襲われましたわ
びっくりしましたわ。いきなり教室に連れ込まれたと思いましたら、手を括られ、猿轡され、肩に担がれ、窓から林へ。
手際が良すぎて何回も練習したのが分かりましたわ。
林にある管理小屋に運ばれてしまいましたわ。
分かっていましたが、そこにいたのはオデットでしたわ。ちゃんと会うのはこれが初めてのはずなのに睨まれていますわ。運んで来た者はとっとと小屋から出て行ってしまいましたわ。オデットと二人っきりなんて嫌なのですわ。
「あんた、何をしたの?」
何をって? 二人の愛を守るべき動いただけですわ。
「答えなさいよ」
オデットは頭が良いのではなかったかしら。猿轡をされて話せるわけはありませんわ。
ああ、やっと手の縄が外れましたわ。慌ててしたみたいですぐに緩みましたわ。
猿轡も外しますわ。お答えしないと悪いですから。
「なんで手が自由になっているのよ」
すごく口が悪いですわね。ゲームのオデットはちゃんと丁寧語は使えてましたわ。
「初めまして、オディールと申します」
まずは自己紹介ですわ。
「わたくしの知っている白鳥の姫君とは大間違いですわね」
言ってしまいましたわ。白鳥の湖のオデット姫ともゲームのオデットとも月とスッポン、正反対ですもの。あの二人はこんなことをしませんわ。するとしたら、黒鳥、オディールのほうなのに残念すぎて何も言えませんわ。
「やっぱりあんたも転生者ね!」
だから、どうだというのですの?
「私がヒロインなのよ! シナリオ通りに動きなさいよ」
私は首を傾げた。
「どうして? ですの。前世の記憶は持っていてもわたくしはわたくしですわ。わたくしの生きたいように生きますわ」
そうあの二人の愛のためにわたくしは、頑張るのですわ。だから、悪役令嬢として断罪される可能性があると分かっていても王子の婚約者になったのですから。
「じゃあ、なんでゲームの知識を使うのよ!」
流行り病のことですか? あの二人の愛のためなら、何でも使い利用しますわ。
「あら、持っているものを使って何が悪いのですの?」
それで沢山の人が助かりましたのよ。二人の愛は世界も救うのですわ。
顔を真っ赤にされてどうされたのかしら? 知恵熱でも出されたのかしら。
こちらに来ましたわ。どういたしましょう?
あっという間の早技でしたわ。叩かれた頬が痛いですわ。
「あんたも終わりよ」
悪役令嬢みたいに笑って出て行かれましたわ。この場合、早く逃げたほうがいいのですわ。扉にはやはり鍵がかかってますわ。窓が有りますが、ドレスで上るのは大変そうですわ。
火攻めではなさそうなので武器になるものを探しましょう。王子の部下はとても優秀ですから、きっとすぐに助けに来てくれますわ。
鍵の音がしますわ。早すぎますわ。わたくしをここに連れてきた男を呼んできたのですね。武器が見つかりませんわ。
男たちが入ってきてしまいましたわ。出口は塞がれてしまいましたわ。髪を引っ張らないでくださいまし。棒がありましたから、殴ってやりましたわ。すぐに取り上げられてしまいましたわ。腕を捕まれて、もうダメだと思いましたわ。暴れたらすぐに離しましたわ。
いたぶってから、ですか? では、もう少し時間はありますわね。王子が来るまで頑張りますわ。王子はきっと来て下さいますわ。
また扉が開きましたわ。
やっぱり来て下さいましたわ。あら、王子の顔をみたら体が震えてきましたわ。
「大丈夫?」
優しく労る声が嬉しいですわ。
ロットバルト、怒らないてくださいね。王子の腕の中は安心できるのですわ。
「あ、ありがとうございます」
うまく笑えてますでしょうか? 怖かったですわ。男たちに捕まったら何されるのか分かっていましたから。凄く怖かったですわ。
気がついたらお城でしたわ。男の方が近づいて来ましたわ。怖いですわ。あんなことがあったから、過剰に反応しているだけと分かっていますが、やっぱり怖いですわ。
王子に引っ付いてしまいますわ。王子の側だと怖くありませんわ。
あれ? 何故、こうなりますの? 王子の顔が近いですわ。でも嫌ではないですわ。王子に触られるのは気持ちがいいですわ。とても安心できて幸せですわ。