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前夜祭 前

「いや〜、それにしてもだいぶ騒がしくなってきたね」

「そうですね。明日がお祭りなのに今から出店の準備をしている人もいますから」

 賽銭箱の前で優衣と皆穫は祭りの準備が進められている境内を眺めていた。

「とゆうか、優衣さん。こんなところで油売ってていいんですか」

「皆穫、皆穫がそれを行っちゃおしまいだよ」

 えっと、何がお終いなんでしょうか。

「私は今日の仕事は全部片付けたんだよ。まあ、夜に神楽の稽古があるけどね」

「と言いますか、もうそろそろ夕暮れなんですけど」

「だから、こうして休憩をして英気を養ってるんじゃない」

 とてもそういう風には見えませんでした。というか、それは優衣さんの日頃の行いの所為でしょうか。

「そういう皆穫は大丈夫なの、こんなところにいて」

「はい、私は新人なので今回は軽く手伝うだけですから」

「あぁ、そういえばそうだったね。ということは来年の今頃は右往左往しているわけだ」

 それは何の予言なんですか、優衣さん。

「そういえば、美羽は?」

「美羽さんは、集会所でお祭りに関わってくれた人達を接待してますけど」

「ああ、それは美羽も大変だね」

 やっぱり、それを聞いても美羽さんを手伝いに行こうとはしないんですね。まあ、その気持ちは分かりますけど。

「というか皆穫は美羽を手伝いに行かないの?」

「優衣さん、それを優衣さんが言いますか」

「いや、だって、皆穫の今年の仕事は美羽のサポートでしょ。だから、てっきり美羽と一緒に仕事しているものだと」

「まあ、確かにさっきまで私も集会所で手伝ってましたけど、近所の奥さん達が手伝いに来てくれて、だから私も休憩中です」

「そっか、いいな、誰か私の仕事も手伝ってくれないかな〜」

 優衣さん、それはこんな所で油を売ってる優衣さんが言ってはいけない言葉だと思うのですけど。

「というか、優衣さんは美羽さんの手伝いに行かないんですか?」

「絶対にヤダ」

「即答ですね」

「だって、私これから神楽の稽古があるし、明日が本番だから先生も気合が入りまくってるし、本当なら前夜祭を放り出して帰って寝たいよ」

「前夜祭って、何やるんですか?」

「皆穫聞いてないの!」

 いや、そこまで驚くことではないと思うんですけど。

「ええ、何も」

「くそ〜、美羽の奴、皆穫じゃなくて私に手伝わせる気だな」

「えっと、何かあるんですか?」

「うん、前夜祭でも一応、祝詞を捧げたりと祭事が少しあるんだよ」

「はぁ、そうだったんですか」

「じゃあ皆穫、私は神楽の稽古に行って来るから」

 何でいきなりやる気を出すんですか。というか、もしかして私に押し付ける気ですか。

「はいはい、残念でした。逃がさないわよ、ゆ〜い」

「あっ、美羽さん」

「ぐっ、美羽、入ってるから、入ってるから離して」

 美羽は完全に優衣の首をロックしているみたいで、美羽の腕の中で優衣は必至にもがいていた。

「じゃあ、神楽の稽古は前夜祭が終わってからね。もう、先生にもそう告げてあるから」

「うぐぐっ」

 苦しいのか、それとも先手を打たれたことが悔しいのか優衣は変な喚き声を上げる。その姿にさすがに見かねた美羽は、優衣を離して解放した。

「う〜、いいじゃん、今年は皆穫がいるんだから皆穫にやらせれば」

「ダメよ。大輝さんが今年は優衣にやらせて、皆穫に覚えさせるんだから」

「ということは、来年は私がやることは決まってるんですね」

「新人だもの、当然でしょ。何事も経験よ、経験」

 はぁ、分かりましたよ〜。

「だいいち、そんなに難しくないんだから、皆穫にちょっと教えて覚えさせればいいじゃん」

「皆穫は本祭の方で手一杯だろうから、前夜祭は優衣がやれだそうよ」

「う〜、祭事といっても前夜祭は大輝さんの後ろに控えて、必要なものを手渡すだけじゃん」

「そうだけど、渡す順番とか、そういうのを皆穫に覚えさせるためにあんたがやるの」

「はぁ、だったら神楽の稽古をなくして欲しい」

「あっ、先生からの伝言だけど、今夜は完璧になるまで帰さないだって。まあ、明日が本番なんだからしょうがないでしょ」

「ううっ、完全に他人事だ〜。裏切り者〜」

 いや、優衣さん、別に裏切り者ではないと思うんですけど。

「じゃあ、頼んだわよ、優衣。さて、それじゃあ…」

 というか美羽さん、私てっきり仕事に戻るのかと思ったんですけど、何で賽銭箱の前の階段に座るんですか。

「あ〜、美羽がサボってる」

「あんたが言うな!」

「う〜、じゃあ、何でそんなところに座るわけ」

「休憩よ、休憩。私だって今日はさっきまで動きっぱなしだったから、さすがに疲れたのよ。それを見かねた大輝さんが前夜祭まで休んでいいって、言ってくれたのよ」

「う〜、責任者公認でサボるなんてずるい」

「優衣さん、それは違うんじゃ」

「違わくないもん。サボりはサボりだもん」

「というか、日頃からサボってるあんたに言われたくないわ!」

「……そういえば、気の早いで店はもうやってるみたいだから、何か買ってこない?」

 優衣さん、明らかにワザとらしいですよ〜。

「じゃあ、私はカキ氷、練乳がけで」

「私がパシリ!」

「あんたが言い出したんだから、あんたが買ってきなさい。皆穫、皆穫は何にする」

「いえ、私は…」

「遠慮しなくていいわよ。全部優衣が払うんだから」

「オゴリ決定済み!」

 美羽さん、さすがにそれはどうかと…。

「じゃあ、優衣さんと一緒に買出しに行ってきますね」

「皆穫〜、ありがとう〜」

「優衣さん、何も泣かなくても」

「しょうがないわね。じゃあ、三人分のカキ氷買って来て」

 そう言って美羽はたもとからお金を皆穫に渡した。

「えっ、いいんですか」

「うん、だいいち大輝さんのオゴリだから」

 というか最初から決まってたんですね。私達が休憩に入ってるって事を。

「それじゃあ、行って来るね」

「行って来ます」

「おう、じゃあ、よろしく」

 美羽さん、さすがに手じゃなくて足を振って見送るのは行儀が悪いですよ。

 そんな感じで三人は前夜祭を迎えようとしていた。






 ………………後書きに書くことが何もない!

 はい、そこの人、なら後書き書く必要ないじゃんとか思わないように。というか、後書きは作家にとってとても大事な場所なんだよ。何故かと言うと、何を書いても自由だから。

 はいはい、そこの人、引かないように。というかね、作中ではどうしてもその作品の雰囲気を壊すことはかけないわけですよ。まあ、当然なんだけど。

 だが、後書きは何を書いても自由、つまり、完全に無法地帯のフリーダム、幻想卿にも劣らない夢の世界。

 ………………あの、もしかして私、壊れかけてます。う〜ん、なんか最近変だとは思ってたけど、とうとう末期に入ったかな、こりゃ。

 はいはい、じゃあワケの分からない後書きはここまでにして、いつもの行きますね。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。

 以上、何が末期なんだろうと思った葵夢幻でした。

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