脚に、全てを踏み潰せる様な凶悪な蹄。

 それを見て彼は冷静でいられるほど、肝の据わった人間ではなかった。


「くそっ...どうすりゃいいんだ、あんなの架空の生き物じゃ無いのか...」


 そう、この世界には存在する筈のないものが目の前にいる、こちらに向かってくるのも時間の問題だった


 青年は大きくため息をつく。

 これといった特徴のない、どこにでもいるような普通の青年。身長は平均より少し大きく、体格も高校生なりに、しっかりはしている。


 そんなどこにでもいるような青年が今、いるはずの無い怪物に立ち向かおうとしているのである。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


荒谷広夢は平成20年1月12日に生まれた。

年齢は17歳。


 彼の母親は大学病院で内科医を、父親は会社の社長を、妹はピアノ、バレエなどの大会で多数入賞などをしてる。

 いわゆる、エリート一家の一人として生まれた。


 特に家族に変わった所はなく、仲もとても良い。

 そんな裕福な環境で育った彼はなぜ、こんなにも嘘をつく様になってしまったのか。


 答えは、家族だ。

 この家族は自分に対して、あまりにも優しすぎる。その優しさこそが、プレッシャーへと変わり、彼の重りとなってしまった。


 日々、少しずつ小さな嘘をつき続け、自分を虚飾していく。そんな日がずっと続いてゆき______、


「俺は嘘しかつけなかった。それで自分を守る事しかできなかった。」


 自分を卑下し、後悔を口にする。だが、その彼が今、この瞬間少し変わろうとしていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 改めて、今の状況を把握する事に集中する。広夢は諦めが悪く、今自分が置かれているこの現状を理解し、打開しようとしていた。


…ここは、住宅地、道は十字路が複数ある。これを上手く利用すれば時間は稼げる。


「よし、行くか。来い!こっちだぞ!」


 大きな息を吸い、自分が出せる最大限の声で怪物に向かい、言い放つ。

 その声に気づいた黒く、大きな怪物はこちらへ向かって、突進をしてきた。


 ふと、笑みを浮かべる。

 彼の何かがぶっ飛んだ瞬間だった。余裕はすでにない。自分がついた、嘘を全うするために、体が自然と動いていた。


「ーーーーヴォォ」


 耳が千切れそうな咆哮が轟き、あたりを無残に破壊しながら彼を追いかける。


 とっさに後ろを振り返ると、コンクリート壁はボロボロに砕け、道には地割れができている。

 そして、人を喰らったのだろう。顔はべったりと赤い血に染められ、大きな口に収まらない程の二本の大きな牙が更に、恐怖を倍増させていた。


 力一杯走る。絶対にあいつに殺されてはいけない。本能がそう叫ぶ。


 その時だった。怪物はふと足を止め、壁を殴り、その破片を広夢の方へもぶん投げたのである。


 壁の破片は、彼の上を蝶のよいに舞い、運悪く目の前に落ちた。

 

…笑うしかない。こんなのもう無理だ。


 退路は絶たれた。背後には凶悪な怪物。広夢の努力虚しく、その一瞬で砕け散った。


「あぁ...ハハハハ」


「ーーーー」


「どうした?、俺はここだぞ?」


 広夢はこれで最後であろう悪あがきをする。目の前にいる怪物を今までの中で一番蔑んだ。

 


 その瞬間、怪物は彼の首元へ手をゆっくりと延ばした。

広夢は死を悟った、だが、それは一瞬。彼は怪物へと向けて怒りや憎しみを言葉に乗せて、言い放った。


「ぉれはぁ_______ぢぃななぃ__」


 広夢はこの瞬間、また嘘をついた。絶対に死ぬ。そう分かっていても、彼は嘘ついたのだ。


 次の瞬間、その叫びに応える様に広夢の首を、反対の手で弾き、首だけが無くなった。息を呑む暇もなく即死した。

 怪物は、体を半分にへし折り、口へと運び、豪快に喰らったのである。

骨が砕かれる音が響き、噛むたびに血が口腔から溢れ出る。


 広夢は死んだ、怪物に殺された。だが、彼の意識がまだあった。なぜか、自分でも分からない。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


 意識がはっきりある。自分は今死んだ筈だ。なのに、まるで生きている様だった。


「酷い、死様だったな。笑えたぜぇ、ハハハ」


「誰だ?」


 聞き覚えのない声が自分に対して、話しかける。


「お前だよ。俺はお前のもう一つだ。」


「どういう事だ?」


 広夢の一瞬何を言われたか、分からくなり、きょとんとした顔をする。


「なんなんだ、これはどういう状況だ?」


「お前の意識の中だよ、お前は死んだ、だが死んでいない。この意味が分かるか?」


ーーー全くわからない、というか言ってることが支離滅裂だ、馬鹿だ、こいつ馬鹿だ。


「あぁそうか馬鹿だから分からんか...お前は祝福(ギフト)を受け取ったんだよ。理解しろわよって全く。」


「おい、ギフトってなんだ?」


 広夢は自称もう一人の自分に説明を求める。当たり前だ。訳の分からん事が今起きている。


「まぁ、お前は、「嘘を本物にできる」それが今死んだ事が代償となり、そのギフトを得た。そう説明すりゃ、分かってくれるか?」


 嘘をついている様には聞こえない。どうやりゃ大真面目らしい。


「まだ生きてるっ事になるのか?」


「あぁお前は生きている、残念ながら」


 小馬鹿にした様な、口ぶりで広夢へと言い放つ。


「ギフトを貰ったなら、これをどう使えば良いか、分かるよな?」


「あぁ、ありがとう。俺は負けず嫌いらしい。」



 意識ゆっくりと遠くなっていく。先ほどいた場所とは、違うところへ運ばれていく様だった。


 体が燃える様に熱い、体が引き裂かれる様に痛い。

 弾かれ、折られ、潰された。広夢の体と意識が同期する。目を覚ますと、自分が殺された場所に立っていた。体は首から下がある、喉も潰れていない、痛い所もない。


 青年の「死」という事象は無くなっていた。


 そしてあの怪物の後ろ姿がそこにはあった。





荒谷広夢は対峙する、あの禍々しく、凶悪な怪物と。

主人公の名前の読み方ですが、アラヤヒロムと読みます。


 遂に、怪物と戦うことを決心した様です。広夢はこの能力を使用してどのように怪物を倒すのでしょうか。楽しみですね〜

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