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剣色の夢  作者: チャカノリ
青い黄金週間
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第七十話 「文化祭でも同じことが言えるのだとしたら」

「……あの、人違いでした。 すみません」


 髪型のシルエットは叶に似つつも、目元を黒く塗った人と目が合い、力なく謝る。本人にそのつもりはないのかもしれないが、迫力ある目力で睨まれている感じがし、どうも委縮してしまうのだ。


 その人はどこかしっくりこないような表情を見せながらも、人ごみの中で再び前を向き、あたしの先を引き続き歩く。


 三人がどこにいるのかを把握するべく、一旦道の端の方に寄り、まずは叶に電話を掛けてみたが、中々出てこない。


 次に、寅子の方に電話を掛けると、雑音混じりに応答してくれた。


「ねえ寅子、いまどこいるの?」


「喜多子だけど? ってか、つるぎこそ今どこにいるんだ?」


 なんと、寅子よりダウナーな喜多子が電話に出ていた。前に聞いた際、設定したパスワードや使っているケースが同じなので、どっちがどっちのスマホか時折分からなくなり、互いが互いのスマホをいつの間にか持っていた、なんてことが何度かあるそうだ。まさかこんな時でも、それが起きるとは思わず、スマホを落としそうになるくらいにぎょっとしてしまう。


「またスマホが入れ替わっちゃってるよ……えと、あたしは今、狭い道出たところにいるよ」


「こっちはもう会場の入り口に着いてるけど、どうする?」


「そしたらあたし向かうから、そこで落ち合お」


「ういっす、んじゃ」


 ものぐさにそう言うと、あたしも彼女も、ほぼ同じタイミングで通話を切った。


 さて、そのまま真っすぐ会場に向かうことができれば良かったのだが、相変わらず順路を示している立て看板は人ごみに紛れて見えにくくなっていた。辛うじて係の方や警察の方による人の流れの整備などがあるくらいで、人と強くぶつかり合うくらいに混んでいる。


 こんな状況なので姿勢が崩れてしまい、ふとした拍子に倒れるように隣にいた人とぶつかってしまった。


「すみません……って、あっ」


 先程人違いをしてしまった、叶と同じ銀のツインテの目元が黒い人と再びめぐり遭ってしまう。まさか混雑に巻き込まれて友人とはぐれたり、人の流れにもまれた先に、こんな気まずさがあるとは思いもよらなかった。


 その後、寅子、喜多子、叶と合流でき、無事にフェスのライブ会場へ入場する。


 いろんな色の光できらびやかに彩られたステージで、女性アーティストや女性バンドグループがパフォーマンスする様は、知らない曲を演奏していながらも見ごたえがあって楽しかった。それに、隣で寅子と喜多子がいつもと違って張り上げた声をハモらせるさまは、見ていて思わず笑いそうだった。


 帰りの電車内にて、居眠りする叶と喜多子に寄っかかれながら、あたしはふと、今日のことについて振り返っていた。


 フェスは確かに楽しかったが、そこにたどり着くまでの道のりは、不安でいっぱいだった。フェス終わった翌日は疲れる、なんて話は嘘だと思っていたが、もしかすると人混みのせいで疲れるものなのかもしれない。


 それに、今日のあの公道の混み具合は少し怖かった。立て看板はかなりの混み具合で意味を成していなかったのに加え、よくよく考えると、警察の方も協力して辛うじて整備できた、といった具合だったのはかなり危なかった。


 もし、このまま年を追うごとにこのフェスの来場者数が増えていくと思うと、いずれ自治体の方など関係者の方から「フェスを開催してはいけない」とはいわれずとも、何かしらの厳しい制約が設けられてしまいそうな気がしてならない。


「ねえ寅子、今日のフェスって、やっぱり年々来場者数が増加してるの?」


 あたし以外で唯一寝ていない彼女に対し、聞いてみる。


「そうね、前調べたときは毎年少しずつ増加してるらしいけど」


「そっか。 正直、今日は人混みが凄くてちょっと危ないって思ったから」


「確かにそうだよね。 今日の係の人、ちょっと人数少ないって私も思った」


 これが、あたし達の文化祭でも同じことが言えるのだとしたら――


 その日の夜のあたしは、公約を書くためのメモ書きに「スタッフ配置などで混雑整理・緩和することで、地域の人からのクレーム減らし、文化祭の規則が厳しくならないようにする」と書いていた。

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