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その 1

説明回っぽくなります、申し訳ない(汗

俺とユイが契約を結んだ後、ユイは俺に名前がないのは不便だと言い、名前を付けようということになった。そんでもって俺に付いた名前は黒野(くろの)ジンである。どうしてこの名前になったかというと、ユイと出会ったあの場所は元々美しい野原だったが、しかし悪魔たちが現れてからは草木が枯れ、荒れ地となってしまった。そんなところに俺が記憶喪失で寝ていたから『黒野』らしいが、『ジン』のほうは理由を教えてもらえなかった。


そして、俺の名前が決まった後は俺が記憶喪失以外にもどこか悪くなっているところがあるかどうかを調べた。


結果は特に悪いところはなく、歩く、走るなどの動作や、喋る、聞くなどの言語について、他には道具の意味や使い方などの知識も失っておらず、基本的な事は体が覚えていた。

どうやら、俺は過去に対する記憶だけが失われているらしい。

その事を知った後、ユイは俺の記憶喪失が今すぐ治せるわけじゃないし、とりあえず近くの街に行こうという話になったのだが……。


「なぁユイ、街にはいつ着くんだ?」


「もうすぐだってば、もしかして疲れたの? それなら休憩にするけど」


「いや、疲れたには疲れたけど。そうじゃなくて、単刀直入に聞くと前にユイは近くの街に行こうとか言わなかったか? それなのにもう街を目指して三日目になるんだが、その街とやらがどこにあるかいまだにわからない。これはどういうことだ?」


 そう、ユイが近くの街に行こうといったにも関わらず、三日間歩いてきたいまでもまだ街が見えないのである。

 これだけ歩いて街が見えないなんてどれだけ距離があるんだよ。何を思ってユイは近くにある街と認識しているんだ?


「ああ、そういうことね。本来なら本気で休まずに走ったら半日で着く距離なんだよ。でもさ~、ジンが疲れたとか、休もうとか、寝たいとか言うから本来なら半日の距離なのにもう三日目なんだよねえ」


ユイはまるで期待はずれもいいとこだ、なんて(さげす)んだ目で俺のことを見てくる。

 ……というか半日も全力で走る(ユイの全力の速度は不明だけど)とか無理じゃね?


「それって本気で言ってるの?」


 だから俺はその疑問をそのままぶつけると、


「本気だよ♪」


 という答えが返ってきた。

その言葉を聞くと疲れがどっと出て体が急に重くなった気がした。なので、


「ユイさん、休憩をしましょう」


敬語にして休憩したいと頼んでみることにした。


「あははっ、いいよ。それなら休憩にしようか。……それにしてもジンは体力ないね。まだ歩いて八時間くらいしか経ってないよ」


ユイはケロッとした顔で俺の休憩案を許可してくれた。

普通に考えたら疲れるはずなんだが……もしかして、俺って体力がないほうなのか? それとも、まさかとは思うがユイが基準ってわけじゃないよな?

そういったことを考えながらその場に座り込み、一息つくと、


「あ、そういえばさ」


 ふと疑問に思ったことがあったのを思い出した。


「なに?」


「ユイが悪魔と戦っていたときに悪魔の手から炎が出たり、ユイが剣を振ると、風が飛んでいったりしたけど、あれはいったい……」


 ──あれはいったいなんだったのか? 


「ああ、あれは魔法だよ」


「魔法?」 


「うん。もしかして魔法のことも覚えてない?」


 ユイが心配そうな顔でこちらの顔を窺ってくる。


「いや、魔法という単語自体は知っているけど……」


「原理までは知らないってところかな?」


「そういうこと」


「ていうことは、記憶がなくなる前の君はやっぱり一般人って可能性が高いかもねえ、一般人でも知ってる人は知ってるけど普通は知らないしね」


 まあ、確かに魔法や悪魔なんかの知識が乏しいのだから一般人と考えるのが妥当か。


「ん~、一応魔法についても説明しとく?」


「そうだな……お願いしてもいいか?」


「まっかせなさい」


 そういってユイは胸(ない乳)をドンと叩き、俺を睨んできた。


「ええと、そうだよな、なくはないよな。それより魔法の説明を聞きたいんですけど……」


「ん、なんか納得いかないけど、まあいいや──ごほん。……魔法について説明すると少し長くなるけどいいかな?」


「ああ、全然構わない」


「うんとね……まず、この世界には魔力っていう不思議な力があるんだ。例えば」


ユイは人差し指を立て「こことか」と言って指をくるくると回す。そして次に「ここにも」といって地面を軽く叩く。

要はそこら辺に魔力というのが存在するらしい。


「そして、その魔力を炎や風という力、つまり神秘と呼ばれる力に変換させることを魔法って呼ぶんだ」


「へえ?」


「ちなみに、人は魔力を神秘へと変換することはできないんだよねえ」


「そうなのか?」


「そうなんです。まあ、悪魔やエルフはできるんだけどね」


 ……確かに俺が見た悪魔は手からユイがいう神秘、炎の槍を出していたな。


「あれ? でも確か、ユイも魔力ってやつを操っていなかったか? あれは魔法じゃないのか?」


「ん? あれも魔法だよ」


「え、でもさっきは人は魔法が使えないって……」


 言ったよな?


