7.先輩は心配なのです
「最近凄く初心者さん増えたよね〜。」
壁に向かって仲間に話しかける。
実際は壁に向かって話してる訳ではなく、目の前に大きな鏡があり鏡ごしに仲間達と話しているのだ。
複数人で話す時には広がらないと顔がみえないので壁に向かって横並びになるのだ。
「あれじゃね?なんか配信者が紹介したらしいよ。」
答えるのは出来うる限り巨乳に改変し、彼シャツだぼTシャツになっているアメリカ人のフレンドのソアだ。
「ふーん。ま、人口が増えるのはいい事だね、あっ。早速それっぽい人いるから初心者案内してくる〜」
座っていた場所から下に飛び降り、横から話しかける。
「初心者さんですかー?」
凄い勢いで後ずさっていった。
おお、びっくりさせちゃったかな?
「落ち着いて〜大丈夫ですからね〜」
「時間あったら良ければ案内しますよ」
なるべく怖がらせないように優しい声色を使って話す。
「…あ、その…お願いします」
か細い声女の子の声が聞こえてくる。ボイチェン独特の音がしないので多分女の子だろう。
「はい〜マルと申します。よろしくね」
とことこ着いてきて「わぁ〜」とか「おお〜」とか凄く反応が新鮮だ。やっぱ初心者案内の楽しさはこれだよね〜。慣れた相手に紹介してもつまんないし。
というか本当に全然操作知らない感じか。PCに触ったこともあまりないのは珍しい。
基本的な操作や人間関係などの注意事項を伝える。
「ブロックは極力しないようにね。本当に無理だったら仕方ないけど逆上されたりトラブルの元だから相手をミュートするとかで対策してね」
コクコク必死に頷いている。小動物みたいでかわいい。
「あ、女の子は特に!変な人も多いから本当に気をつけてね!女の子じゃなくても怖い思いしたりするんだから!!」
ポカンとして?マークを頭に浮かべていたので
「うーん。急に案内されて連れていかれるのがホラーのワールドだったり…プライベートな部屋に連れてかれて変なことされたり…」
更に?マークを頭に浮かべて質問してきた。
「ゲームなのに、ですか?」
「ゲームなのにです。VRだからね、こう本当にいるみたいに接触できるから近づかれ過ぎたり逆に近づき過ぎたりして怖いって思う子もいるんだよ〜。」
「なるほど…」
「後は性別を聞いたりボイチェンか聞いたりするのがダメだったりするかな、この世界での性別とリアルでの性別は違ったりするから傷ついたりしちゃう人もいるからね」
まあ、女の子になりきってるとリアルで内股女の子座りしちゃう者が沢山いる世界だ。染まっていくんだね。
初心者の子はオロオロして恐る恐る質問してくる。
「えっと、聞いてもいいか、分からないのですけど、マルさんもですか?答えたくなければ大丈夫なんですけど」
気を使ってくれているんだな、優しい子だ。
「私は全然男性ですよ〜!!アバターは女の子なんで中身ありますけど」
バッっとその子が顔をあげ困惑の表情をしてこちらを見つめてくる。
「なか…なかみ???というと体の…??」
お、気になる?気になっちゃう???
ふっふっ、拘ってますからね。
「うん〜、見る?体の中に顔を突っ込めば見れるよ〜」
「いいんですか!??」
すっごい食い気味に近づいてきた、なんだこの子ちょっと面白い。
「失礼します…。…!!!??これは…!!!?子宮…!!???」
おー体の中なので近くから声がする。そうだよーっと返事するとかなり驚いたようで
体から出てきて
「これがメタバース。こんな所にまで個性が…これが新世界…。」
と呟いている。キラみたいなセリフだねとケラケラ笑って
「まあ、重くなるだけだしわざわざ付ける人あんまりいないけどね〜もうちょっとプレイしてればそのうち改変もできるようになるから出来るようになったら教えるよ〜」
「!…お願いしますッ!!!!!」
すんごい食い付き。興味があるのは先輩として嬉しいんだけど大丈夫かなこの子。