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その 6



「まだ周りには野蛮で凶暴な悪魔達がいたし、殺されると思うと怖くて仕方がなかった。それで、私だけでもいいから助かりたいって、そう考えたんだ」


「……その願いは結局どうなったんだ?」


「叶ったよ。私がグラムに願いを言うとグラムはこういってきたんだ『いいだろう、私の力をすべて君に貸そう。そして、君の中で、君と共にすべての悪魔を根絶やしにし、悪魔から君を守ってあげよう』ってね」


「それじゃあ、ユイが悪魔を見ると狂人化する理由っていうのは──」


「きっと、ジンの想像通りだよ。私の中にはね、グラムがいるんだ。そのグラムが悪魔を確認すると私に力を貸してくれるんだ。……でね、私の意識とグラムの意識が混ざり合うの。だから、その時の私は、私であって私じゃない、別の私なんだ。最初の頃なんかは本当に酷かったんだ。私の周りに悪魔がいたって言ったよね」


「ああ」

「その時に周りにいた悪魔は全部で八体、その悪魔達の実力はジンが最初に襲われた悪魔と同じくらいだったかな」


 おいおい、あの時の悪魔が八体いるって、相当やばい状況じゃねえか。


「それは、いくらユイが狂人化した状態でも苦戦しただろう?」


「いや、苦戦はしなかったよ。……今の私なら苦戦したかもしれないけどね」


「今のって……」


 今のっていうのは狂人化していない状態のことなのか? 


「違うよ。私が言った今のっていうのは狂人化していない時のことじゃなくて、そのまんまの意味だよ」


「は?」


「わかりやすく説明すると……最初の頃の私って悪魔と戦う術をも知らなかったんだよね。だから、悪魔との戦いの時はグラムに意識をすべて任せてたの」


「それが狂人化じゃないのか?」


「昔の、ね。今は悪魔との戦いの時でも私の意識を半分ほど入られるようになったんだ。……簡単に説明すると私の意識が入ってない時の狂人化のほうが、魔力なんかの扱い方が完璧で、冷静沈着で効率よく悪魔を殺せたんだ。だから、今のほうが弱くて昔のほうが強いって意味」


 ……そういう意味だったのか。


「ちなみに、昔の私──グラムに悪魔との戦いをすべて任せていた時期の私の戦いを見た人々は私にある通り名を付けたんだけど、なにかわかる?」


「……わかるはずないだろう」


「──殺戮(さつりく)の魔女、そう付けられたんだ」


「殺戮の魔女って……それは酷いじゃねえか? ユイは人を襲う悪魔からみんなを守っていたんだろ? それなら──」


「守ってなんかないよ」


「えっ?」


「最初の頃は自分を守るって気持ちだったけど、少し経つと、復讐心からきた衝動のみで悪魔を殺すようになったんだ。まあ、悪魔狩りとでも言えばいいのかな? それに私の悪魔狩りを邪魔した人も殺していたんだ」


「……………………」


「悪魔を探しては殺し、探しては殺し、そんなことを何年も何年も繰り返してきた。村にいた友達の、家族の、みんなの(かたき)ってね。それで、私が悪魔を殺す姿を見た人々が私を殺戮の魔女って呼ぶようになったんだ」


「……ユイ、復讐が生むのは」


「復讐だよね、いまはわかってるよ。でも、子供の頃にさ『復讐から生まれるのは復讐』なんて、そんなこと言われてもわかるはずがないんだよ」


「それは────」


 ……そうだな。

確かに子供にそんなことを言っても納得なんてしてくれない、理性より先に感情が動くはずだ。


「まあ、そんな悪魔狩りをして何年も経った時にある人と出会ったんだ。それであることを学べた」


「ある人? 学べた?」


「そ。ある人は私と同じくらいの年でね、ある学園の執行部っていう組織に属している人だった。学べたっていうのはあとでまた説明するよ」


 そうか……なら学べたことっていうのは後でいいとして、


「執行部って確かユイが属している組織だよな?」


「そうだよ。それで会った人っていうのはその執行部の中でもかなりの実力者でね、こう呼ばれていたんだ──紅炎(こうえん)姫騎士(ひめきし)ってね」


 紅炎の姫騎士?

紅炎ってことは紅い炎を使うってことだよな、姫騎士っていうのは……まてよ、一人だけ心当たりがあるぞ。


「なあユイ、それってもしかして」


「もちろん、ミオちゃんのことだよ」


 もちろんって、まあいいけど。


「確かに紅い炎も使うし、性格も騎士っぽいな。でも、姫っていうのはなんだ? もしかしてミオってどこかのお姫様なのか?」


「さあね、私も疑問に思ってミオちゃんに聞いたんだけど上手くはぐらかされて、答えてくれなかったんだよね」


 そうなのか…………俺も今度会った時に聞いてみよ。


「まあそういうことで、そこでミオちゃんと私が出会ったんだ。でもってミオちゃんと殺し合いをしたんだ」


「はあ? なんでユイとミオが殺し合うんだ?」


「なんでって、その時の私とミオちゃんは出会ったばかりだし、ミオちゃんは元々イニティウム学園から執行部に私を殺すように依頼が出されてたみたいなんだ。それで私も死にたくないから抵抗するわけ」


「それこそ意味がわからんぞ。執行部っていうのは悪魔退治専門じゃないのか?」


 俺はそう聞いた記憶があるんだが?


