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無事に登録が終わり、ホッとしたが旅立つ明日の朝までに、まだまだやらなくてはいけないことはある。


昨日書き留めた品を買いたいし——

2番(ドゥーエス)とシャロンの2人には自分の口から別れを告げたい。


団長に天幕に戻る前にやりたいことがあると伝えると、少しだけ足を止めてこちらを見た。


「行くなら、跡を荒らすな」


それだけ言って、顎で町の方を示す。


「買い物も挨拶も、まとめて済ませてこい。遅くても日が傾く前には戻れ」


「……はい」


短い言葉だったが、引き止める気も、急かす気もない。

ただ、きちんと終わらせて来いという声音だった。


私は小さく頭を下げ、町の方へと足を向けた。




まずは町の市場へ向かう。

いつもの店に入り、声をかける。


「こんにちは」

「おお、3番(トレセーラ)じゃないか。祭りはどうだった?」

「……色々ありました」


曖昧に笑うと、おじさんは首を傾げたが、それ以上は聞かなかった。

どうやらおじさんは祭り会場に来ていなかっただけでなく、騒動についても耳にしていないようだ。



「布と糸と針、買いたしに来たんです」

「ああ、いつもの巾着作り用かい?」




「いえ、今回は……楽器を磨く布が欲しいんです。毛羽立たなくて、柔らかいもの」


そう私が言うと、おや?と表情が変わった。


「ガラスを縫うのに目立たない細い糸も。それから天幕を縫える太い針も2本ください」


おじさんの目が、少しだけ鋭くなった。


「……旅に出るのか?」

「はい」


短く答えると、黙って布を何枚か取り出した。


「これなら大丈夫だ。…糸、少し多めに入れてやるから持っていけ」

「ありがとうございます」


代金を払い、包みを受け取る。

布は上等な物だと触らずにわかるものが混ざっているし、糸は糸巻き限界まで巻かれている。針も2本とお願いしたのに5本入っていて…明らかに代金に見合わないほどの質と量だ。

おじさん、いつも気にかけてくれてたね、ありがとう。

少し目の奥が熱くなる。


「気をつけてな」

「はい」

「常連さんがいなくなるのは寂しいもんだな。がんばりなよ」


「ほんとうに、ありがとう。がんばってきます」


深く頭を下げたあと、店を後にした。




次は2番(ドゥーエス)…いや、フェリッシュに会いに行こう。


市場を抜けて川辺を歩く。

少し行くともう使われていない崩れかけた水路があり、私たちはよくそこで魔法の練習をした。

きっとお昼前のこの時間ならば、いるはずだ。


フェリッシュは、私がなりたかった自然属性だった。

自然属性のなかでも、おそらく水より。

水路で練習していた頃、彼はいつも、水に選ばれていた。

私たちが呪文を整えている間に、気づくと水が自らやってきて、フェリッシュの周りをぐるぐると飛び跳ねるのだ。



いた、たぶん。


なんだろう、人が中に見えるが誰だかまではよく見えない。

水が人をすっぽりと囲んで、水の箱のようになっている。




「フェリッシュ…?」



私が恐る恐る声をかけると水がザバっと下に落ちて消えた。

全く濡れていない彼に驚いたのと同時に、魔法をさっそく使いこなし始めていて遠く感じる。



「…!!!3番(トレセーラ)!!」


赤い目で私をみるその人は、2番(ドゥーエス)、フェリッシュだった。



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