「そ。本来なら人は魔法が使えないんだけど、それでも人はどうしても魔法を使えるようになりたくてね、どうすれば使えるか模索したんだ。それでたどり着いた結果が──この()()


 そう言って腰に提げている剣を軽く叩く。


「魔具っていうのはエルフが創ってくれた物で、そうだね……簡単に説明すると魔力を神秘へと変換してくれる物で、魔法を使えない種族でも魔法を使えるようにする道具みたいな物かな」


「……それじゃあ、ユイが魔法を使うときに何か言ってたあれは?」


「ん? ああ、あれね。あれは呪文っていって、その呪文によって魔法を構成するらしいよ」


「らしい?」


「うん。魔法についての原理はまだ詳しくは解明されてないんだ。だから『らしい』っていう予想でしか答えられないんだよ」


「そうか。でも、それなら呪文についてはどうやって知るんだ?」


 伝授するとか、書物に書いてあるとか、そういうわけじゃなさそうだし。 


「えっとね、なんていったらいいのかな、私たち人の場合は魔具を持ってると突然頭の中に言葉が浮かんでくる時があるんだよね。で、その言葉が呪文って呼ばれていて、呪文を唱えると後は魔具が勝手に魔力を神秘へと変換してくれて魔法として使えるようになるんだよ」


 いろいろとわかりにくいな。つまりは魔具を持ってると呪文が頭に浮かんで魔法が使えるようになると、こんな感じか?


「へえ、その魔具って俺にも使えたりするのか?」


「さあ? でも使える可能性はあると思うよ。とはいっても魔具自体が結構貴重だし、さらに魔具との相性っていうのもあるから使える可能性は低いけどね。ちなみに相性っていうのは呪文が頭に浮かんでくるかどうかっていう意味ね」


「そうなのか……」


「ちなみに魔具との相性、この場合は魔具を使って魔法を使える人のことを魔具師って呼んでるんだよね」


 なんか安直な名前だな。


「なんか安直な名前だよね~」


「……………………」


「ん? どったの?」


「いや、なんでもない。それより魔法について教えてくれてありがとな」


「どういたしまして」


 それにしても、そうなのか。俺にも使える可能性があるのか…………使ってみたいな。

 俺がユイの持っている魔具を物欲しそうに見ていると、その俺の様子がユイに伝わったらしく、


「……なんなら私の魔具を持ってみる?」


 と、提案してきた。


「マジで?」


 俺はその提案にかぶりつく勢いでユイに顔を近づけた。


「う、うん。本当だけど」


 俺はユイから魔具を貸してもらい、鞘から剣を抜いてみる。


「おお!」


 ユイの魔具は、剣の腹の部分は濃い翠色で両刃の部分は純粋な銀色で出来ていた。長さはそれほど長くなく、ユイの身の丈の半分よりやや長いくらいだろうか。

 これで俺が魔法を使えたりしたら展開的にかっこいいな、うん。…………呪文よ浮かんでこい呪文よ浮かんでこい呪文よ浮かんでこい。


「…………………………………………」


「どう?」


 俺はユイの魔具に呪文が浮かんでくるように念じてみたが、頭には何も浮かばず、なにも起きなかった。なので、



「バ○ス!!」



 天空の城を破壊(解放?)できる気がする呪文を唱えてみた。


「ジンは一体何をしようとしているの?」


「いや、急に頭の中に呪文が浮かんできたから唱えてみたんだけど」


「…………本当?」


「ごめんなさい、嘘です。いや、浮かんできたのは本当だけど、魔具は関係ないようです」


「そうなんだ。で、どうだった?」


「うん、無理っぽいな」


そう言いながら俺は剣を鞘に収め、借りた魔具をユイに返した。


「まあ、そんなに気を落とさなくてもいいんじゃない? さっきも言ったけど、元々魔具を使える人なんて多くないというかむしろ少ないほうだし」


しかし、やはりというか俺は魔法を使ってみたく、どうしたら魔具を手に入れられるのかをユイに聞いてみた。そうすると、こう話は続いた。


「ん~とね、この魔具は《エンリル》っていうんだけど、元々は私が住んでた村に御守りとして置いてあったやつなんだ。まあ、私を含めた村人全員これが魔具だなんて気付かなかったけどね」


「へえ、というかそんな村にとってそんな大事な物をユイが持ってきていいのかよ?」


「ま、私の村ってもう存在しないからね。それに、私しか引き取り人もいなかったし……」


「……え?」


 俺がそれがどんな意味か聞こうとするが、


「はい! そろそろ休憩を終わりにして街に向かわなきゃ」


 ユイは急に立ち始めたと同時にすぐに歩き始めてしまった。


「あ、おい!」


「このままのペースだと着くのが夜中になっちゃうからね」


そういわれると確かにずいぶんと時間がたったような気がするけど、いまユイが言った意味って……、


「早く行かないとまた野宿になっちゃうよ」


 ……ま、ユイが話したくないなら聞くのはやめるか。


「そうだな、それならしかないか」


それに、街にはなるべく早く行きたいな。でないとまた野宿になるし。

そして、それから何時間も歩き続けた……──


魔具については一応設定は作ってあり、理由もあります。

ただ、その設定は結構後のほうに出そうかと思っています……


読んでいただきありがとうございますm(__)m

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