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【06 水龍との闘い】

・【06 水龍との闘い】


 水龍は目を細めながら、

「この程度の少年にほだされるとは……おにぎり!」

 と語気を強めて叫ぶと、目を見開いた。

 おにぎりとは……と固唾を呑み込む私と、ウンソはテキパキと私のいる場所とはまた違うけども、自分が立つ、水龍と対峙する場所とも違うところに氷の剣士を置いてから、水龍と向き合った。

 ウンソは満を持して、こう言った。

「おにぎりとは何だ?」

「あぁ、これかぁ……」

 と地面にいるウンソを見下すように首を伸ばした水龍は、ゆっくりと口を開いた。

「自分でも分からない、脳がバグっているんだ」

 じゃあもうダメじゃん……終わってる……と、ちゃんと脳内で思ったことで気付いた。ウンソの発露は終わっているって。水龍も発露を使っていないし。

 発露を使っていない空間なら、ちゃんと私は口に出さずにツッコむことができるなぁ。口に出すとか正直危険だし。私が怒りを買って攻撃されかねない。

 と、思っていると、ウンソの雰囲気がまた変わって、あっ、この感覚、また別の発露を使うんだと思った。

「俺はな、スポーツ新聞の下部にあるエロ広告を集めて自分なりの冊子を作っていたら、普通に親に捨てらてたことがある!」

「恥ずかしいな! 純粋に!」

 と、もう私はつい声に出してしまった。いやでもこれは恥ずかし過ぎるし、ウンソの案件だから発露無くても声に出ていたかもしれない。

 するとウンソの両手が、なんと、ピンクゴールドに光り出した! いやでも何かウンソが色は関係無いって言っていたな、というと? と思っていると、ウンソが続けた。

「エロ関連だから、ピンクゴールドに光らせてみたぜ……!」

「それでお洒落だねとかはならないよ! ダサさが増しただけだよ!」

 水龍はホッホッホと笑ってから、

「ダサいねぇ、ダサスルメ、炙り一丁純情派だねぇ」

 と言って、バグが強くなった、と思った。発露空間になったからか?

 水龍は急にキッと真面目な顔になり、

「まあ死ねや」

 と言って、水圧のビームのようなモノを発射した。ウンソはそれをかわさず、なんと受け止めたのだ。一体どういう作戦なんだ。

 するとビチョビチョになったウンソがこう言った。

「シコる手の形の輪の中に、水圧ビームを通して、水圧ビームをシコってやったぜって、やりたかったけども、水圧ビーム、太過ぎじゃねぇか」

「じゃあ喰らってるじゃん!」

「めっさ喰らった、喉が痛い」

「多分もっと言い方あるでしょ! 喉が痛いだとちょっと風邪ひいたみたいじゃん!」

 水龍はニヤリとしながら、

「いや合ってんだよ、お嬢さん。わたしの水は汚染された水、実際ウイルスに侵されるんだよ」

「合ってんのかい!」

 ウンソは少し体をよじらせながら「チンコもかゆいかも」と言うと、水龍は即座に「それは知らん、知らん揚げ」と答えた。

 私は叫んだ。

「股間は別件かい!」

 ウンソは頷きながら、

「下部過ぎたな」

 と呟き、私は呆れながら、

「何がだよ、新聞広告の下部と掛けているのかどうか不明瞭だよ」

 と言うしかなかった。そもそも、

「輪の中を通したとて、何なんだ」

「自己満だけど最高なコレクション」

「ガチャガチャで揃えたフィギュア群みたいに言わないで、微妙に会話になっていないよ」

「本当は、輪の中を通していたら成っていたんだよ」

「将棋みたいに言われても」

 ウンソは矢継ぎ早に、

「手コキ王に」

 私も負けじと食い気味で「なったとてだよ!」とツッコんでやった。

 さて、ウンソは何を仕掛けるのかと見ていると、ウンソが両腕を広げたその時だった、なんと、ウンソの周りにどこからともなく出現した新聞が舞い始めたのだ。

 ウンソは高らかに言う。

「スポーツ新聞よ、俺に力を貸してくれ!」

「しょうもないモノに頼るなよ! ジジイのユーモア活字しかないよ!」

 水龍は即座に、

「新聞ごと頭を撃ち落してやる! サイファー!」

 と言いながらまた水圧ビームを飛ばしたんだけども、なんとスポーツ新聞がその水圧ビームを弾いたのだ!

