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その 2

二人目のヒロイン候補登場!!


「やっと、やっと着いた」


あれから結局九時間近く歩いて、ようやく……ようやく、ユイがいった街に着いた。見た目はなんというかぼろい、もとい雰囲気がある街だった。


「それじゃあ、私はこの街で知り合いと待ち合わせしているからそっちに行くんだけど──ジンはどうする?」


そうユイに聞かれて、もう少し街を見てみたいと思ったが、後々のことを考えるとユイと一緒に行動をしたほうがいいか。

……迷子になったらシャレにならんし。


「俺もユイについて行っていいか?」


「もちろんいいよ。それじゃあ行こうか」


俺は、ああ。と答えてユイの後をついて行った。


「なあ、聞きたいことがあるんだけどいいか?」


「いいよ~。なんか珍しいものでも見つけたの?」


「いや、それはもうかなり見つけたんだが……そうじゃなくて、これから会うユイの知り合いについて聞きたいんだ。その知り合いってどんな感じなのかという、素朴な疑問が浮かんできてな」


「ああ、そういうことね。そうだねえ、一言でいえばお硬い性格の人かな。騎士っぽいというか、なんというか、まあ悪い人ではないよ」


「へえ、ちなみにその人って、男性? 女性?」


「女性だよ。そんでもって私と同じ魔具師」


……意外に多いな魔具師。

まあ、二人目だけどね。


「まぁ、後は会ってみてからのお楽しみってことでいいんじゃない?」


そんな感じで、適当なことなんかを話し合っていたらユイの目的の場所に着いた。見た目からして酒場っぽいけど、酒場なのか?


「酒場だけど、どうかしたの?」


「いや、なんでもない」


……酒場だった。

俺が酒場を見ていると、ユイが酒場の中に入って行ったので俺も慌てて後をついて行った。



そしてユイが向かう席には目を惹く女性が席に座っていた。



「……………………」


この人がユイの知り合いなのだろうか?


 見た目は(あか)い髪を後ろにまとめたポニーテールで、スタイルは抜群。いわゆる出ているところは出ていて、引き締まっているところは引き締まっているという感じだ。



しかしその女性には違和感があった。どこかって?



それはその女性には似つかわしい大きな剣を持っているとこだ。というかよくあんな馬鹿でかい剣を持てるな。

そんなことを考えているとその女性が俺の視線に気づいたのか、俺を鋭い目で(にら)んできた。

そこにユイが、


「なんでそんなところで立ちどまってるの? はやくジンも座りなよ」


 ──と、助けに入ってきてくれた。

まあ、本人にその気はないだろうけど。


「それじゃあ、まず彼のことから紹介するね。彼の名前はジン、他は私もよく知らない」


「おい!」


 その説明はあんまりじゃないか?

 まあ、確かにその通りだけれども……。


「──というのは冗談で、私がここに向かっている時に悪魔に襲われていてね、助けたついでに一緒にここに連れてきたんだ」


 俺が悪魔に襲われたと説明した時に一瞬怪訝な顔をしたが、どうでもよかったらしくすぐに元の表情に戻った。


「えっと、黒野ジンだ、よろしく」


俺がそう挨拶をすると彼女は軽く頷いた。

そこで、ユイが次に彼女の紹介をしようとした時に、


「ユイ、私は自分で自己紹介するからいいよ」


と、初めて彼女は喋った。凛とした、とても毅然(きぜん)とした声だった。


「ん、そう?」


「ああ。それで私の名前だが、私の名前はミオ、東雲(しののめ)ミオだ。呼ぶ時はなんでも構わない。……さて、これで私からは特に言わなければならないことはなくなったつもりだが、何か質問はあるか?」


「いや、こっちは特にないけど。そっちこそ、俺になにか質問はあるか?」


「あるな。少し気になったのだが、悪魔に襲われたと聞いたが悪魔との戦闘経験などはあるのか?」


「いや、ないけど」


 あの時は俺が一方的にやられていただけだし、戦闘とはいわないだろう。


「そうか、それならここでお別れだな。縁があればまた会うこともあるだろう」


「へ?」


「どうかしたか?」


俺がどういうことなのか状況を呑み込めないでいると、ミオが俺に言った意味をユイが教えてくれた。


「え~と、そういえばジンには言ってなかったけど、私たちはこれから悪魔退治をしに行くんですよ、実は」


実はってなんだ? 実はって? 


