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その 3

ギャグ回っぽくなりました。


 ミオと別れてから四日目のことである。



「なぁ、ユイ」


「なに、ジン?」


「ここはどこだ?」


「んとね…………ここはどこ? 私は誰? 私は何をしていたの? そしてお腹がすいたのはなぜなの?」


 それは記憶喪失ネタか? 俺に対する嫌がらせか?


「最後のは関係ないよな」


「それは違うよ」


「?」


「正しく言うと最初以外は全部関係ない──が、正解」


「ああ、なるほど。──って違う!」


「何が違うの?」


「俺が質問していることと、その質問に対する答えが違う。俺が聞いているのは、俺達がいるここがどこなのかが知りたいんだ」


 そう、俺が見渡す限り周りは木、木、木、つまりは森の中にいる。


「……もう四日目だぞ。本来なら依頼書に載っていた目的の場所には一昨日、遅くても昨日にはついているはずなのに、まるで着く気配がない」


 ミオと別れてユイが持っていた依頼書には──ある塔の調査をして欲しいということが書かれていた。

そしてその塔を目指して四日目、本来なら約二日間で依頼書に載っていた目的の塔に着くはずなのだが……、


「そうなんだよね~、私も不思議に思ってるんだ。依頼書に載っていた目的の場所に着いてもいいはずだけど、もしかすると……」


「もしかすると?」


「迷っちゃったかも、てへっ♪」


 てへっ♪ じゃねぇ! というかやっぱりなのか。

……まぁ、そうなんじゃないかとは薄々感じてたけどな。

しかし、どうして迷ったんだ? 地図通りに進んでいたら着くはずなんだが。


「それは、きっと私が依頼書に載っていた地図を逆さにして見てたからだよ」


「人の心の声を勝手に読むな。というより今何て言った?」


「てへっ♪」


「いやいや、そのもうひとつ後だ」


「地図を逆さにして見てたってとこ?」


「そこだ! というかそれはマジで言ってるのか? 出発する前に間違っていることに気付かねーか普通?」


「てへっ♪」




「てへっ♪ じゃねぇぇぇぇぇ!」




「でへっ?」


「そういう意味で言ったんじゃねぇ!」


「ジンは気難しい年頃なんだね。どう接していいか、お姉さんわかんない」


「……はぁ、もういいです」


ミオもこんな気持ちだったのか。というか、どっちかっていうとユイは俺より年下だろう。


「そう? まだいくつかネタはあるけど」


「もう、い・い・で・す」


 俺は『いいです』というところを強調してユイに拒否の意思を伝えた。


「そ、そうだよね、もういいんだよね」


 ……明らかに落ち込んでいた。──というか、俺が悪く見えちまってるのは気のせいか?


「……あのな、ユイ。確かに今の言い方は少しきつかったかもしれないけど、俺達はこれからのことを考えないといけないんだ。今の状況は本当に深刻で危ないんだ、食糧や水も残り少ないし自分の居場所もわからない。だからせめて、この森から抜け出すことを考えてだな──「あっ、あれが依頼書に載ってる塔じゃない?」──…………………………」


「どうしたの? ジン?」


 そうだよな、そうなんだよな。どうせ俺の扱いなんてこんなもんなんだよな。一人で一生懸命頑張ったあげくすべてからぶって失敗して無駄になる。いや、無駄になるどころじゃなくて迷惑をかけてマイナスにするんだよな、きっと。


「お~い、ジン~?」


 そのうえ、その迷惑をかけたぶんを取り返そうとしてさらに頑張るんだが報われずに邪魔をする結果になり、そして最終的には…………。


「ジン!」


「へっ?」


「もう、しっかりしてよ。もしかして疲れてるの?」


「いや、そんなことはないが」


「怪しいなあ、ジンって自分では大丈夫なんて言いながら一人で無理して周りに迷惑をかけるタイプなんじゃない?」


 ──なんだとっ!


「なぜわかった!?」


「…………え?」


「だから、なぜ俺が一人で無理して頑張ったあげくに周りに迷惑をかけるタイプだと、なぜわかったんだ!」


「いや、そのね、えっと、ごめんなさい」


「そこで謝るな! 俺が可哀想な子に見えるじゃないか!」


「……………………」


「黙んないでくれ、せめて否定するくらいのフォローをしてくれ!」


「……ジン」


「な、なんだ?」


「諦めも肝心だよ♪」


「諦めてたまるかぁあぁぁぁ!」







 ……………………。


「落ち着いた?」


「………………………………ああ、落ち着いた」


 ……あれから俺とユイはずいぶんと騒いだ。

 そして疲れた。


「ん~、さすがに今から塔に行っても調査するときには暗くなるし、塔に行くには明日にしようか」


「そうだな、それがいい」


まぁ、もしも今から塔の調査に行くとユイが言っても俺は却下するがな。


「元気ないね、どうしたの?」


「……………」


 そりゃ、あれだけ騒いだら普通元気なくなるだろ。逆に聞きたいがユイは何でそんな元気なんだ?


