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音楽が止まり空気が張り詰めたのがわかった。
心臓の音がうるさい。呼吸が浅くなる。唾を飲み込む音すら響いて聞こえて躊躇ってしまう。
いよいよだ、舞台で右手をあげた村長へみんなの視線と緊張が向けられる。
「今年、名を与えられる者は前へ」
その言葉を合図に、私たちは一列のまま前方へ進み舞台を一段登る。
舞台のそばには、名前を授ける家族たちが集まってきた。
「これから生まれの順に名前の授与を始める。1番」
村長に呼ばれた1番が緊張した面持ちで広間に集まるみんなを見る。名前の授与は家族が行うため、舞台の下まで親が来るのをまつのだ。
1番の父親が走るように勢いよく前に出てきて腕を伸ばし「おめでとう!」と笑顔で壇上の息子を抱きしめた。
いつも落ち着いていてあまり表情を崩さない1番も頬を緩めて嬉しそうだ。父さん、ありがとうと感謝を伝えているのが聞こえる。家族。幸せそうな家族だ。
「今日から本当の名前で呼べることを嬉しく思うよ。よく学び考えて行動する、そんなおまえにぴったりの名前だ。セリオ。お前の名前はセリオだよ。」
それを聞いた1番はさらに頬を赤く染めて口をもごもご動かしているのが見えた。きっと貰った名前を反芻しているんだろう。1番らしい喜び方だな、なんて思ってから違う、セリオだった、と頭の中で考える。
今日は、自分の名前がもらえる日だ。
それだけじゃない。同じ年に生まれた7人の名前も、今日から変わる。
正直、覚えるのは厄介だ。
こんなことを口にしたら、誰にどれだけ怒られるかわからない。
でも、大変なものは大変なのだ、仕方ない。
緊張と興奮の中、間違えて覚えないようにしなくてはいけない。
そんなことを考えていたらセリオの家族が群衆のなかに戻り2番の家族がきていた。危ない。
「フェリッシュ、これがあなたの名前よ。優しくていつも笑顔のあなたにとてもあうわ。フェリッシュ、私の大切なかわいい子」
母親が頭を撫でながらそう伝えると2番はすぐ覚えられるかな?間違えちゃいそうだ、とぼやきつつ嬉しそうに笑った。
次はいよいよ私だ。
村長は進行があるのでバーバラさんがきっと伝えてくれるのだろう。多分。




