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花嫁選びのお茶会

 僕の名前は、ジークフリード。この国の王子だ。今日は、僕の婚約者を選ぶために城でお茶会が開かれている。僕と釣り合う貴族の令嬢が集められているというわけだ。まあ、婚約者はもう決っているのだけどね。

 件の少女を視界の隅におさめながら、テーブルをゆっくり回る。本当は最初に行くべきなのだけど、最後にさせてもらうよ。乙女ゲームというものと少しでも違うようにしたほうが良いらしいから。

 幼馴染のロットバルトを巻き込んで、テーブルの令嬢たちと軽く言葉を交わす。件の少女はこちらをじっと見ているが、聞いていたのと様子がちょっと違う。

 僕と令嬢たちが話す時は眉を軽く寄せるが、その仕草をロットバルトが令嬢と話す時もする。僕とロットバルトが話すときは、目を輝かせて見ているのだ。

 ロットバルトの姉エカリーナから聞いた話では、彼女は独占欲が強く我が儘の癇癪持ちだったはずだ。僕が違うテーブルで談笑していたら、必ず殴り込んで来るだろうと言っていたのに。

 エカリーナには前世の記憶があり、この世界が前世で遊んだゲームの世界だと言った。学園の最終学年の卒業の日、僕は婚約者である悪役令嬢を断罪し婚約を破棄するのだと。

 嘘だと思ったが、エカリーナの話すことは当たることが多く、まだ見たことがなかったほぼ決まりの婚約者の容姿もぴったり当ててみせた。

 ピンクブロンドに翡翠の瞳、雪のように白い肌に薄紅色の頬。吊目が可愛らしい子猫を連想させる少女。

 視界に入るその顔は醜い嫉妬に染まることなく、僕とロットバルトを見ている。

 ん? 僕とロットバルトを? ロットバルトも攻略対象者らしいがそれは彼女に対してではない。

「ジークフリード王子」

 宰相の息子ベンノがやってきた。父親に捕まっていたのだろう。

 おや、ベンノが僕に近づいたら彼女の眉が寄った。

 何故だ?

 ロットバルトと話してみたら、目をキラキラ輝かせている。

 聞いていたのと違うし、想像していたのとも違う。

 試してみようか?

 僕は彼女のテーブルに近づいた。彼女は飲みかけのカップを皿に戻し、僕が近づくのを待っていた。

 僕は如何にも作り笑いと分かる笑みを浮かべ、彼女の前に立った。

 彼女は僕の笑みを分かっているというかのように余裕を持って、頬笑むと十歳とは思えないカーテシーを見せた。

 ロットバルトをちょっと呼んで、何でも無いことを耳打ちする。するとどうだろう。彼女は蕩けるような笑みを浮かべてこちらを見ている。

 ベンノを呼んで同じことをしてみた。眉間に皺が寄り添うな顔をしている。さっきとはえらい違いだ。

 面白い。

 彼女は、僕とロットバルトが仲良くしていると機嫌が良いようだ。これは使えるかもしれない。

 エカリーナは、学園の最終学年に僕が運命の恋に落ちると言っていた。その相手は地位も後ろ楯もない平民だという。

 はっきりいって夢物語だ。

 地位も後ろ楯もない平民を選べばどうなるか、まだ子供の僕でも分かる。その平民に余程の価値がなければ、僕は要らぬ争いが起きぬように子を作れないようにされ、幽閉されるか廃嫡されるだろう。僕にもその平民にも幸せな未来はまっていないのが分かる。

 目の前の彼女は、僕の寵愛を受ける平民に嫉妬し、悪質な虐めをするらしい。それを僕に断罪され、彼女も彼女の家も没落する。この国で有力貴族である彼女の家が潰れれば、貴族社会のパワーバランスが大きく崩れる恐れがある。それは国を巻き込む恐れもあることだ。阻止しなければならない。

 僕とロットバルトの仲を見せることで彼女をコントロール出来たのなら、全て上手くいくかもしれない。

 僕がロットバルトの方に身を寄せると瞳が輝く彼女を確認した。自然と口角が上がるのを押さえられなかった。 

誤字脱字報告、ありがとうございますm(__)m

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