6.みな初恋はママだから
うぅ…ばぶになりきれなくて申し訳なかった。
恥ずかしさからとりあえず周りの様子をチラチラ伺っていると
?「ままでちゅか?」
?「ママばぶか?」
!!?足元をみると幼い猫耳の生えた男の子のアバターと幼い女の子のアバター2人がこちらに話しかけてきた。
「あ、っ、えと、ママではないのですけど」
そう答えると
2人組の幼い子供達がえーっ!と声を揃えていう
?「そんにゃ、すごくいい声をしてるからママになってほしいばぶ」
?「ままになってほしいでちゅ!」
泣き真似をしながら懇願されると母性本能が刺激されてしまう。恥ずかしいけど、でも、やってみたい。
「じゃ、じゃあえっとこの見えないこの椅子に座る?みたいだから座ってくれる?」
?「「わーい!」」
ちょこんと2人が座って仰向けに移動させる為に持ち上げる。
んしょ、んしょ、中々位置が定まらない。
ちなみにこの椅子、狂気の椅子であるため乗せた状態で動かすと乗っている方の視界が大変なことになる。
ジェットコースターより早く視界が動く。
?「「ぐええっ」」
「ご、ごめんなさい」
私が慌てて手を止めると他のスタッフさんがやってきてとてもいい位置に調整してくれた。
新人ママ申し訳なくてもう泣きそう。
子育てってこういう事の繰り返しなんだろうなと思った。
「よちよち~お名前はなんて言うのかな~」
ぴの「ぴのばぶ」
なの「なのでちゅ」
2人はそう答えてくれる、か、かわいい。
見た目が子供な事もあるがすごくかわいい。
「よしよし2人はお友達なのかな~」
ぴの「あい!職場の後輩ばぶ」
なの「先輩でちゅ」
うん、まあこんなにかわいくても中身が成人男性なのは分かってたけど、職場の先輩後輩で来るところじゃないでしょ。授乳カフェ。心でそう思ったが、人のことは言えないのでママのロールプレイを続ける。
「そかそか~お仕事終わりなの?えらいねぇ、なでなで」
ぴの、なの「えへへ~」
撫でるとお耳がピコピコしてとてもかわいい。
だが、成人男性だ。
ぴの「僕たち実況者さんの動画みてさっき始めたとこなのばぶ、このゲーム。ママもゲームながいのばぶ?」
なんと、この2人もゲームを始めたてのようだった
「ままも始めたばっかりだよ~2人が最初のばぶだねぇ」
と答えると2人が
嬉しい!かわいい!最高!と喜んでくれる。
なるほど、これはとても保護欲をそそられるというか気持ちいいというか、母性が爆発する。
私のママもこんな気持ちだったのかな。
…
そういえばうちのママは
今日はお庭の掃除をしていたな。季節は夏真っ只中、汗だくになった母の姿を思い出す。シャワー浴びてくるわ~と浴びに行きリビングに出てきた時には目が飛び出でるほど驚いた。ほぼ全裸なんだもん。
いや正確にはちゃんと下着は付けている。そう、黒いレースの透け透けのブラジャーとパンツだ。
ママ「いやーいいよ!このパンツとブラ!Amazonで買ったんだけどさー蒸れなくて超、快適、あんたもいる??」
首をブンブンと全力で横にふる。
なにが悲しくて実の母のそんな姿をみなくてはいけないのか。というかそのせいで、実の母の際どい姿を想像してしまい、赤ちゃんになりきれなかったのだが、考えてもみてほしい。
実の母親の黒いレースの透け透け下着姿。なかなかの地獄だぞ?
なんかもう思い出したくない。と記憶の部分に鍵をかける。
と独り言が声に出ていたらしく。
ぴのちゃんとなのちゃんは吹き出し、周りの赤ちゃん並びにママ達も笑ったり黙ったり、悶えて苦しんでいる。
おおう。申し訳ない。各々の母親の黒レースランジェリー姿を想像させてしまった。
ここは癒しの場だというのに危ない危ない。
幸い、みな好意的に受け取ってくれているようだ。
1部の苦しんでいる人達以外は…
そんなこんなで終了時間になり
ぴのちゃんとなのちゃんとフレンドを交換する。
また、ママに会いたい~!!と2人がニコニコ伝えてくれる。
ふふ、楽しかった。たまにはこんなものいいよね。
授乳カフェで母親役になってみて、やはり母は偉大だなと改めて母に感謝する気持ちが湧く。
たまにはお花でも贈ってあげようかな?
とVRの電源を落とす。
「母よ~お花欲しいか~?」
ママ「え、全然いらん、食えんし」
初恋は実らないものだな。