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その 1


 戦いが終わった後、俺達は宿屋に戻った。

そして、俺は疲れたのですぐに横になった。

ちなみにユイとミオは──


「私達は学園に今日の悪魔退治についての報告書を書かなきゃいけないから、ジンは先に休んでていいよ」


 ──と言って、報告書を書き始めていた。俺は悪魔退治の手伝いを特に何もしていなかったような気がするが、なぜか体の所々が痛かったので、ユイの言葉に甘えさせてもらい先に休ませてもらうことにした。





 そして翌日、起きてみると、


「ユイの精神が弱いから狂人化してしまうんだ、だから前に別れた時に精神を高め、感情のコントロールを出来るようにしろと課題を出したはずだが?」


「だから、私もそれができたら昔からやってるって何度も言ったじゃない。無理なことは無理なの」


「最初から無理と決めているから無理なんだ。何事もまずやってみて、それから無理かどうか判断するべきだ」


「それも前に言ったけど、試してはみたって。それでできないと判断したから諦めたの」


「それはユイが諦めるのが早すぎだな。限界までやって、初めて無理かどうかわかるはずだ。それをユイのことだからどうせ、数日とか数週間しかやっていないのだろう?」


「う、そ、それはそうだけど、そんなの数日やれば十分だよ。自分のことは自分が一番よくわかる。だから諦めた選択は間違ってない、あれ以上は時間の無駄だよ」


「だから、その考え方は──」

「あのね、私には私の──」


 ……二人は言い争っていた。


うるさいな…………ここはあれだな、選択分けされているんだろうな。



あなたは二人の争いをどうしますか?


止めますか?

止めませんか?



──みたいな感じの選択肢で。ちなみに俺ならその選択肢のどちらを選ぶかというと、

……止めないで二度寝を始める……だ、な。


「ぐぅぅ」


「起きろ、ジン!」

「ジン、起きて!」


 ……その選択肢はないらしい。


「んぁ、なんだよ? 俺は眠いんだ」


「もう十分寝たじゃない」


 ──外を見ると、窓から漏れる光がとても眩しい。


「あ~、そう、だな。たしかにそろそろ起きたほうがいい時間かもな」


「そうだよ、私達なんか寝てないのに」


「は? もしかして昨日からずっと報告書を書いてたのか?」


「それもあったけど、報告書は結構前にできてるんだ」


「じゃあなんで寝なかったんだよ?」


「そう! それをジンに聞いてもらいたいの!」


 ユイは徹夜していたせいか、妙にテンションが高い。


「ああ、ジンならどちらが正しいか判断できるだろ。無論、私が正しいに決まっているけどな」


「む、そんなこと言っていいのかな、ミオちゃん。これでミオちゃんが間違ってたら恥をかくことになるんだよ?」


「それはないな。どちらかというとユイのほうが恥をかくことになると思うが?」


「恥をかくのはそっちです」


「いや、ユイだな」


「ミオちゃんです!」


 また言い争ってるよ、俺が起きた意味ないじゃん。どうせまだ時間がかかるだろうしこの隙にもう一度──



『寝るな!』



「はい」


 ……無理か。


「じゃあまず、二人が言い争っている理由を教えてくれ。でないと話が進まん」


「それじゃあ、まずは私から──」

「それなら、私から──」



『──む』



 たまにこの二人って仲がいいのか悪いのかわかんなくなるよな。


「それじゃ……ユイの話で決めよう」


「おっ、さすがジン。わかってるね♪」


「…………仕方ない、不本意だが、本・当・に不本意だが、ジンがそう言うなら私は引こう」


 本当はどっちでもいいんだが、ミオだと話が長くなりそうだからな。


「こほん──それじゃあ言うね。昨日、私とミオちゃんが学園への報告書を書いていたことは知ってるよね?」


「ああ」


「その報告書を書き終えて、やっと寝れるって思った時にミオちゃんが『ユイに言いたいことがあるって』って言うから私が何って聞いたんだよ」


「ふむ」


 ミオはユイに何を聞かせたかったんだ?