「だからジンはその間どこかの宿にでも泊まっていてもらおうと思ってるんだけど……」


──って、そうじゃなくて、



「それって俺もついて行っちゃいけないのか?」



そういうと、ユイとミオは驚いてこっちを見始めた。


「え! ついて来たいの? 悪魔と戦うんだよ? 怖くないの?」


「君は、言葉の意味がわかってついて来たいと言っているのか? なんの力も持ってない君が一緒に来ても死ぬかもしれないだけなのだぞ?」


ああ、そういうことか。確かに俺が行っても死ぬかもしれないな。けど、


「それでも、ついて行きたい」


ちなみに理由は一人になりたくなという女々しい理由だったりする。


「なぜだ? ついてきたいというのならそれなりの理由があるのだろう。もしその理由がくだらないことならば私は君を連れていくわけにはいかな──」


そこで、ミオが喋っている最中にユイが割って喋り始めた。


「いいよ。ジンも一緒に悪魔退治しに行こう」


そうユイが言うとミオが立ち上がって驚いた。


「──なっ! ユイ!」


「ミオちゃん、私からもお願い。ジンを連れていきたいの」


「なぜだっ! 彼が来ても死ぬかもしれないのだぞ? それについてこられても足手まといだっ! 私たち自身も危険になるかもしれないのだぞ!?」


「……うん。たしかにそうかもしれない。けど、私はジンを連れていきたいの。それに──ジンは私が守る。だから……ね、お願いミオちゃん」


ユイが必死にミオにそう伝えると、ミオが呆れたように溜息を吐きながら座って、


「……はぁ、もういい。わかった。ユイがそこまで言うなら、彼を連れていこう」


そう答えてくれた。そしてその答えを聞き、今度は逆に、


「いいのか?」


──と、俺が驚いて聞いていた。


「ああ、ついてきていい」


ミオはぶっきらぼうに、そう答えてくれた。


「やったね、ジン!」


「ああ。ユイが賛成してくれたからおかげだよ!」


そうやって、俺とユイが喜んでいるとミオが質問してきた。


「その前にひとつ、君に聞きたいことがあるのだが、いいかな?」


「えっ、あ、はい」


「……君が悪魔退治についてきたい理由はなんだ?」




まさかの質問──いや、そういえばさっきも同じ質問をしていたな。




……ユイが止めたけど。



「………………」



「どうしても言えないというならそれでもいいが、私としてはなぜ悪魔退治についてきたいのかを聞いておきたい」


「それは、その」


 なんて答えよう? 本当のことを言ったらさすがにまずいよな。


 俺がミオの質問にどう答えればいいか悩んでいると、


「どうした、早く言え」


 ミオがものすごいドスの効いた低い声で俺に早く答えるように促してきた。

 それに対し俺は、


「一人でいるのが怖いからです!」


 あまりにも怖すぎたため、つい本当のこと言ってしまった。


「…………………………ごくりっ」




 俺が唾を飲み込み、今の理由に対して何を言われるかドキドキしていると、


「……ふぅ、本当の理由は言えない、か」


 へっ?


「まあ、本当の理由は話せるようになったら話してくれ。もう無理に聞こうとはしない」


 ……どうやらミオは俺が本当の理由は言えないから、適当な理由でその場しのぎをしたと思っているらしい。


「そう? 私は今のが本当の理由だと思うけどなあ」


 ユイ正解。全く以てその通りだな。


「そんなはずがないだろう。悪魔を退治しに行くというのについてきたいというのだぞ? それなら一人でいたほうが確実に安全だろう」


 言えない。悪魔より一人でいるほうが怖いなんて……言えない。


「ああ、そうだ。言い忘れたが、ついて来るにあたって条件がある」


「条件?」 


「私とユイの言うことを絶対に聞き、勝手な行動をとらないようにすることだ。他には、そうだな──緊急事態が起こった場合は自分で何をすればいいか想定しておくこと。この二つがついてくる条件だ」


「わかった」


 よかった、案外普通の条件で……。


読んでいただきありがとうございますm(__)m

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