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ありきたりな異世界召喚  作者: ふぁんとむ
王国編
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第1話 目覚め

 目が覚めると、そこは見知らぬところだった。一切置物がなく、あるのは大きな両開きの扉1つと上にくっついている電球だけであった。窓がなく、外の様子が伺えないので何とも言えないが、まあ異世界に来たと思って良いだろう。周りを見れば、僕のように意識を失っていたのであろう、見慣れた顔がいくつもある。僕を含めて11人か…。やっぱり、あの勉強会に参加していた者は全員召喚された…いや、『巻き込まれた』と言ってもいいだろう。

 …それにしても、僕が1番早く起きてしまったのだろうか? はあ…。女の子がこんな無防備な姿で寝っころがられると、僕としても、抑えるのが難しいけどなぁ。

 とりあえず、すぐ隣に寝っ転がってるジョージを起こしてみよう、そうしよう。


「おーい…。ジョージー?」(ツンツン)

「う…。うーん…」


…名前を呼んでも起きないとはなぁ。仕方ないから、心を落ち着かせるために、素数でも数えよう。

2,3,5,7,11,13,17,19,23,29,31,37,41,43,47,53,59,...


「あれ…。私、なんでこんなところで寝てたんだろ…」


 おっと、素数を数えているうちに、他にも目を覚ます人が出てきたようだ。

 今の声は…。相原さんかな? 相原さんっていうのは、ポニーテールがよく似合う女の子…って何考えてんだ、僕は。そんなことより今は他の人を起こすために行動をしないと…。


「あ、相原さん、おはよう…ございます?」


 疑問形になってしまったのは、今の時間帯が把握できないからであって、決して声が上ずったとかそういうことではない、決して。

 そういえば、基本、女子には敬語を使う。『基本』ということは勿論一部の例外が存在するわけだが、その区別に他意があるわけではなく、本能的に『この人には敬語』を使うかどうか判断しているのだろう。…と少し難しく偉そうに語ったが、実際のところはハッキリしていないので、あまり深く考えないのがベストだと考えている。

 って、だから今はそんなことはどうでもいいんだってば。


「あ、うん、おはよう…。五十嵐くん先に起きてたんだね…」

「ええ、みんなを起こすために声を出していたのですが、起きたのは相原さんだけだったようですね…」

「ほんとだ…。もう1回声かけてみよう? 佑が女子に声かけるから、五十嵐くんは男子をお願いしてもらっていい?」

「助かります。流石に、女子に触るわけには行かないと思っていたので…。では、起こしましょうか」


 こう言ってしまった以上、もう面倒くさいとか言ってられない。さっき『声を出していた』と言ったが、ギリギリ嘘ではないし、大丈夫だろう。

 …正直、相原さんがいきなり目を覚ましたから、そこに驚きを感じている。特に声をかけたわけでもないのに…。あ、でも、それ言ったら僕だってそうなるのか。目覚めたのは自力だし。

 おっと、あんまり長い間物思いの耽っていると、相原さんに迷惑がかかってしまう。


「ジョージー! 起きろー!」

「うん? …どうしたの、啓? ってあれ!? ここどこ!? さっきまで教室にいたはずなのに…」


 さっきより少しだけ口調を強めて言ってみたが、効果は抜群のようで、ジョージは飛び跳ねるように起きて、どうして今に至るか僕に問いただしてきた…が、


「ごめん、ジョージ。僕にもまったく見当がつかない」


 正直に言っても話がややこしくなりそうだし、優しい(と思っている)嘘を述べる。


「まあそれに関してはあとでハッキリするだろうから、今は置いておくとして…だ、ジョージ。まだ目覚めていない人が何人かいるようだから、その人たちを起こすことを優先しよう」

「『あとで』って……。まあ、啓が言うんだから、何かしら考えがあるんだろうね。OK、起こそう。…と言っても、俺の知り合いって裕也しかいないんだけど…」

「まあ、それは、あの勉強会にジョージを無理矢理誘った僕が悪いということで…」

「そ、そんな! 啓の所為にするつもりは全くないよ! ただ俺のコミュニケーション能力が無さすぎるってだけで…」


 そんなことはないだろう。本人はこんなことを言ってたりするが、ジョージのコミュニケーション能力は凄い。ジョージはイケメンということもあってか人に好かれやすく入学初日から大勢の人に囲まれていた(女子含め)にもかかわらず、一切挙動不審にならず、そのすべてに真摯に答え、一躍人気者になったのだから。まあなぜかジョージは陽キャグループではなく陰キャグループに属しているのだが。

 はあ、またすぐ、脱線してしまう。


「えーと、じゃあとりあえずそういうことにしといてあげるよ。で、ジョージには岡野を起こしてもらえる?」

「もちろんだよ! 裕也ー! 起きてー!」


 ジョージはすぐに岡野へと声かけをしているようだ。やっぱり、いいやつなんだよな、こいつは。

 さてと、僕も仕事しなきゃな〜、って周りを見ると、もう全員起きてるんですが…。

 あっれえ? 男子担当が僕とジョージなら、他の人は誰が起こしたんだ?

 ……なんだ、簡単なことだ。他の男子、例えば鮫ちゃんあたりが目覚めて、他の男子を叩き起こしたのだろう、有難い。

 …と思えたのは、一瞬だけ。その理由は、


「ちょっと五十嵐くん、なんで仕事もせずにずっと瀬尾くんとお喋りばっかしてるの!!?」


 と女子3名ほどに言われてしまったためだ。

 全く…。ちゃんと働いていれば、こんなことにはならなかったのに…。

 そんなことを考えながら、さっき僕を怒った3人を見てみる。

 猪俣(いのまた)笹原(ささはら)一之瀬(いちのせ)さんか…。

 一之瀬さんからの評価が下がるのはあまり良くないが、あの人彼氏いるって言ってたし、それも今更かなぁ…。となると、別にこの3人なら評価下がっても良いかなぁ、なんて。

 こんな風に考えるから、いつまでたっても悪い癖として残るんだぞ、注意しなきゃ。

 ……と、これでみんな起きたってことで良いのかな?

 僕はそのことを厳原(いずはら)に伝えようとしたその時―――


この部屋に唯一存在する扉が………大きく開け放たれた。

登場人物(主要11人)の紹介は、スキルと合わせて、後日改めてしようと思っています。

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