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新婚生活

 オデット(ヒロイン)が退場してからの学園生活は順風満帆とはいかなかった。

 まず、アドルフが怒り狂った。まあ、彼の怒りは分かるけど、僕は彼女の婚約者だからね。婚期がグッと早くなっただけだから。一応、姉弟として付き合うことは許してあげるよ。彼女に嫌われたくないから。

 アドルフには家族を殺した真犯人を教えてやった。復讐でしばらく彼女に構う暇がないだろう。もちろんその復讐には手を貸すよ。優秀な家臣を殺されたのだから。

 オデット(ヒロイン)から乙女ゲームのことを聞いた貴族がその通りになるように企てたらしい。洪水もそうだった。ゲーム通りになって甘い汁を吸いたいがために企てたことだった。バカな奴等だ。アドルフの失恋の八つ当たりにされてくれ。

 僕の努力が実ったのか、国王と王妃の願いが叶ったのか、彼女は早々に妊娠し学園に通えなくなった。

 とても喜ばしいことなんだけど、彼女が悪阻で苦しんでいるのに僕は学園に通わなければならず、側にいられないのが大変心苦しかった。

 今ではスイカのようなお腹になり、歩くのも大変そうでとても心配だ。それでも卒業式ということで学園に来ている。長い学園長の話を聞いて、早く終わらないかイライラしていた。

 まだ予定日には少し早いが、もし産気づいたらどうするんだ!

 呪うように学園長を睨み付けてしまう。異世界の出産のように手を握って元気づけることは出来ないけれど、扉の外で誕生の瞬間に立ち会いたい。

 初産は時間がかかると聞いている。まだ、産気づいたと報告かないから大丈夫だと思いたい。

 卒業生代表などやりたいヤツにやらせればいい。早く城に戻りたかった。

 髭面のロットバルトが背後でビビっているのが分かる。早く帰りたいから、怒気は隠さないよ。

 乙女ゲームと一緒の(つら)だから、彼女が僕とロットバルトの絡みに頬笑むのだとエカリーナと結論づけた。だから、ロットバルトに髭を生えさせた。どうせ魔王なんだ。髭面の方が貫禄が出るだろう。

 ロットバルトは嫌がったが、僕との絡みを想像されるのと天秤にかけ髭面を取った。知らない者に十くらい年上に見られることに落ち込んでいるが貫禄が出ていいじゃないか。

 彼女もロットバルトの髭が目立つにつれ、僕とあいつの絡みを嫌がり僕一人をやっと見てくれるようになった。ロットバルトには、髭は剃らないに言ってある。ロットバルトの方も諦めたようで、どんな髭が自分に似合うか研究中だ。僕としては、ボサボサのモジャモジャにして、彼女が視界にいれたくない状態になってほしいが。

 やっと長い式が終わった。

 祝辞の声をありがとうの言葉で斬り捨て、馬車に乗り込む。街で花を買い、城に急がせる。

 部屋か花だらけになると文句を言いながらも彼女は嬉しそうに花を受けとる。そして、一番新しい花をよく見えるところに飾る。可愛いことをしてくれるから、余計愛しくなる。

 ああ、オデット(ヒロイン)は、ベンノをゲットできた。いや

違う。ベンノが多額の保釈金を支払いオデット(ヒロイン)手に入れ(げっとし)た。

 ベンノはオデット(ヒロイン)が泣く姿に惹かれたらしい。もっともっと泣かせてみたいと。

 ベンノ攻略のバットエンドは、エカリーナ曰く最悪らしい。執着・束縛が強く、監禁が当たり前だそうだ。そして、少しでもベンノ以外の男と視線が合うとオデット(ヒロイン)を責めたてるらしい。そのくせ、屋敷には男しか雇っていない。一度、オデット(ヒロイン)が、僕の名をベンノの前で言ったそうだ。医者まで呼ぶ大騒ぎになり、オデット(ヒロイン)はもう少しで口がきけなくなるところだったらしい。

 もう少ししたら、ベンノに連絡して会いに行ってみようと思っている。僕が帰った後、オデット(ヒロイン)がどんな目にあうか楽しみだ。

 ベンノの婚約者だったエカリーナはというと、婚約者がいない生活を謳歌している。彼女の元によく遊びに来るから、そのうち新しい婚約者を宛がおうと思っている。

「ただいま」

 テラスで寛ぐ彼女に挨拶をする。

 彼女はギョッとした表情になったが、すぐに嬉しそうに花束を受け取ってくれた。

「お帰りなさい。もう少し遅いと思っていましたわ」

 早く帰りたくて、去年の半分の時間で終わらせたからね。

「あら」

 彼女が眩しそうに目を細めた。

「ん?」

「ゲームのオープニングに出てきたスチルでしたわ。わたくし、そのスチルが一番好きでしたの」

 ふーん、ベンノと違う意味で僕は嫉妬深いんだよ。

「けど、こちらの方が数倍も素敵ですわ」

 彼女はハッとした表情になって俯いてしまった。耳まで真っ赤になっている。

 僕は広がる笑みを止めようがなかった。彼女の隣に座り、彼女を抱き寄せた。胸に熱くなった顔を埋めてくる彼女が可愛い。


 最初に黒鳥に会っていたなら、ジークフリード王子は黒鳥に恋していたかもしれない。

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