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その 6


 目を覚ますとそこには綺麗な女性が二人いた。



たぶんだが、この女性達が天使という存在なのだろう。

ああ、俺は死んだしまったのか。せっかく生きる理由ができるかもしれないと思っていたのに。しかし、まぁ……悪くない死に方ではあったかな? 


「おい、起きろ。そろそろ依頼をこなしに行くぞ」


「もう、ミオちゃんがあんな思いっきり叩くからだよ」


「それは、その、悪かったとは思っている。しかし、悪いのは私だけではなくてだな、そもそも覗きをしたこいつのほうが悪いはずだぞ!」


 死んだはずの俺の耳に、なぜか聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「だから、ジンは記憶喪失なんだからしょうがないんだって」


「む。だ、だからと言って」


「はいはい。もう認めようね、ミオちゃん」


「う、はい」


 よく見ると天使はユイとミオだった。そして珍しくミオがユイに怒られていた。



──って、あれ? 



「ユイとミオ?」


「あっ、起きた。おはようジン♪」


「全く、起きるのが遅すぎだ。それと朝の挨拶だ、おはよう」


「えっ、ああ。おはよう? じゃなくて!」


「なんだ?」


「急にどうしたの?」


 なぜ俺が慌てているかというと、


「なんで俺は生きているんだ?」


 そう、あの時俺はミオの剣によって頭から切られたはずだと思っているからだ。


「……何のことだ?」


「ん~、もしかして昨日ミオちゃんに斬り殺されたとか思っちゃったりして」


「その通りだけど……」


「えっ!」

「なに?」


 ……あれ? 俺は何かおかしなこと言ったか?


「あのな、お前は本気で私がそんなことをするとでも思っているのか?」


「いや、普段は思わないけど。でも……あの時は斬られてもしょうがないと思ったからさ、……だから斬られたのかと」


「まったく、昨日は剣の腹の部分で頭を叩いただけだぞ?」


 あ、そうだったんだ。道理で生きていられるわけだ。


「はあ、いくら仲間になったばかりで全く役に立たず、堂々とした覗きをする不埒な人間だからといって、私が斬り殺したりするはずないだろ」


「本当にすいませんでした!」


 しかし、いや、そうだよな。


「悪いな、ミオ。勝手なことを言っちまったな」


「ああ、分かってくれればそれでいい」


「そうだよな」


 いくらミオでもそのくらいで俺のことを殺したりは──


「そうだ──私なら生かさず殺さず、永遠の苦しみを与える」


「そっちかよ!」


 あまりにもお約束っぽいのでついツッコミを入れてしまった。


「……と、言うのは冗談だ」


「だろうな」


「それだと私が疲れるから他の者に売り払うつもりだ」


「まさかの二段構え!?」


 というかミオのキャラが変わってきてないか?


 俺がそんなことを考えていると、ミオは、こほんっ。と咳をして少し顔を紅く染めながら、


「それも冗談だ。本当は、その、昨日はおもいっきりレーヴァインで叩きすぎた。済まなかった」


 なんてたどたどしく謝ってきた。


「あ、えっと、俺もその、知らなかったとはいえ覗くようなことして悪かった。すいませんでした」


「うんうん、これで一件落着だね。……にしても、ミオちゃんは謝りにいくまでが長すぎだよ。わざわざ自然に謝れるような雰囲気を作ろうとしないで、普通に謝っちゃえばいいのに」


「わ、悪かったな」


「あ、そういうことだったのか。それでミオのキャラが変になったのか」


「う、うるさいっ! そもそもお前が覗きなんかするから──」


 いや、そうなんだけどな。まあ、それはそうと、


「……なあミオ、全然関係ないけどさ」


「な、なんだ」


「そろそろ俺のことをジンって呼んでくれないか? お前とか君とかじゃ、どうもしっくりこなくて」


「ふん……それならそう呼ばれる努力をすることだな」


「え~、風呂場では俺のことをジンって呼んでくれたじゃんか」


「なっ!」


「おお! なんかそこだけ聞くと、えっちく聞こえるね」


「な、なな、そ、そんなことは!」


「おーおー、ミオちゃん顔赤いよう♪」


 そう言われるとミオは悶え始めた。


「~~~~っ」


「ははは」


 まったく、ユイはミオのことを堅物って言ってたけど、全然そんなことないじゃないか。


「ジンも笑うんじゃない!」


「おっ、さっそく名前で呼んでくれたな」


「~~~~~~~~っ!」


 はは、また悶えてるよ。


 最初のほうはミオをからかって楽しんでいたが、途中でミオが本気で怒りそうになったのでからかうのを中断した。

 ──そして、


「はあ、そろそろ話を戻していいか?」


「脱線したのはミオなんじゃ」


「あぁん、なんか文句あるのか?」


 色々とミオが壊れてしまった……。


「い、いえ、何でもないです」


 少しからかいすぎたか?


「あ、そういえば、さっきから気になっていたんだがレーヴァインってなんだ?」


「ん? ああ、説明してなかったな。レーヴァインというのは私の相棒、つまりこの大剣のことだ」


 そう言ってミオは背中に背負っている大剣を見してくれた。それのことだったのか。

こんなにじっくりと見たのは初めてだな、よく見てみたいとは思っていたがミオが肌身離さず持って行くから見れなかったんだよな。


「やっぱり迫力があるな」


 見た目は薄い朱色で長さはミオの身の丈ほどはある。俺はこれの刃のところではなく腹の部分で殴られたらしい。


「にしても、よくミオはそんな重そうなのを持っていられるな」


「そうだな、私も最初のほうは持つことで精一杯だったな。しかし、身長が伸びて持ち方のコツを掴んでいくとさほど苦ではなくなってきたな」


「なるほどね」


「さてと、それじゃあミオちゃんとジンが仲直りしたことで、そろそろ依頼をこなしに行こうか?」


「ん? もう行くのか?」


「まったく、話を戻すぞ」


「はいよ」


「……今回の依頼だが──最近、街外れにある森の中に狼の姿をした悪魔が出没しているらしい。今のところその悪魔に受けた被害は少ないが、街に来る可能性もあるので早く退治してほしいとのことだ」


「何の被害にあったんだ?」


「何って、殺しだよ」



「────え?」



「悪魔は基本的に人間の肉を好むからな。今回の被害は人が悪魔に襲われたので早々に退治してほしいとのことだ」


「……………………」


 そういえば、初めて会った悪魔も俺のことを食うとかなんとか言ってたな。


「どうした、怖くなったか? もし行く気がなくなったのならジンはここで待っていてもいいぞ?」


「まさか、大丈夫だよ。俺もついて行く」


「ふん、まあいい。それじゃ、準備は終わっているし、行くとするか」


ユイとミオはもう行く準備は出来ていて、残るは俺だけだった。とは言っても俺は特に準備する事はない。ただ──


「朝飯は?」


 結構腹が減っている。


「朝ごはんなら歩きながら手軽に食べられる物を用意したから、悪魔がいる森に向かいながら食べよ♪」


どうやら心配なさそうだった。


読んでいただきありがとうございますm(__)m


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