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その 4


 そういって、今度はユイからではなく悪魔のほうから攻撃を仕掛けてきた。


「ちっ!」


悪魔は持っている黒い刀で攻撃をしてくる。長さはユイが持っているエンリルと似ていて、それほど長いわけではない。が、その刀を振るう速度は申し分なく、簡単には反撃できなそうだ。

そのことに気付いたユイは無理に相手を攻撃するわけではなく、反撃する機会を狙うことにして、今は耐えることを選んだらしい。

そのまま何度もお互いの斬撃が火花を散らして重なり合った後、ユイが押され、少し距離が出てき、そこで悪魔は余裕が出てきたのか、


「どうした、さっきまでの威勢がまるでないな。臆しでもしたのか?」


 と、悪魔が挑発してきた。そしてその挑発をしたがゆえに攻撃が少し緩むと、その瞬間をユイは見逃さず、ユイはまさにその時を待っていたと言わんばかりにここぞというタイミングで呪文を唱え、悪魔へと魔法を放つ。




「っ! 風よ、裂風の刃となり放たれ、そして刻め──ウインディアル!!」




「ぬぅ!」


 最高のタイミングだった。

どう考えても、悪魔はユイの魔法を避けられずに直撃し、この悪魔との戦いもユイの勝利で終わると、そう思ったのだが──


「あまかったな」


 あろうことか悪魔がその場から消え、ユイの横から悪魔が現れ、逆に悪魔の斬撃がユイを襲った。


「は?」


「え?」


 ユイは勿論、遠くで見ていた俺も何が起こったのか理解できなかった。

 そしてユイは悪魔の斬撃を避けようとしたが、それでも避けきれず腕に傷を負って血を流していた。

傷自体は酷くはないものの、あの腕では今までのように満足には剣を振れないだろう。

しかし、悪魔が消える? 一体どうやって? これも魔法なのか?


「ふふ、驚いているようだな」


俺やユイがそのことに疑問を感じていると、悪魔が種明かしをするようにユイに教えてくれた。


「私が持っているこの刀は──魔具なんだよ」


ユイはその悪魔の種明かしに愕然として驚いていた。


「うそ、なんで……?」


「ふふ、何を驚いている? 悪魔が魔具を使うのはおかしいか?」


「……おかしいね。悪魔が魔具を使えるなんて話、聞いたことがないしね」


ユイと悪魔が悪魔が魔具を使えるかどうかなんて議論をしている間、俺はというと、


「魔具っていうのは魔法が使えない者が魔法を使えるようにするだけの道具だよな? 確かに悪魔が使うのはおかしいとは思うけど、ユイは何をそんなに驚いているんだ?」


 なんて疑問を口にだしていた。そんな俺は当然のごとく無視をされユイと悪魔が話を続ける始める。


「そう、なんだ。ということは信じたくないけど、あんたも魔具の付加能力とか使えるのかな?」


「何を言っている? もう使っているではないか」


「……もしかしなくても、さっきのあんたが消えたように見えたあれのこと?」


「御名答。それこそが私の扱う魔具の付加能力だよ」


 魔具の付加能力? なんだ、それ?

そんなの初めて聞いたぞ……。


「君とて、その魔具には何らかの能力があるのだろう。なら君もその能力を使えばいい。そうすれば私と互角に戦えるかもしれないぞ?」


 そうだったのか? 

魔具って魔法を使うために必要な道具ってだけじゃなくて、それ以外にも使い道があったのか。ユイやミオも教えてくれればよかったのに……。

でも、ユイの魔具にも何らかの能力があったのなら、あの悪魔と互角に渡り合えることが──


「使わないよ」


 ──え?


「エンリルの付加能力をあんたに使う気はさらさらないね」


 何で使わないんだよ? 

今の、腕に怪我を負っているユイじゃ、その悪魔には勝てないかもしれないのに。

なのに、なぜ? 


「………………」


 その時、ユイが俺の方をちらりと見たようにに思えた。そして、ユイが魔具の能力を使わない理由が、思い浮かんだ。




 ──俺が、邪魔になっているんだ。




 これは予想だが、エンリルの能力はきっと広範囲で最低でも俺のところには届くくらいの範囲の広さがあるんだ。

だから、もしその能力を使ったら俺まで巻き込んでしまい、俺に怪我を……いや、もしかしたら俺を殺してしまうかもしれない。

ユイはそう考え、俺がいるせいでエンリルの能力を使えなくしているんだ。


「俺は、ユイの邪魔をしているだけなのか」


 俺がいなければ魔具の、エンリルの付加能力とやらを使えて勝てるかもしれない。

けど、俺がいる限り──エンリルの付加能力が使えず、勝てない。


「…………なら」


 俺がユイの魔具能力範囲より遠くに離れればユイは悪魔に勝てるのではないかと考えた。しかし、今俺がいる場所は上ってきた階段がある場所とは真逆の壁際であり、これ以上離れるのは無理だろう。

 そう思い塔の階段を降りようと考えたが、それも無理だった。なぜなら、ユイと悪魔はその階段付近で戦っている。


「どうすれば」


 俺は階段を下りる以外にこれ以上離れられる方法が思い浮かばなかった。


「どうすればいいんだよ……」


 しかも、俺が他に何か方法がないか試行錯誤している間にも、ユイと悪魔は戦闘を開始していて、さらにはユイの戦況がどんどん悪化している。

 切られた腕の傷が広がり、動き方がぎこちなくなっているように見える。




──ユイが殺されてしまう──




「こんな時、こんな時こそ」


 俺に魔具があり、魔法が使えたら、ユイを助けられるかもしれないのに。


「くそっ!」


しかし、使えないことを考えても仕方がない。

だから俺は、一か八かでユイと悪魔が戦っている付近にある階段に向かって走った。そして──


「ジン! 危ないっ!」


「え?」


 そして、階段まで残り半分、つまり塔の中心部分で俺は腹に違和感を覚えた。


「くく、なにをしようとしたかは知らぬが、私はこの戦いを楽しんでいるのだ。その私の楽しみを邪魔をされるたら迷惑なのでな、死んでもらうぞ。小僧」


 どうやら悪魔が持っていた黒い刀を投擲したらしく、それが俺の腹に刺さったらしい。


「?」




……おれのはらに、くろいかたなが、ささった?




つまりおれは、殺されたのか?


「ジン! ジンっ! 起きてよ! ねえ起きてよ、ジンっ!」


──そして俺は目の前が真っ暗になり、何も見えなくなった。



読んでいただきありがとうございますm(__)m


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