第八十一話 「今日から張り切ろっかな」
ゴールデンウィーク明けの朝、あたしは誰よりも早く職員室の入り口に向かい、近くに配置されていた提出ボックスに応募用紙を投函する。
昨日のハートアタックらのバンド演奏の撮影をした後、塾にて夜まで講習を受けてきて疲労が溜まったのだが、なんとか気力を振り絞り、文化祭実行委員会の委員長に立候補するための応募用紙を遂に書き上げることができた。撮影後や塾へ行くまでの間、何を書くかを頭の中である程度まとめていたのだから、提出期限の前夜でも無事に完成させ、提出できたのだ。
実行委員長の立候補のためにすべきについて一旦区切りはついたが、これで終わりではない。むしろ、これをきっかけに始まるのだ。特に来週の臨時生徒総会にて、全校生徒の前で公約のスピーチをし、票を集められて初めて実行委員長として活動できるわけなので、今回提出できたことは一つの通過点に過ぎない。
――ということを自分に言い聞かせているのだが、内心、かなりの達成感があった。
なにせ、ゴールデンウィーク中に体験したり感じたりしたことを、我ながら十二分に活かして公約に盛り込めたのだから。
あとはスピーチの際、自分の公約がみんなのためになることを証明しつつ、生徒と外部の人の両方のための文化祭にできることを、話の進め方とたたずまいで示せればよいのだが、昨日のバンド練習時の喜多子を参考にしつつも、もう少し考えないといけないだろう。
「誰も一人にしない文化祭」を、作り上げるために。
◇
妹の矛子のイタズラに見舞われながらも、僕は今日も学校へ向かうのだが、その途中、寄りたいところがあった。
とある場所につくと、塀に備え付けられたインターホンのボタンを押し、こう話しかける。
「イエロー! 今日、昼休みに学校来る?」
「今日は気分的にいかねえや」
音割れしたイエローの声が、スピーカーから聞こえてくる。
あの日、ヤマブキ・イエローにベースの実力を認められた後「イエローが昼休みに学校に来る日と来ない日を把握したい」と相談したところ、このように毎朝確認させてもらう事になったのだ。
ちなみにイエロー曰く、彼の父と母は二人とも海外で働いているらしいので、あまり家に帰ってこず、彼は学校をサボり放題らしい。
彼の友達として、少し思うところがあった。お昼休みに一緒に食べるだけでなく、一緒に登校して、学校で一緒に授業受けて、放課後は一緒に帰るなど、ただの当たり前な高校生活をイエローと過ごしたかったのだ。
ただし、こんなお願いをするのは、学校をサボって不登校になっている理由を彼から伝えてくれた時にしようと思う。
きっと高校をサボるのは、相当なことがあったのだろうから。
◇
「さて、今日から張り切ろっかな~」
どこかの家の屋根で座り込み、目を閉ざしていた少年は、ただ独りで朝日を眺める。
白髪で白甚兵衛を着こんだ彼は、とっておきの考えを持っているのか、思わず厭らしい笑顔をしていたのであった。




