7話 おてて
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あのね、右手が幸せです。
………。
あー、これじゃ状況わからないね。うん。
えっと、その、あれだ、うん、だめだ。
ごめんテンパってる。ちょっと待って落ち着くから。
落ち着くなら深呼吸だよな、うん、やるか。
すぅーはぁー
「ひゃっ!………もう、驚かさないでくださいよっ」
「すまん」
ちょっと待って、今めっちゃいい匂いしたんだけど。
何だろ、シャンプーかな?それとも香水?
つーか、そんなに顔赤くしないでよ。
勘違いしちゃうだろ。
うん、甘い匂いのおかげか少し落ち着いてきた。
えーと、何だっけ?
………。
ああ、状況の説明ね。
ちょっと前ご飯一緒に食べて五十土ちゃんと
パーティ組むことなったじゃん?
それで、どうせなら多い方が良いということで、
ギルドに向かってるんですよ。
でも、行きの野生のモンスターが怖いということで、
手を繋いでるんですよ。しかも恋人繋ぎ。
もう一度言おう。恋人繋ぎ。
それで、記憶喪失なのにぼっちの記憶がある
リュウトさんにはマジでレベル高いんですよ。
もう、胸がドキドキってどころじゃないよ。
なら手繋ぐなってなるよな。
でもさ、イメージして。
普通に行こうとしたら、ウルウルした上目遣いで
『あの…………離れていると怖いんです…………。
だから…………その…………手、繋いでくれませんか…………?』
『…………だめ…………でしょうか…………?』
って言ってくるの。うん、やばかったよ。
手すり無かったら死んでた。
で、いつの間にか、恋人繋ぎになってたの。
「あのっ、着きましたよ〜」
そんなこと考えてるうちにギルドに着いたみたい。
へぇーこの赤い屋根の建物がギルドか。
想像よりはやく着いた。意外と近くだったなぁ。
「うっし、入るか」
「はいっ!」
このドアの向こうにはどんな人がいて、
どんな世界が待っているのだろうか。
俺はそんな不安の気持ちと期待の心を胸に、
ドアに手を伸した。
___伸ばしたのは俺の右手___
___五十土ちゃんと繋いでいた手___
「あっ…………」
繋がっていたものが離れると隣から、
か細い声が漏れる。
少しばかり口の開いた彼女の顔は
どこか寂しそうな顔をしている。
この子はずっと一人ぼっちだったんだ。
そしたら、人肌も恋しくなるだろ。
俺は自分の軽率な行動に後悔した。
「ごめんな、お前のことちゃんと考えてやれなくて」
左手を少女の可愛らしい黒髪の上に置く。
そして、髪がぼさぼさにならないように
軽くぽんぽんと彼女の頭を撫でて
離してしまった右手を彼女に差し出した。
「一緒に行こう?」
「…………はいっ!」
少女は優しい手つきで差し出された手を手にとった。
そして、ギュッと力強く握った。
それはまるで、もう離さないというばかりに。
ちなみに、このやり取りを見ていた人に後で
めっちゃからかわれた。恥ずかしい。
その人によると、かなりの人が見ていたらしい。
うわー。また黒歴史だー。もうやだ、恥ずか死ぬ。
グリーンヘラクレス
モンスター ランク2 インターセプト 緑属性 虫系
インセクト 攻撃力10000 防御力5000 △1
カブトムシだぜ、カブトムシ。
この角を見てくれ、コイツをどう思う?