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君の横顔は  作者:
7/7

6.

4月に入ると風が少し強くなり、桜が乱れる。

入学式には、ある意味いい景色だろう。

写真映えするし、“春らしい”ってやつだ。

でも、花びらが舞って目に入るのは、あまりありがたくない。


校門の前は、人でごった返していた。

新しい制服、カメラを構えた親、無駄に元気な声。

自分はその間を縫うように通り抜けるだけだった。

自転車を駐輪場に止め、カギをかける。

そのまま校舎のほうへ歩き出したとき、後ろから声が聞こえた。


「おーい、りつー!」


振り返ろうとした瞬間、背中にずしっと重みがのしかかる。


「……重い。お前、何キロあるんだよ……」


「ひどっ!冬にちょっと成長しただけやし!」


「ちょっとじゃねえだろ。背負った瞬間に腰やられるかと思ったわ」


腕を首に回してきた手をどけながら、律が睨む。


「まぁまぁ、そんくらいで音上げるようじゃ、俺を超える伝説作れねぇぞ?」


「……お前の伝説って、生徒会長選のスローガン“友情・努力・勝利・俺”ってやつだろ?」


「そう!あれ今でも俺の代表作やわ」


自慢げに笑うその顔を見て、律は深くため息をついた。


「じゃあ俺は超えなくていい。てか、話ちげぇだろ。

……ていうか、“俺”って何だよ、“俺”って。誰もついてこれねぇわそんな友情」


呆れた声を漏らしながら、校舎へと向かって歩き出す。

隣で相変わらずくだらない話を続けてくるアイツの声が、ずっと響いていた。

そう言いながらも、なんだかんだ笑っていた気がする。

あいつの話はいつもくだらない。でも――まあ、嫌いじゃない。


友達と別れ、教室に向かう。

スマホから目線をあげると

廊下の向こうから歩いてくる誰かが、ふと目に入る。

すれ違う一瞬、長い髪が揺れて、視線が重なりかけた。


――どこかで、見たことがある気がした。


でも、すぐに思い出せるほどの記憶じゃない。

ただ、今見たこの景色に――妙な既視感があった。


「……ま、気のせいか」


ポケットに手を突っ込んで、俺はそのまま教室へ向かった。



教室に入っても、まだどこか騒がしい。

けれど、クラスの輪の中にいる感じは、なぜかしなかった。


クラスメイトたちは、あちこちで初対面の会話に花を咲かせていた。

「どこ中?」とか「部活入る?」とか、だいたい聞こえてくる話は似たようなものだ。


俺は指定された席に荷物を置いて、席に着く。

耳にイヤホンを差し込み曲を流す。

こういう空気は、何度経験しても得意じゃない。けど、慣れてはいる。


“ひとりの始まり”なんて、今に始まったことじゃない。


流れてくる音楽に身を任せながら、ただ静かに、チャイムが鳴るのを待っていた。

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