「おーい、聞こえてるかな~?」


「聞こえてるよ」


「そっか。でも、それなら返事くらいはして欲しいかな」


「…………なぁ」


「ん? なに?」


「ユイって周りをかき乱すのが得意だよな」


「えっ、そう?」


「ああ、ミオの時もかき乱してたし」


「そういえば、そうだったね」


「ああ、ユイは周りをかき乱す天才だよ」


「いや~それほどでも、あるかな?」


「ちなみに、だ。わかっているとは思うが褒めてないからな」


「なんですとっ!」


「……いや、やっぱり褒めているということにしてくれ」


「なんだ、そうだったのか。まったく、ジンはいじわるだぞ」


 ──やっぱりのところには突っ込まないんだ。

ま、ユイがいいならいいけどな。


「そうだな、意地悪だな」


「うんうん」


「ははっ」


「どうしたの?」


「いーや、なんでもない。もう暗くなってきたし、いまから塔に入ったりはしないんだろ? そろそろ寝やすそうな場所でも探そうぜ」


 まったく、戦いのときは恐怖を(いだ)かせるくらいの気迫というか殺気じみたものを出すくせに、ここまで雰囲気が変わると別人にさえ思えてくるな。


「……あのさ、ジン」


「ん? なんだ?」


「私が思うに寝やすそうな場所なんてないんじゃないかな?」


「え?」


 俺は周りを見渡し、そんでもって歩いてきた方向を見る。 


「ああ、なるほど」


言われてみれば確かにそうだな。ここに来るまでに寝やすそうな場所なんてこの森にはなかったな。どこも地面はでこぼこになっていて木の根なんかも多かったし、寝やすそうな場所なんてどこにもないな。


「そうでしょ。それなら塔が見えるここで野宿した方がいいんじゃないかな? ここから離れてまた塔を見失って迷うよりは寝にくい場所で待機した方が私はいいと思うけど、ジンはどう思う?」


「賛成だ」


 ここを動いてまた塔の場所を見失うなんてことになったら馬鹿みたいだしな。


「それにしても、ユイがそこまで考えてるなんて驚いたな」


「ふっ、私も日々進歩しているからね。この森に来た時からこうなることは予想済みなのさ」


 それならこの四日、いや、寝たのは三日か。この三日間、寝やすそうなところを探していた俺たちの行為はまるで無意味じゃねぇか。それに──


「本当のところはどうなんだ?」


 ユイがここまでの考えを巡らすはずがない。日々進歩いしてると言ったが、ユイが三日でここまで変われはしないだろ、たぶん。


「んー、本当のところは、前にミオちゃんと似たようなことがあったんだ。目的の場所を前に今日みたいに暗くなったから明日にしようということになって、私が寝やすい場所を探そうとミオちゃんに言って探した結果、目的の場所がわからなくなって着けなくなったんだ。その時のことをいまさっき思い出したからその経験を活かそうと……」


 そうだったのか、それなら今回はそのことを思い出して、前の経験を活かそうと考えたユイに感謝するべきなのかな?


「そっか、ありが──「いや~、懐かしいな」──とう、ユイ」


 ……感謝の言葉を言おうとした時に途中で口をはさむなよ。すごい半端な感謝の言葉になっちまったじゃないか。


「……で、何が懐かしかったんだ?」


「実はあの時も迷ったんだよ。目的の場所に着くまで普通なら三日くらいで着くはずなのに、迷って目的の場所に着くまで丸々一週間かかったんだよね」


 迷った理由は一体……いや、聞くのはよそう。どうせというかなんというか、またユイが何かしたんだろう。


「あの時のミオちゃんは面白かったな~。地図を逆に見てて、そのことに気づくのに四日もかかったんだよ。ぷっ、くくく。いま思い出しても笑えるよ」


「──ってミオが理由かよ! というか、俺達が迷った理由と状況が全く一緒だからな! 人のこと笑えないからなっ!」


 人の振り見て我が振り直せとはこのことだ!


