学園生活が始まった
学園生活が始まった。彼女と約束なしに会えるのが嬉しい。それにロットバルトが側にいなくても話しかけ笑ってくれるようになった。彼女に触れたり笑いかけたりすると、頬を赤くすることが多くなってきた。僕を意識していると思いたい。もう一歩踏み込んだ関係になりたいが、万が一乙女ゲームのシナリオ通りになった時を考えると動けないでいた。
二年間の楽しい時はあっという間に過ぎた。最終学年はわざと彼女を隣のクラスにした。側にいないのは不安だったが、オデットと同じクラスにするのはもっと不安だった。
彼女とエカリーナに確認してシナリオを覚えた。回避出来そうなイベントは回避できるように。だから、始業式の朝も回避できるはずだった。
時間を変えて登校したのにオデットが現れた。シナリオ通りに転んで僕のほうを見ているが、見事に泥塗れになったオデットを誰がどうしろというのだ。誰だって汚れたくない。砂埃くらいならいいが、泥塗れだ。
彼女がハンカチを取り出した。少しでもと優しさだ。それをオデットは、彼女の腕を引っ張り泥の中に引摺りこもうとした。
なんて女だ。助ける義理などないのに。
護衛たちに連れていくように指示を出し、彼女とその場から離れた。アドルフがダメになったハンカチの代わりを贈ると言っているが、それをするのは僕の役目だ。
彼女を席まで送り、自分の教室に行く。離れがたいが我慢だ。扉の所で振り向いて彼女を見ると、彼女が俯いていた。耳が真っ赤だ。僕が耳元で囁いたから? だとしたら嬉しい。
翌日からはうんざりする日が続いた。同じクラスになったオデットが纏わりついてきて鬱陶しい。登下校と昼だけはどうにか彼女と会う時間を作っているが、それもいつまで続くか不安になるしつこさだ。とにかく彼女に危害がいかないようにしなければ。
オデットは用事がない限り、無視しておく。関わって彼女を不安にさせるのは嫌だ。嫉妬はして欲しいけど。
彼女とエカリーナに聞いているシナリオ通りに動こうとしているようだが、不自然さが目立ち不信感丸出しで相手にする気にもならない。同じく攻略対象者のロットバルトたちもそうのようだ。
お昼になるとホッとする。うっとうしいのに解放されるのと彼女に会えるからだ。ほんとに癒しの時間になっている。学園の王族しか入れない場所で三人でお昼を食べる。邪魔なアドルフもたまには呼んでやる。ロットバルトも本当はいらないのだが、いると彼女が喜ぶから仕方がない。
アドルフに話を聞くとオデットは、昼はアドルフに必死に粉をかけているようだ。アドルフも会う度にオデットへの怒りを溜めている。昼の度に彼女の悪口を聞かせられているらしい。ゲームでは、彼女とアドルフの仲は最悪だったらしいから、オデットもそのつもりなのだろう。
オデットの焦りは手に取るように分かるようになってきた。だから、警戒を怠らなかったはずだった。なのにそれは起こってしまった。
彼女が拐われた。護衛も付け、一人にさせないようにしてあったのに。一瞬の隙をつかれたようだ。直ぐ様、捜索させた。僕とロットバルトもリストアップしてあった人気のない場所を虱潰しに調べた。
僕がその男たちに気が付いたのは、使われていない教室に向かっている時だった。学園の林に向かう男たち。学園からは、林で何かする予定はきいていない。
僕は護衛を連れて、林に向かった。林から出てきたオデットを見て確信した。彼女はここにいると。
僕を見つけたオデットが纏わりついてきたが、護衛に拘束させて林の中にある管理小屋に急ぐ。
扉かパタンと閉まったのが見えた。中で何が行われようとしているのかは、考えたくもない。すぐ行けないのがもどかしい。
僕は護衛が止めるのも無視して、管理小屋に飛び込んだ。
彼女は気丈にも男たちを睨み付けて立っていた。暴れたのだろう、朝は綺麗にセットされていた髪がボサボサになっている。
僕を見て、目を見開いた彼女がホッとしたような縋り付くような表情をした。
許さない。彼女にこんな表情をさせるなんて。
男たちは護衛たちに任せて僕は彼女に駆け寄った。彼女を抱き寄せると僕の胸にもたれ掛かり、ホッと息を吐いているのが分かる。
「大丈夫?」
彼女は健気にも顔を上げて、弱々しくても笑みを浮かべてくれた。
「あ、ありがとうございます」
頬の片方に赤みがある。
殴られたのか?
こんな場所に彼女をおいてはおけない。
馬車を手配し、彼女を城に連れ帰ってしまった。