巫女派? メイド派?
「お邪魔しまーす!」
そう元気よく美羽の部屋に入ってきたのは優衣。そしてここは岩城神社の裏手にある、住み込みで働く巫女達に立てられた寮だ。
岩城神社自体、かなり辺ぴなところに建っているので寮が設けられている。
「おー、いらっしゃい。といってもさっき分かれたばかりだけどね」
美羽はキッチンから顔を出すことなく、優衣を招き入れた。
美羽の部屋は2LK、寮としてはかなり優遇されており、キッチンも対面式と設備も意外と良かったりもする。
優衣はリビング置いてあるクッションに腰を下ろして、まるで自分の部屋の用にくつろぐ。
「まあ同じところに住んでるんだから当たり前だけど、やっぱり挨拶は大事だよ」
「へぇ〜、あんたにしてはまともなことを言うわね」
「しょせん社交辞令だけどね」
「そういうことをはっきりと口にするな! それにしてもあんた、その格好は何とかならないのか?」
「そんなに変?」
「いや、変というか、いくら部屋着とはいえ長襦袢をそのまま着てるのはどうかと思うぞ」
「え〜、美羽だって同じじゃない」
「私はちゃんと仕事用、部屋着用で分けてるし、今は羽織を羽織ってるでしょう」
だが優衣は小さく声で不満を漏らす。
「どっちにしろ変わらないじゃん。それに美羽だってその姿でキッチンで料理してるじゃん」
「ないか言ったか」
「いやいや、別に何も言ってないよ」
「それに今日は皆穫の歓迎会でしょ。その発案者がそんなラフな格好でいいのか」
「いやいや美羽、新しく入ってきた仲間だからこそ、普段の自分を見せるんじゃない。ここで堅苦しい歓迎会をやっても打ち解けられないでしょ」
「いや、そうかもしれないけど」
長襦袢も着るにしてもちゃんと着ろよ。少々はだけてるし、下手すると見えるぞ。
「それで、皆穫は?」
「ん〜、なんか歓迎されるだけだと申し訳ないので、少し手伝うために準備するって言ってた」
「皆穫もそこまで気を使わなくてもいいのにね」
「そうだね。けど、初めて見知った仲で只歓迎されるのも気が引けるんじゃない」
「まあ、そうかもしれないけどね」
「それに皆穫のことだから、絶対になにかやってくるよ!」
そうだった! 皆穫はこいつと一緒で私の頭痛の種だった。……けどまあ、今はプライベートだから、そんなに突っ込むこともないでしょ。
「お邪魔しまーす」
「おっ、噂をすれば来たみたいだよ」
「今日は私のために歓迎会を開いてもらって、ありがとうございます」
そういって入ってきた皆穫を見て、優衣は快く向かい入れたが、美羽は手が止まりその場で固まってしまった。
「あっ、これ飲み物です。皆で飲むように用意してきました」
「おおっ、ありがとう」
「それと美羽さん、お手伝いします。新参者とはいえただ歓迎されるのもあれなので」
「……」
「美羽さん」
「みーう」
「はっ、いかんいかん、つい我を忘れていた」
「どうしたんですか美羽さん、なにかショックなことでもあったんですか」
「あんたの今の格好に凄いショックを受けたのよ」
「え〜、そんなに変ですか?」
「そんなことないよ、凄く似合ってるよ」
「いや、似合ってるとかそれ以前に、なんでメイド服を着てるんだ!」
「何を言ってるんですか美羽さん。お手伝いといえばメイド、これ以上のものが何処に存在すると思っているんですか」
いやいやいやいや、なんとなくは理解できるが、誰もそこまで要求してないから。
「うんうん、そうだよね。やっぱりそこまでしないと意味がないよね」
いやいやいやいやいや、ちょっと待て、私にはそこでする意味がまったく分からん。
「それじゃあ美羽さん、お手伝いしますね」
「ああ、じゃあ、そこの出来上がったものをテーブルに持ってってくれる」
「はい」