「それで話って言うのは私が狂人化する理由についてだったんだ」


「ふむふむ」


 む、それは俺も聞きたいな。


「そしたら朝になってて寝れなかったんだよ!」


「……ふむ?」


 ……あれ、狂人化についての話は何処にいったんだ? 


「どう思う?」


 どう思うと真顔で聞かれても困る。俺自身、ユイこそ今の話をついてどう思う? と、聞きたいくらいだ。


「あーと……よし、次はミオの番だな」


「なっ、ちょっと!」


「わかった、私の番だな」


「えっ、私の話で決めるって言ってなかった? 私ってこんな扱いなの?」


 それはしかたないだろ、あんな説明じゃまるで分らないんだから。かといってそれを正直にユイに伝えても意味なさそうだし。さて、どうするか?


「あのだな、ユイ」


「……なに?」


「俺はユイだけの話を聞いてどちらが悪いか決められないんだよ」


「どうして?」


「ユイの話とミオの話、両方を聞いて共通している部分と共通していない部分、それを知って間違っている部分を見つけてそこでの自分の見解と相手の見解の食い違いを確かめ、本当はどうだったのかを知って初めてどちらが正しいのか、どちらが悪いのかが決められるんだ。わかるな?」


「……うん」


 よし、うまくあしらえた。


「それじゃあ、次はミオの話だな」


「ん、わかった」


 ……ふぅ、本当ならユイの話だけで終わらせるつもりだったんだが、しかたないか。ミオの長いだろうと思われる話を聞くか。


「さっきのユイとの話なんだが、ユイが狂人化する理由とその対策について話し合ったんだ」


「そうらしいな」


「私はユイが悪魔となんらかの関わりを持っていることが狂人化になる原因だと考えている。これは予想でしかないのだが、……ユイは悪魔に対して何か特別な感情があるとみたんだが、それはあっているだろうか? ユイ」


「……………………」


「特別な、感情?」


「そう、ユイが狂人化するときにはいつも悪魔が関わっている。昨日の白いオオカミの悪魔との戦いがわかりやすい例だな」


 ──ああ、あの時の……。


「さて、そこで私はユイが悪魔に対してどんな感情を持っているのかが知りたいんだ。これが分かれば狂人化についての解決策があるかもしれないと思ってな」


「……………………」


「ユイ、さっきから黙っているが、それではわからないぞ」


「……うん」


「うん、ではない。私が聞いているのはユイは悪魔に対してどんな感情を持っているのか、その理由が何なのかが知りたいんだ」


「それは、その」


「……………………」


「……ごめん」


「そう、か。わかった──ただ、悪魔を特別視しているかどうか、これだけは答えてくれ」


「…………それは、あってるかな」


「そうか……まあ、今回はそれがわかっただけでもよしとしよう。それと、すまなかったな。良かれと思って少しでも早くその体質をどうにかしようと考えたのだが、出すぎた真似をしてしまったようだ」


「ううん。謝らなくてもいいよ。ミオちゃんは私のことを心配してくれているからこそ、なんでしょ?」


「そうだな。──けどそれは、ユイだけの心配ではない」


「? ……あ、そっか。これから私はジンと一緒に依頼をこなすわけだもんね。今までみたいにすぐ狂人化したりしたら」


「そうだ。ジンがすぐに死んでしまう」


 ──おいっ! いま気づいたがそれって俺にとってはかなり重要じゃん!


「な、なぁ。結局はユイの狂人化はどうしたらなくなるんだ?」


「さて、私にはわからんな」


 そこで俺は少し不安そうな顔をすると、


「なあに? もしかして私と一緒に旅をするのが嫌になっちゃったのかな?」


ユイがにやにやしてそんな事を聞いてくる。


「…………そんなはずないだろうが」


 その程度で嫌になるなら、悪魔退治をしに行くといわれた時点で逃げてるだろ。


「にやにや、すんな」


「うん」


「…………なんだよ」



「ありがとう、ジン♪」



 そんなことを笑顔でユイは俺に言ってきた。


「~~~っ!」


 俺は顔を真っ赤にしてこう思った。反則だろ、その笑顔は。



読んでいただきありがとうございますm(__)m


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