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Fakers!  作者: 木島 理玖
第一章 空っぽで満たされた青年
1/3

プロローグ Fake0 華麗なる嘘

誰が言ったわけでもない。

誰が伝えたわけでもない。


「嘘は悪である」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「また、変な夢を見た。」


ここ最近、いつも同じ夢を見る。


逃げるもの、それを追うもの、捕まったものは追うものに喰われ、血溜まりができる。

その赤黒い血溜まりは無数にあり、果てまで視える。

何も出来るわけではなく、それをただ見続けるだけしかできない。


「まぁ、夢だし。最悪の目覚めには変わりないけど…」


ため息をつき、ベットから起き上がり背伸びをする。

カーテンと窓を開け、外の空気を吸う。


「相変わらず、不味い空気だな…」


こっちに来て数ヶ月、都心の学校へ行くため上京してきたが、さほど、新鮮な日々とまではいかなかった。

いつもと同じ光景、いつもと同じ空気。

日常というものに麻痺している。

そんな気がしていた。



身支度をするため、洗面所に行き、寝癖を治す。


ーーーお前なら大丈夫だな。


煩い…


ーーー無理せずにね。


煩い…


ーーーがんばってね!私応援してる!


煩いっ!



息が詰まる。瞬間的に体に力が入らないくなる。


「くそっ...なんでよりによって」


彼への過度な期待は思った以上に身体を蝕んでいた。


寝癖を直し、顔を洗い、制服に着替えた彼は冷蔵庫からゼリーを取り出し、家を出て行った。



学校への道のりはおおよそ20分。

週の初めは、いつでも最低な気分になる。

足取りが重くなるが、振り切って学校へ向かう。



「おっはよう!」


甲高い耳を刺すような声。


「おう、おはよう」


できるだけ普通の挨拶をする。


「いつもと変わらず、テンション低いねぇ〜」


「朝だからしょうがないだろ」


できるだけ、普通の会話をする。

彼女は紀村寧々、入学して初めて喋った相手だ。

社交性が良く、常に周りに友達がいる。

通学路も同じ為、こうやっていつも他愛もない話をしながら学校へ向かう。


「あっ、そうだ!夏休みどっか行かない?」


「いいや、パス。お前には友達たくさんいるだろ。そいつら誘ってどっか行ってこい。変な噂されたくないだろ。」


「え〜いいじゃん別にさ〜」


そう、彼女は天然のあれだ。

えーと、名前が出てこない。思わせぶりなタイプの子だ。

悪くは無いが童貞だったら、すぐ勘違いする奴。


「あー女の子ってほんと怖い。」

ボソッと口に出してしまう。


「ん?なんか言った?」


「いや、なんでもないです。はい。」

と軽いピンチを抜けた。

こんないつもの日常が壊れるのは一瞬である。



あれはすぐ周りの異変に気づいた。

辺りは暗くなっていき、

空は赤紫の色に染められ、空気が重い。

そして押し潰されそうな圧迫感。

空の境界線がはっきり見え、

今いるここは、明らかにここはヤバイ。


「紀村、とりあえず、あっちまで走るぞ!、急げ」

本能的にいう。これは間違いなくまずい展開だ。

息をあげ、全身に力が入り、ただがむしゃらに走る。


境界まであと200m、最悪な予想が当たる。


目の前には黒く、大きな生物。

そこには2、3つの血溜まり。


ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。


思考がフル回転で回る。

どうすれば、この状況を変えることができるか?

彼は必死に考えた。


「紀村、俺のいうことを守れ。」

覚悟を決めた。

彼女にこれ以上、不安や恐怖持たせないために、

これから俺は嘘をつく。



「俺は、大丈夫だ。あいつの対処をしっている。お前は先に行け。ここをまっすぐ、そしてその次を右に行って突っ走れ、時間は稼ぐから。気にすんな」


苦しい嘘だ、でもこれしか俺はできない。

これが精一杯の嘘だ。


「でも!、荒谷くんは!」

弱気で今にも泣きそうな声で俺を心配する。

お前には俺より生きる価値がある。

こんな空っぽで何もない俺より、よっぽど。


「早く、行け。大丈夫心配すんな。」

最大限の笑顔で言い放ち背中を押す。












荒谷広夢は華麗なる嘘をついた。


これから2週間に間隔で一話ずつ開けていきたいと思います。荒谷広夢はいい奴です。

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