皆穫はキッチンの端に置かれているお皿を持つと、優衣が居るテーブルへと持っていく。その姿はさながらどこぞの喫茶店を感じさせるものがあった。
「おおっ、こういう風に料理を持ってこられると、どこかの喫茶店に行ってるみたいだね」
「私の部屋はいつからどこかの喫茶店になったんだ」
「でもさ、でもさ。メイドさんにこういう風にされると、まるで自分が偉くなったように感じない?」
「というか、皆穫の本職はメイドじゃなくて巫女だぞ」
「それでもメイド服を着た皆穫に給仕されると本物のメイドみたいじゃない」
「えへへっ、ありがとうございます」
「そこはお礼を言うところなのか」
「これもメイド服に秘められたパワーなのかな?」
「どんなパワーだよ」
「要するに、メイド萌えだよ!」
いや、そんな親指を立てて力説させても困るんだが。
「さすが優衣さん。よく分かってらっしゃる。やはりメイドには、それなりに萌えパワーが秘められているんです」
萌えパワーっていったいなに! もう私には付いていけん。
「だよね。こうやってメイドの皆穫をみてると、私もメイドをやりたくなってくるよ」
「よくサボるあんたに、メイドなんて務まるわけないでしょ」
「それは違いますよ美羽さん」
「何がよ」
「コスプレとはなりきることから始まるんです」
「いつからコスプレの話になった。今までメイドの話しをしてただろ」
「分かってないですね美羽さん。今の日本に本物のメイドさんなんて、そう簡単に居ませんよ」
えっ、なんでそこだけ現実的なの?
「ですからコスプレでメイドの萌えパワーを補ってるんですよ」
「ということは、どこぞの喫茶店は萌えパワーの宝庫」
「まさにその通りです。あそここそコスプレメイドの聖地なんです」
「そうだったんだ!」
……優衣、それはそこまでショックを受けることなのか?
「はぁ、こっちは全部出来上がったから、二人とも遊んでないで運んでくれないか」
「あっ、はい、すいません」
「皆穫、がんばれ」
「あんたも運びなさい」
「う〜、わかったよ」
こうしてテーブルの上には様々な料理が並び、各自のコップにはジュースが注がれた。
「それじゃあ、新しく入ってきた皆穫を祝して」
『かんぱーい』
乾杯を交わした後、それぞれ話に花を咲かせるが、皆穫は美羽をじっと見詰めていた。
「んっ、なに、どうしたの皆穫」
「う〜ん、美羽さんの格好もなかなか萌えますね」
「はぁ?」
「うんうん、なるほど。メイドも確かにいいけど、和服も何かしら惹かれる物が」
どんなんだよ。
「やはりメイドが一番人気が有ると思うのですが、和服や巫女もそれに負けずにマニアが多いことも確かですね」
皆穫、そういわれても私には付いていけん。
「やっぱり、巫女萌えも多いいのかな」
「はい、今では着実にその数が増えているようです」
そんな統計を皆穫はとっているのか
「ということはつまり……」
「つまり何なのよ?」
「初詣や神社の祭りに来る人は巫女萌えが多い!」
「勝手に参拝客をそっちにもっていくな!」
「けど、そういう人がいることは確かですよ」
いるのか…やっぱり。
「まあ、世の中にはいろいろな人がいるってことだよ」
「そうね、あんたらを見てるとそれが良く分かるわ」
「まさに十人十色ですね」
そうね、けど……あんた達はかなり特殊な色みたいね。もう私には何色なのかも理解が出来ん。
そんな美羽に関係なく、夜は更けていくのだった。
そんなワケで今回はメイドを入れてみました。う〜んやはり巫女のメイドの融合は難しい。そんなわけで今回はこんな形でお送りしました。
それではここまで読んでくださりありがとうございました。これからも更新が遅れるかもしれませんが、よろしくお願いします。
以上、やっぱり巫女萌えの葵夢幻でした。




