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仮初を生きるもの  作者: 木南一果
呼ぶ声

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17

アンコールの曲が終わり、拍手が、再び湧き上がった。

今度は、さっきよりも大きい。

長い。

鳴り止まない。


団長が、また深く頭を下げる。

皆も、頭を下げる。

拍手がようやく収まり始める。


落ち着き始めたのを確認し、団長が伝える。


「明日も同じ時刻からこの場所で演奏します、是非またお会いしましょう」


観客の返事は大きな拍手となり、また舞台を包んだ。


それに手を振って応えてからお辞儀をし、順番に舞台下へ降りる。

登る時は勢いで上った。

だが、降りる時はお辞儀をして階段を下りるだけなのに、足元を見失いそうで緊張してしまった。



演者が舞台から下りていくのを見た観客が、ゆっくりと帰り始める。


「良かったね」

「また明日も来よう」


そんな声が、あちこちから聞こえてくる。

舞台下に下りた皆は、息を整えていた。



「お疲れさま」



ユーシリアさんが、皆に声をかける。


「さて、疲れてるところ悪いけれど。皆で片付けましょう」


団長が手を叩く。



「まずは舞銭、集めろ」

「はい」


私も、再度舞台に上がる。

落ちている袋を、1つずつ拾っていく。

思ったより、多いし、ずっしりと重いものが多い。



「結構あるぞ」


フェリクスが袋を集めながら言う。


「今日は上々だな」


団長が、短く答える。



袋を全部集め終えたら、次は楽器たちだ。


「楽器と譜面台、ランタンは持って帰るから包んでね」


ユーシリアさんから指示をもらう。



「椅子は明日も使うから、置いておけ」

「わかった」

「これはどうする?」

「あぁ、布は今日は置いていきましょう」


皆は手慣れた動きで、置いていくもの、持ち帰るもの、それぞれを分けて片付けていく。


私も譜面台を畳み、布で包む。

ランタンの火を消し、1つずつ回収する。



「リネ、これも一緒に置いといて」


アナスタシアさんが、小道具の箱を渡してくる。


「はい」


宿へ持ち帰る荷物を次々集めていく。

何をすればいいか、設営の時よりわかっていて慌てずに動くことができた。



全てを片付け終えた頃には、すっかり広場は静かになっている。


「明日も、ここでやるぞ」


団長が言った。


「今日より、良くする」

「了解」


皆が頷く。

私も、小さく頷いた。

明日も、ここで。




大きな荷物を荷車に乗せ終えたので、宿へ戻る。

私も小さい荷物を背負って、荷車の後ろを歩く。

肩は重いのに、胸の奥だけが妙に軽かった。



「どうだった?」



隣を歩くセヴランさんに、ぽつりと聞かれ、素直な感想を伝える。



「凄かったです。練習も素晴らしかったですが、本番は音の深みも熱量も違いましたし、音楽が生き物みたいでした。優しい曲も、力強い曲もあって、いろいろ演奏していて、飽きさせないというか……いや、飽きることなんてないんですけど、違うんですよ?とにかく凄かったです」



とにかく凄かった、だなんて…表現が幼稚で申し訳ないです、と尻窄みしつつ伝えると、突然、肩を揺らして吹き出された。



「いや、いい、くふっ…そうか、飽きなかったか」



そこだけ拾われてしまうとなんだか違う。

焦ってしまって、いや、ですから、とあたふたと説明していたが、何を言っても“飽きなかったんだよな”と、にやにや笑いながら言われ続ける。



こうして宿への道を歩いた。


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