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剣色の夢  作者: チャカノリ
五月病
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第九十八話 「あとは任せろ」

「聞きやがれ、ディープ・パープルで、スピードキング!」


 立ち上がって怒りを振り絞ったイエローは、ギターのソケットに挿さった黄の柄を通して、荒々しい音のメロディーと、何にも止められないようなシャウト混じりの歌声を放ち始めた。


 一瞬だけ振り返ると、弾いている時のその表情は、今までトラコに囚われ、抱かされた恐怖に対抗しようとしたのか、厳ついものになっていた。


 いつも以上に強気なイエローが、そこにあったのだ。


 トラコだったソレとせめぎ合っている僕の方へ、イエローは奏でながら向かってくる。タイミングを見計らって僕が一旦引き下がり、あとは電流になったイエローにソレの相手をして貰うのが良いのだろうが、僕へのトラコの猛攻はどうも止みそうになかった。


 そこでちょうどサビらしき部分に入った時、イエローにこんな一声をかける。


「イエロー、一気にぶちかまして!」


 その言葉に応えてくれたのか、イエローが放つギターの音は一層大きく暴れ、純粋な音圧でトラコを吹き飛ばす。僕も思わず一緒に吹き飛ぶかと思ったが、彼は音圧の流れを柄の力で器用に操作していたようで、僕まで吹き飛ぶ事はなかった。


 一番のサビらしき部分が終わると共に、ソレは僕らから少し離れた先に着地し、すぐさま体勢を整え始めた。


「あとは任せろ」


 同時に、イエローが僕の前へ歩いてくる。どうやら、彼に代わってもらえるようで、内心ほっとした。ソレとせめぎ合っている際、彼女の翼に当たってしまうと羽毛に変えられてしまうため、細心の注意を払って立ち向かっており、実はかなり限界だったのだ。


 一気に力が抜けてしまい、その場で座り込んでしまう。彼の背中を見上げると、そこには今までにないくらいの力強さがあった。


 イエローが二番の歌詞を歌い始めたと共に、ソレは彼の元へ飛びかかってゆく。しかし幾ら翼でイエローに触れようが、イエローを羽毛に変えられることはなかった。それどころか、痺れて驚くしぐさを見せ、触れないようにしていた。


 それもそのはず、イエローは電流になっているのだ。


 ソレはイエローを相手にするのをやめ、今度は僕の方へ狙いを定めて飛ぼうとする。それに気づいた僕はなんとか立って逃げようとしたその時、ソレがジャンプして飛びかける。しかし、イエローもジャンプして通せんぼされた。イエローに触れたソレは、またもや痺れてしまう。


 その上、イエローが二番サビに入ったことで、ソレは再び勢いよく吹き飛ばされ、今度はこの視聴覚室の入り口近くの壁に打ちつけられた。


 だが、ソレは怯む様子を見せない。二番のサビが終わった後に再び立ち上がると、片方の翼を閉じ、もう片方の深緑の羽毛で覆われた翼を全開にしたのだ。


「ベース!」


 ソレがトラコの声を借りて言い放った時、ソレの広げられている方の翼から重低音が放たれ、僕の鼓膜の様子が変な感じになってしまう。イエローの方も、ギターソロを奏でつつ、苦悶の表情を浮かべていた。

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