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仮初を生きるもの  作者: 木南一果
呼ぶ声

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27

老人は見つからず、手がかりも得られず、困惑だけが胸に重くのしかかったまま舞台下へと歩く。

リクエスト曲の演奏が無事に終わり、拍手が続いている。


舞台の上では、後半に向けてもう次の準備が進んでいた。


私は深く息を吸う。

今日は感情が揺さぶられてばかりでひどく疲れている。



戻ると、団長がじっと私を見ていた。



「……なんかあったか?」


「いえ…大丈夫です」



なんで説明したらいいのか分からず言葉を濁してしまう。

少しの間。


それから、ふっと笑う。



「まぁいい。反省会で吐け」


「え?」


「今日の主役はお前だな」


「は?」


「もう仲間なんだ、隠し事はなしだ、諦めな」




軽く肩を叩かれる。

リュミも団長の横で、ブンブンと音がしそうな勢いで頷いている。

…心配、かけちゃったな。



「後半いくぞ。止まるな。流れは切るな」


舞台に2人が駆け上り、団長が声を張る。




「後半も盛り上がっていくぞ!」




太鼓の音を合図に、団長が歌い出す。

笛と弦楽器の音に合わせて、光の蝶々が現れる。

蝶は踊るリュミの周りへと集まり、光の粒となり消える。

観客の拍手がさらに大きくなった。

後半の演奏の始まりだ。



止まらない。 

流れを切らない。

夜はまだ、終わらない。

私も次の仕掛けの準備がある。

やるべきことをやらなくては。



私は舞台下の魔力灯へ走る。


後半は夜空いっぱいの光の演出だ。

そちらはユーシリアさんの担当。


私は邪魔にならないよう魔力灯を落として回った。


花火が打ち上がる。

魔力の光だから熱はない。

子どもも大人も、降りてくる光へ手を伸ばしている。



次の曲が始まる前に、急いで客席へ伸びる光の帯の先端へ向かう。

この帯に魔力を流して光の川を表現するのだ。



次の曲が始まった。

出力を調整し、光の帯へと魔力をゆっくりと流し込む。

指先から広がった光が、音にぴたりと重なる。

練習の時より上手く光らせることができてホッとする。



皆が次々に変わる仕掛けに興奮している。

1曲、1曲、丁寧に変化をつけたおかげだろう。



いよいよ、最後の曲だと団長が告げた。

楽器を掲げて大きく手を振り、深く礼をしてから演奏が始まった。


締めくくり、最後の曲。

今日もまた舞銭が壇上に次々に投げ入れられる。


太鼓が跳ねるたびに小さな火花が弾ける。

笛の旋律に合わせて光の蝶が高く舞い上がる。

空には小さな花火が弾け、観客席の光も淡く強弱させる。

蝶が客席まで飛んでくる。


客席から歓声が上がった。

子どもたちが光の蝶々を捕まえようと手を伸ばしている。


音も光も、練習の時以上に完璧に重なっていく。

私も最後まで集中して魔力を光へと注ぐ。


団長が高らかに歌い上げ、リュミがくるりと舞い、最後の一音が静かに消える。


一拍の静寂。


——そして、爆発するような拍手。



今日も大成功だった。



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