「だから、悪魔退治だよ」


「いや、だってユイは悪魔じゃないだろ? ユイのどこが悪魔なん……だ、よ」


 俺はそこまで言ってようやく気付いた。そうだ、ユイが悪魔なんじゃない。ユイの中に悪魔が、グラムがいるんだ。


「気づいたみたいだね」


「ああ、そういうことか」


「私の中にはグラムっていう悪魔がいて、その悪魔と関係している私を退治するのがミオちゃんにきた依頼なんだ」


 悪魔退治専門の組織、か。

……あれ? でも、なんで──


「なんでユイの中に悪魔がいるって学園の執行部は知っていたんだ?」


 それはおかしいだろ、ユイとグラムは一体化してるらしいし、見た目では分からないはずだ。どうやったらわかるっていうんだ?


「さてね。私も色々考えて調べたんだけどよくわからなかったんだよね。ミオちゃんと仲良くなった後に私を殺すように書いてあった依頼書にはなんて書かれていたのか詳しく聞いてみたりもした。けど、ミオちゃんは私の中にグラムっていう悪魔がいることを知らないみたいだし、危険だからだとか、悪魔に手を貸しているだとか、そういったことしか依頼書には書かれていなかったらしいんだ」


 まあ、狂人化してる時は危険だし、悪魔であるグラムにも手を貸しているというか貸してもらってるな。


「そんなわけで、私と悪魔が関係してることをどうして知っているかはわからず仕舞いなんだよね」


「……そうなんだ」


 いまさらだが、イニティウム学園って怪しさ満点の学園だよな。


「ま、そこらへんはどうでもいいか」


「……どうでもいいって、ジンが聞いてきたんだよ」


「そうだけど、それより話の続きを聞かしてくれ」


「……はあ、わかったよ。──ってあれ、どこまで話したっけ?」


「ええと、確かミオと殺し合ってるってところまで、かな」


 そこらへんだったような気がする。


「ああ、そこからね。えっと、ミオちゃんと私が殺し合って、その時に勝ったのはミオちゃんだったんだよね」


「……へえ、ミオが勝ったんだ。ユイの話だと昔のほうがユイは強いって聞こえたけど、それよりもミオのほうが強かったんだ」


 俺はてっきりユイが圧勝するんじゃないかなんて思ってたわ。


「うんとね、私が昔のほうが強かったっていうことだけど、それって意識をグラムに全部任せていたからであって、私自身はたいして強くなかったんだよ」


 あ、そういえばそうだったわ。


「つまり私が強くなれる相手っていうのは悪魔限定なんだよね。悪魔狩りを邪魔した人達に対してはその延長線でってところかな」


「それじゃあ、ユイはミオに」


「ぼろ負けもぼろ負け、コテンパンにやられたよ」


「……それは」


 可哀想というか、なんというか、同情はしちまうな。


「それだけじゃなくて、ミオちゃんが『なぜ本気を出さない』って怒って来るんだよねえ」


 納得できないことがあったら納得できる理由を聞きたがる──と。それは実にミオらしいな。


「私は一応本気のつもりだったんだけど、ミオちゃんにとっては遊んでるように見えたらしいんだ。しかも、その後にミオちゃんは『よくそんな実力で殺戮の魔女なんて呼ばれてるな』とか、好き勝手言ってくるし」


「はは、そうなんだ。それに対してユイはなんか言い返さなかったのか?」


 ユイの性格なら『今のは私の本気じゃありません~』とか言いそうだけどな。


「まあ、あの頃の私は悪魔を殺すこと以外は正直どうでもよかったんだよね。あの時も『別に、私は本気のつもりだった。それと用が済んだのなら消えて、私はこれから悪魔を殺しに行くから』とか言った記憶もあるし」


「うわぁ、信じられねえ」


「はいはい。どうせ今の私からは想像できませんよ」


「そう拗ねるなって」


 まあ、確かに今のユイからは想像できないけどな。


「……それじゃあ話を続けるよ」


「おう」


「それでね、それを聞いたミオちゃんが『それならその悪魔を退治するところを見せてもらおうか』なんて言って私の後をついてきたんだ」



ん~、難しい。(いろんな意味で)

設定の矛盾がありそうで怖いが、このまま進んでいきたいと思います!


読んでいただきありがとうございますm(__)m


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