第六十七話 「生徒を一人にしない」
ヒトミとの通話の後、文化祭実行委員の志望動機の下書きを、一旦は別の紙に書ききることができた。自分が作り上げたい文化祭を想像できるようになってきたとはいえ、なぜそんな想像を実現するべきなのかなど、あやふやなところもある状態でいきなり応募用紙原本に書き込むのは、リスキーなことだと思えたのだ。それに、委員長、副委員長、役員のうち、実行委員会内で自分がなりたい立場についてもはっきり決められていない。
本当はもっと決めていくべきであるものの、どうにも迷ってしまって一つに絞れず思い詰めていると、あることが頭をよぎった。
いっそのこと、ゴールデンウィーク前に終わらせるのではなく、ゴールデンウィーク中に終わらせるのが良いのではないか、と。
このゴールデンウィークは友達との予定もかなり詰まっているのだが、その際に文化祭のことについて友達ともっと意見を交わし、自分の理想像やその実現する理由に実際の文化祭に生徒から必要とされていることも盛り込んでいければ、あやふやなところを無くしていけると踏んだのだ。
それに、自分が実行委員の立場のうちどれに就きたいのかについても、友達に相談すれば何か気づくことができそうな気がした。
改めて、現段階で完成している下書きの志望動機や公約を読むと、自分の想像のために突っ走りすぎず、もっと他人の意見を取り入れていくべきであるように感じられた。
特に、誰も一人にしないために行うことの一つである「当日の案内スタッフを務めてくれる生徒に対して研修を実施する」や「文化祭で何かあったときに頼ってもらえるように総合案内所を充実させる」が、来てもらった方にとっては良いことであっても、生徒にとっては決して良いこと、という訳でもない。
特に研修実施については、余分に生徒を拘束することに繋がってしまい、自分のクラスの文化祭企画に割ける時間が少なくなるとして批判が出てくるのは避けられないだろう。
あるいは、「誰も一人にしない」というのは「来てもらった方を一人にしない」という意味で考えていたが、そもそも文化祭に来る方は大抵団体のはずで、独りで文化祭を楽しむケースはあまり考えられないだろう。
逆に、「生徒を一人にしない」という意味で考えるなら、するべきことも変わってくる。しかし、それについてはこんな風に一人の状態だとなかなか思いつくことができない。そのことについては、例えば、うちの学校の生徒でいうと赤山と話し合ったりするのも良いのかもしれない。
ただ、今はもう夜の10:00になってしまっていたので、いまから赤山に電話するのは迷惑だと思い、明日の予定に備えるべく、風呂に入って就寝することにした。




