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その 2


 目を覚ますと、それはもう狂人化しているんじゃないかと思わせるくらい怖いユイが待っていた。


「……ジン、さっきのはどういう意味かな? 詳しく聞かせてほしんだけど?」


その質問に対して俺は、ユイのフリに答えただけだと、答えた。

そう言うとまたもユイに殴られた。


「あんまり反省してないみたいだね、まずは悪かったのが誰だったのか知ってもらわないといけないのかな?」


世の中不公平だよな。俺が悪いわけじゃないのに。

いや、そうだよ、悪いのは俺じゃなくて──


「俺が悪いんじゃない。お約束を作った世の中が悪いんだ」


 そうだよ。公平になるようにしない世の中が悪いんだ。


「違います。悪いのは世の中じゃなくて、ジンです」


 そう言いながら笑顔でユイは拳を上げて脅してきた。

それに対して俺は──


「ごめんなさい、すいません、俺が悪かったんです」


 その脅しに屈した。


「まったく、私の冗談を真に受けないでよね」


「冗談って」


十時間も迷子になるのが冗談なのか?


「冗談だけど」


 うわ、肯定しやがった。


「そんなことよりさっさと塔の調査をはじめに上にいくよ」


「俺は始めからそのつもりでしたんですけど?」


「私だってはじめからそのつもりだよ」


「えぇ~」


 それは、ないんじゃないか? 十時間もかかるわかりにくい冗談をついて、始めからということは──


「ほら、文句言わないで付いてくる!」


 ……反論は認めない、と。


「さてと、たしかあっちの方に階段があったよね?」


「いや、知らないから」


「そうなの?」


「そうだよ!」


知ってたら階段を上りに行ってるからな……。


「……じゃあ、まずは階段を探しに行こうか」


「は?」


 おいおい、ユイは階段の場所を知ってるんじゃないのか?


「えへへ、階段の場所、わからなくなっちゃった♪」


「……ということはふりだしに戻る形になるのかよ」


「そういうことになるのかな」


「……はあ」


 またか。また歩き続けるのか。


「えっと、ごめんね」


 そんな素直なユイなんてユイらしくねえな。だから、


「いいよ、そんなに気にしてないから。だからユイも気にするな」


 ユイも気にしないでいつも通りに──


「え、そう? それならもう謝る必要ないよね?」


「………………」


「いやあ、一応は謝って反省したように見せないとジンに悪いかなと思って大人しくしたけど、ジンが気にするなって言うなら気にする必要ないし、気楽にいかしてもらおうかな」


 ……あれだな、やっぱり少しは気にしてもらいたいかな。





 そんでもってやっと塔の最上階に到着。


「いやあ、長かった。とてつもなく長かった」


 ──あの後に階段を見つけるのに一時間、階段を上りと途中途中の塔の調査に七時間、最初の十時間も合わせて合計十八時間。塔に入った時は明るかったがといまでは暗くなっていた。

塔の最上階は天井が無く、星空が観賞できるね。絶景だね。


「しかし、それもここの調査で終わりだよな」


 まあ、調査といっても特にわかったことはなかった。儀式についてはもちろんだが、新しい発見なども一つもなかった。

つまりは歩き損の上り損?


「そうだね。大した情報も得られなかったし、時間の無駄だったかもしれないね」


「無駄だったかもじゃなくて、無駄だったんだよ」


「そう?」


 いや、そうだろ。森で迷うわ、塔で迷うわ、無駄でしかなかっただろう? 

──ああでも、ユイの過去話が聞けたことは無駄じゃないな。

あれのおかげで俺は生きる理由が見つけられたし。


「さてと、ちゃちゃっとこの場所の調査も終わらせようぜ」


「そうだね、もう暗いし早く終わらせようか」


 調査といっても大して難しくはない。

ただ塔の壁を見たり床を見たりして、なにか魔方陣等がないか調べるだけらしい。わかりやすく説明すると、落書きされている場所があるかないかを調べればいいようなものだ。


「魔方陣、魔方陣、と」


 ──とはいえ、魔方陣がどんなものかはミオが出した魔方陣しか見た時がなく、他のがどんな模様の魔方陣をしているか知らないので正直困る。しかも夜中のせいで周りが暗いからさらに困る。

 まあ、星が出ているおかげで、塔の中ほどじゃないけどな。

 そして、俺とユイは最上階を探し回ったが、結局何も見つからなかった。


「ユイのほうはどうだった?」


「こっちも全然だめ、まるで手がかりがない」


「そっか」


 本当にただ時間を無駄にしただけだったな。


「これで塔の調査は、終わりか」


 やっと終わった。これで宿に戻ってぐっすり眠れ──


「ないんだな、これが」


「え?」


「だから、まだ宿には戻れないの」


「……なぜに?」


「ジンの言ったとおり塔の調査は終わったよ。でも、まだひとつ重要なことが残ってるでしょ?」


 重要なこと?


「結構重要なこと。だってまだ、悪魔を見つけてないんだよ」


 あっ……。 


「忘れてた。そういえば塔の調査より悪魔探しの方が重要って言ってたよな」


「そういうこと。今回の目的は悪魔探しであって、塔の調査はついでなの」


 そうだった。その後にその悪魔よりユイのほうが危険とか、そんな話になったんだな。


「……でもさ、悪魔探しって具体的に何をやればいいんだ?」


 塔の調査をしている最中に悪魔は見つからなかった。それはつまりこの塔には悪魔はいないってことじゃないのか?


「今回の悪魔は特別なんだよ」


「特別?」


「どんなふうに特別かというと、決まった時間にしか現れない悪魔とでもいえばいいのかな」


「へえ……決まった時間にしか現れない悪魔、ね」


 特別っていえば特別なのかもしれないけど、微妙だな。


「それで?」


「なにが?」


「だから……その悪魔が現れるまでの時間と、どこに現れるかっていう場所を聞いてるんだけど」


「ああ、場所と時間ね。場所は此処、塔の最上階」


「ふむ」


「それで時間は……」


「ああ、何時なんだ?」


「今くらいの時間かな」


「……は?」


 俺がユイの言葉に絶句していると、




『ガアァアァァアァァァ』




「へ?」


 ──星空から悪魔が降ってきた。



読んでいただきありがとうございますm(__)m


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