 水龍は驚きながら「梅田……」と呟いた。

「知らないよ、時間差の梅田サイファー」

 私はとにかくウンソから二十一世紀の話を聞かされるので、梅田サイファーとか、さっきだとロックマンとかも知っている。

 そもそも梅田サイファーは二十三世紀でもやっているし。オーガニック・ゴッドは主に関東圏が支配下だから、大阪は普通に割とまだ平和だったりする。

 いや梅田サイファーの脳内描写はどうでも良くて。これも発露のせいかもしれない。脳内描写もおかしくなっているのかもしれない。

 ウンソは自慢げに、

「スポーツ新聞は雨風をしのげるんだよ……競馬場の傘なんだよ!」

「いや! ここまでの水圧は本来無理でしょ!」

「スポーツ新聞に限界なんてない! 見せてやるぜ! 老舗まんじゅう屋の食リポをグラビアアイドルにやらせた記事!」

 そう言ってウンソは水龍に飛び掛かり、ついに攻撃となった。水龍の顔あたり、つまり四メートルはジャンプした。

 でも一体どんな攻撃方法? と思っていると、ウンソは水龍の耳のあたりに口を近付けて、こう叫んだ。

「あぁ~ん、おまんじゅうのあんが、あんが、とろとろ~、あぁ~ん!」

 水龍はもだえるように、

「うわぁぁぁあああ、どうせジジイが活字に起こしているのに魅力的だぁぁあああああああああああ!」

 いや!

「全然魅力的じゃないでしょ!」

 ウンソは一旦水龍から離れるように着地して、水龍の様子を確認した。

 すると水龍は明らかにイライラしているような表情で、

「よく分かったな、わたしが物理攻撃効かないことを」

 ウンソは少し自慢げに、

「なんせ体が水でできているからな、内部から破壊しないと勝ち目無いと思ってね」

 そうか、だから内部への攻撃だったのか、精度は何か低そうだったけども効いているし、まあ合ってはいるのだろう。

 すると水龍が目を見開いたと思ったら、全身が光り出して、

「こっちも発露だ……わたしはもう全てを諦めているんだ……オーガニック・ゴッドの支配下になり、水は汚れた。しかし元々そうだった。元々人間は川を汚していた。だからオーガニック・ゴッドのすることも甘んじて受け入れた。人間は終わっているんだよ! スキマ産業のふて寝産業!」

「いや! オマエの脳バグのほうが終わってるよ!」

 と水龍に対して私はついキツいことを言ってしまったが、それはもう仕方ない。水龍も発露を使ったんだから。

 水龍の全身が黄金色に光ったその時だった。ウンソは即座に浮いているスポーツ新聞に手を伸ばして、なんとスポーツ新聞の中から何か瓶を取り出したのだ。

 ウンソはその瓶を一気に飲み干して「マカ!」と叫び、私はすかさず「広告の!」と声を荒らげた。

 水龍はウンソに向かって水圧ビームを飛ばすが、ウンソはそれをかわす、かわす。

 徐々にウンソは水龍に近付き、隙を見てハイジャンプで一気に水龍の頭上まで飛び、少し飛び過ぎではと思っていると、ウンソがそのままなんとカカト落とし。

「いや! 物理は無理なんでしょ!」

 と私が言った直後、なんとウンソのカカト落としは手応えアリといった感じに、水龍にヒットして、水龍は脳がくらくらしているようにふらついた。

 そこからウンソが空中でラッシュを掛ける。こうやって長い時間、空中に滞空できるのはウンソの忍力が高い証だ。

 水龍の頭をボコボコに殴り、最後にアゴを思い切り蹴ってフィニッシュした。

 水龍はそのままノックダウンして、高い位置にあった頭は棒が倒れるように地面に叩きつけられた。

「どういうこと! ウンソ!」

「多分発露を使ったことにより、物理攻撃を喰らうようになったんだよ。発露の光は現実”リアル”という意味だからな」

「発露中の技はめっちゃファンタジーなのに?」

「そういうもんなんだよ、まっ、俺のバトルセンスがあればすぐに分かるということだよ」

「カッコつけ過ぎでしょ、クイズに当たったから饒舌みたいな」

 ウンソは少しムッとしながら、

「そんな、陰キャのテレビ前みたいに言うなよ。まあいいか、おい、水龍、自暴自棄になるな、トイレはあったほうがいいし、俺が設置するMUTEKIトイレはむしろ環境を良くするんだ。これから全部説明する。氷の剣士も聞いてほしい。MUTEKIトイレは本当に最高のトイレなんだ」

 そこからウンソがMUTEKIトイレの説明を本当に真面目にした。全然スポーツ新聞ライター・ジジイの言い回しとか無かった。

 それを聞いた水龍は元の水だけの水龍に戻ってから、

「分かった。わたしは人間を、いやウンソを信じてみるよ。でもこの街を守ることはもうできない。それだけ心が断絶しているんだ。氷の剣士よ、わたしたちの水も守ってほしい。おにぎり」

 基本はおにぎりなんだ、高ぶっていない時はおにぎりなんだ、と私は心の中で思った。

 氷の剣士はしっかり頷いてから「あぁ、俺が守るよ。絶対に」と力を込めて返事をした。

 ウンソと私はMUTEKIトイレを設置してから、また次の街へ向かった。


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