「? なんのこといってるの?」


「なんのことって。……だから、ミオが地図を逆さにして見て迷ったのと、ユイが地図を逆さにして見て迷ったの、理由が同じわけなんだからユイもミオのことが笑えないって言いたいわけで」


「あ! ここなんかいいんじゃないかな。寝やすいとまでは言わないけどまだましな方だと思うよ。それにここからなら塔も見えるし、ちょうどいいと思うけど、ここでいいかなジン?」


「くぅぅぅ」


 またか、またなのか? どういえば伝えられるんだ! 

この想い、この切なさは!


「どうしたの、急に変な声出して?」


「……いや、なんでもない」


 なんか無理っぽいな。というか無理だ……諦めよう。時には諦めも肝心だって、偉い人が言ってたしな。


「あ、その偉い人って私だよ。さっき私が言ったんだよ」


「違うよ! たしかにユイも言ったけど違うからな! というかだな、人の心を勝手に読むなって何度言えばわかるんだ?」


「ジンは突っ込むのが好きだねぇ」


「いやいや、ツッコミを入れさせてるのはどこのどいつだかわかってるのか」


「うわ、突っ込むとかエロ! ジン、女性に向かってそういうことは言わない方がいいと思うよ?」


「違うから、何もかもが違うから! というか話が噛み合わねぇ!」


「さてと、そろそろ疲れたし寝よっかな」


「──っておい!」


 マイペースにもほどがあるぞ!


「……あ、ジン」


「ん? 今度はなんだ?」


 さっきの話を続ける気か?


「……突っ込まないでよ?」


「突っ込まねぇよ!」


 俺がそう言うとユイがにやりと俺を見た。


「?」


「私はツッコミを入れないでよって言ったんだよ? それなのにいきなりツッコミを入れて、ダメダメだなぁ」


「え、あ、ああ。そういう意味だったのか」


 俺はてっきりあっちの方の突っ込みだと思った。


「………………」


「ん?」


 なんだ? またユイがこっちを見てるけど?


「ジンはエッチだな~」


「は?」


「そんなことばっかり考えてたちゃだめだぞ♪」


「なっ! ち、違うぞ! きっとユイが考えていること全く違うと思う!」


「そんなに慌ててると逆に怪しいぞ。それにジンはさっき『そういう意味だったのか』とかなんとか言ってたじゃん」


「あ、あれはだな、その」


 やばい、思いつかねー。突っ込みの意味っていま出てきた二つしか思い浮かばないし!


「その、の後はなに?」


「えっと、あの、ご」


「ご?」


 こうなったら、


「ご、ご、ご」


「ごごご?」



「ごめんなさい!」



 謝るしかねぇ! 男らしく、堂々と、雄々しく謝れば、ユイならきっとわかってくれるはずだ。

なにをわかってくれるかはわからないけど!


「……………………」


 ユイの反応は──


「む~、つまんない」


 ダメだったらしい……。


「……そんなこと言われても困るんだが」


 俺にどうしろと?


「ま、いっか。……寝ることにするよ」


「最初からそうしてくれ」


「ジンが話を変な方向へ持っていったせいじゃない! 私のせいみたいに言わないで!」


違うから! 俺じゃなくてユイが話を変な方向へ持っていったんだよ! 

──と、突っ込みたいけど、突っ込んだらまた話がそれるだろうからここは俺が大人になって、


「もう、仕方ないな。私は大人だからここは私が話をそらしたってことにしてあげるよ」


「お前がそらしてるんだよ!」


 子供になる。


「な、なにお~。よおし、やってやろうじゃない! その喧嘩、買った!」


 しまった! つい突っ込んでしまった。


「どうしたどうした! かかってきなさい!」


「あ、あのな、ユイ。俺が悪かったから、落ち着いて話を聞いてくれ」


「この童貞の変態野郎がかかって来いって言ってるんだ!」


「! ど、童貞だと? 変態野郎だと? 俺の彼女いない歴が年齢と同じだと?」


「いや、最後のは言っていないんですけど」


「上等だこらっ! やってやろうじゃねぇか! 本当のことでも言っていいことと悪いことがあるのを教えてやるわ!」


「肯定するの? 変態のところも肯定するの?」


 変態のところも肯定するのかって? 

そりゃ肯定するさ。なぜなら──




「男なんて全員変態なんだよ!」




「………………」


 俺がそう言い張ると、ユイは顔を俺に近付けきた。


「?」


 そしてユイの顔が俺の顔に後、数センチというところで止まった。


 な、なんだ? 



「えっち♪」



「ぶっ!」


 ちなみに今の『ぶっ!』は鼻血が噴き出した音だ。


読んでいただきありがとうございますm(__)m


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