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六章

 随分と不思議な夢を見た気がする。

 まだふらつく頭を押さえて、しばらく手元を見つめる。ここが現実の世界なのだと頭が理解してから、私は着替えて食堂に向かった。

 螺旋階段を下りながら、事前に雪姉から伝えられていた予定を思い出す。

 確か今日は、役所の方に足を向ける事になっていた。

 噂を広め終ったから当分は外に出ないかと思っていたが、厄介な仕事が残っていたのを思い出し、朝一から大きなため息を一つ。これも立派な仕事の一つなのだろうが、あの場所は私はどうも苦手だ。

 頭が固くて、がさつで、雰囲気からして野蛮な人が多いし……。

 上の立場からの偏見だと思われるような言い方なのは認める。

 だがしかし、たとえ私が平民であろうとも同じ感想を抱いていたに違いない。

 あそこは、城下で一番活気がある場所と言っても過言ではない。

 あの噴水の広場は休憩所として人気を博しているが、役所は戦場として活躍している。

 血気盛んで、腕に自信がある人たちが集まる場所なのだが……まあ、初心者が入るには厳しい所だとは言っておく。

 行き慣れた廊下を進んで食堂に出ると、明るい部屋の中に料理の皿が並んでいた。

 あと何週間かに起こる重大な式があることを未だに知らされていない使用人たちは、いつものように笑顔で挨拶をしてくる。

 内心罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、平静を繕って挨拶を返す。

 中央の料理の奥、部屋の隅に立っている白い影を見つけて、片手を上げる。彼女も気づいて、こちらに駆け寄る。

 彼女の顔を見ると、眉間に深いしわが刻まれていた。

 最初はなんとか我慢しようと必死だったみたいだが、今となっては嫌悪感がダダ漏れになっている。

「……おはようございます。今日の偵察の場所はすでに把握していると思いますが、逃げないでくださいね?」

 最後の一言にすべての感情が詰まっていた気がする。強い口調で言われ、私は控えめに頷いた。

 第三者から見れば、雪姉の周り……いや、私達の周りだけ、空気の色が違って見えるだろう。

 朝食をいつもよりゆっくり食べて、身支度を丁寧に整える。

 外を出ると、気持ちを反映したかのようにどんよりとした雲が、私達を迎えた。

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