幽霊トンネル
高校生のれいの趣味は心霊スポット巡り。眼鏡をかけていて赤茶色の癖毛を肩に届くか届かないかくらいまで伸ばしている。
唯一の友人であるまゆは、れいに半ば強制的に心霊スポットに同行させられている。今夜の目的地は、渋谷にある「幽霊トンネル」として知られる廃トンネルだった。
「ここ、本当に幽霊が出るって噂だよね?」と、まゆが少し不安そうに言った。
「そうだよ。でも、大丈夫。」となぜかれいは自信満々に答えた。
トンネルの入口は暗くて、ひんやりとした空気が漂っていた。れいとまゆは懐中電灯を取り出し、トンネルの中へと進んでいった。足音が響き、風が唸るように吹き抜ける。
トンネルの半ばを過ぎたあたりで、突然、れいの懐中電灯が消えた。「あれ、電池切れかな?」とれいが言う。
「私のも!」まゆも同じく懐中電灯が消えたことに気づき、二人は真っ暗闇に包まれた。れいはスマホを取り出してライトを点けようとするが、スマホの画面は真っ黒のままだった。
「まゆ、手をつないで。ここで離れたら危険だから」とれいが言った。二人は手をつないで、慎重に歩き続けた。
突然、背後から女性のすすり泣きが聞こえてきた。れいとまゆは息を呑んで立ち止まった。
「聞こえた?」とまゆが小声で尋ねる。
「うん、でも振り返らないで。進もう」とれいは冷静に答えた。
すすり泣きがどんどん近づいてくる。れいの心臓は激しく鼓動を打ち、全身に冷たい汗が流れた。それでも、れいは前を向き続けた。
突然、まゆの手が冷たく感じられた。れいは驚いてまゆの方を向いたが、まゆの姿はなかった。れいの手を握っていたのは、青白い手だった。
れいは叫び声をあげると、その手を振り払って全速力で走り出した。出口が見えたとき、彼女は泣きながら外に飛び出した。
まゆは出口で待っていた。「れい、どうしたの?急に走り出して…」
「まゆ、私たち、二度とここには来ないって約束しよう」とれいは震える声で言った。
二人はその後、幽霊トンネルには二度と近づかなかった。しかし、その晩の恐怖はれいの心に深く刻まれ、彼女はその冷たい手の感触を忘れることができなかった。